ChatGPTが公開されてから早いもので一年が経ちました。というわけで、今回は一年間の生成AIのニュースをまとめました。
年表
LLMを軸にニュースを選出しました。
ChatGPTのリリース
2022年11月30日。世界を震撼させた。
- OpenAI社がChatGPTという対話型生成AIをリリース。今までのチャットボットでは考えられないような使い道の多さと自然な文章に世界中が驚いた。
- ChatGPTは目的に沿った文章を考えたり、コードを生成したりするのは得意そうなことがわかってきた。
- しかし、答えがある質問については、嘘をついてしまうことが多々あった。また、計算が苦手なことも判明した。(これらの部分に関しては、アップデートを行って改善中とのこと。)
- 英語に比べると日本語の性能が低いことから、国産LLMの開発へとつながっていく。
Googleのコード・レッド宣言
2022年12月21日。Googleの経営陣がChatGPTへの警戒を示して「コード・レッド」を宣言した
- GoogleはChatGPTの脅威に対処するために、人員の再編成を行った。
- Bingチャットのような、「検索エンジンに対話型生成AIを組み込む」ことに消極的
- Googleの経営は広告収入に支えられており、ページにアクセスせずに情報を手に入れられてしまうと、広告収入の減少につながると考えているため。
ポイント
「分からなかったら検索する」時代から「分からなかったらAIに聞く」時代へ
MicrosoftのOpenAIへの出資。Azure Open AI serviceの開始
2023年1月23日。MicrosoftがOpenAI社に1.3兆円の投資を発表。Azure Open AI serviceも開始した。
- Microsoftは、2019年にもOpenAIに10億ドルを投資しており、ChatGPTの発表を受けてさらなる投資を行った。
- Microsoftは、以前からAIに注力しており、GPT-3を使用した製品も発表している。
GPTシリーズ
GPTとはOpenAIが開発したAIモデル(LLM)のこと。ChatGPTはGPT-3.5を対話形式に調整したものである。
- Microsoftの二つの狙い
- OpenAIの独占的なクラウド提供者となる
- Azure Open AI serviceの一般提供を開始。
- OpenAIが提供する「GPT-3.5」や「Codex(テキストからのコード生成)」「DALL・E 2(テキストからの画像生成)」といったAIモデルをさまざまなアプリケーションの作成に活用できるようにした。
- Bingの機能を拡張して、検索エンジンシェアを大きく変える
- OpenAIの独占的なクラウド提供者となる
検索エンジンのシェア
Bingチャットが公開されて以降、Googleのシェアに影響はなかったが、日本では、Yahooのシェアを奪うという結果になった。
出典元:https://ohdo.at21.jp/web/search-engine-share/
ChatGPTの勢い止まらず
2023年1月31日の時点で1憶ユーザ突破。毎日のようにChatGPTのニュースが出ていた。ポジティブなニュースだけでなく、ネガティブなニュースもあった。
- GPTにいろんな試験を受けさせるのがブームになっていた
- アメリカの教育現場では、すでに学生がChatGPTを使ってレポートを書く事例が発生してしまい、ChatGPTと教育の在り方が議論された。
- ChatGPTを詐欺に悪用するなどのケースも問題視されていた
- ChatGPTの学習に使われる文章の著作権やプライバシーの問題も話題になっていた
GoogleがBardを発表
2023年2月6日。ChatGPTに対抗するべく、GoogleがBardを発表。
- Googleは、2021年にLaMDAというLLMを発表しており、Bardはそれを使用した対話型生成AIである。※2023年5月にLLMをPaLM2に切り替えた。
Bardのデモ
- GoogleはBardのデモで誤った回答を表示させてしまった
- その日、Googleの株価が大きく下落したが、その原因がデモの失敗にあるのではないかといわれている
- Googleの社内では、発表が急すぎたと批判の声が続出
MicrosoftがBingチャットを発表
2023年2月7日。MicrosoftがBingチャットを発表
- Bingチャットは、検索エンジン「Bing」に対話型生成AIを組み込んだもの。
- ChatGPTと大きく違うのは、引用元が表示される点とBingの検索結果に基づいているので、最新のニュースにも対応している点である。
※ChatGPTは2021年までのデータが学習されている
Bingチャットに使われているモデル
はっきりとわかっていないが、OpenAIが開発した強力なLLM(Prometheus=GPT-4)を使用しているらしい
GPT-3.5 turboとwhisperのAPI公開
2023年3月1日。OpenAI社がGPT-3.5 turboとWhisperのAPIを有料で公開した。
- GPT-3.5 turboは、ChatGPTに使われているモデルと同じである
- Whisperとは、音声の文字起こしを行うツールである
- 利用規約を改定し、「APIを通して送信されたデータは、ユーザの同意なしに、モデルの学習に使うなどのサービスの改善には使用しない」こととした。
コメント
ChatGPTとWhisperを組み合わせることで議事録の作成が簡単に行えるようになりそうだけど、有料なのがネック
GPT-4の公開
2023年3月14日。GPT-4が利用可能になった。
- 有償版のChatGPT Plusに加入するとGPT-4が利用できるようになった※現在も利用方法は変わっていない
- 性能に関して、飛躍的に向上した
- GPT-3.5 turboでは、司法試験で下位10%の成績だったが、GPT-4は上位10%の成績まで向上した。
- GPT-4の日本語の性能はGPT-3.5 turboの英語の性能を上回っていた
コメント
筆者がGPT-4を使用した感じ、質問の意図を理解する能力や回答レベルが圧倒的に高いと思った。
Anthropic社のClaude公開
2023年3月14日。Anthropic社がClaudeを公開。
- Anthropic社は元OpenAIの研究者が2021年に設立したAIスタートアップである。
- ClaudeはChatGPTと同様な対話型生成AIであり、口調や性格、行動を調整できるようなものとなっている。
- Claudeの目指す姿は、「親切で正直で無害な」AIである。
- 公式サイトから無料で使うことができる ※有償版もあり
Claudeの性能
Claudeのバージョンは現在2.1となっており、ChatGPTよりも性能が高いと評判である。
サムアルトマン来日
2023年4月10日。OpenAI社CEOサムアルトマン来日。
出典元:https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230411b.html
- OpenAI社CEOサムアルトマンが来日し、岸田首相と会談した。
- 日本国内で事業拠点を設立する意向を示した。
- NHKの取材で、AIの進化が人類の危機を招くのではないかという懸念について、「ほとんどのテクノロジーには、計り知れないほどのメリットデメリットが存在するので、AIの進化も過去の産業革命と同様である」と答えた。
コメント
日本はAIの規制がゆるいと言われているので、今後もっとAI企業が日本に来る可能性もありそう
Hugging Chatを公開
2023年4月25日。Hugging Face社がHugging Chatを公開。
- Hugging Faceとは、AIのモデルやデータセットを共有し、利用するためのプラットフォームで、Hugging Face社が運営している。
- Hugging Chatはオープンソースベースの対話型生成AIとなっており、さまざまなオープンソースモデルや、インターフェースを自由にカスタマイズできる。
- 現時点では、ChatGPTに性能が及ばないが、今後の改善が期待されている。
ポイント
このころからオープンソースモデルが台頭し、ChatGPTに対抗できるかどうかが議論された。
Microsoft Build 2023開催
2023年5月23・24日。Microsoftの開発者向けイベント「Microsoft Build 2023」が開催された
- Microsoftは、製品に関するさまざまな発表を行った
- ChatGPTにBingの検索結果を参照して回答する機能を追加する
- Windowsに、AIチャットアシスタントであるCopilotを導入する
コメント
WindowsやOffice製品に生成AIが導入されたら、仕事の仕方が大きく変わりそう。ちゃんとAIを使いこなせるようにしないといけないなと思った。
国産LLMが続々と登場
2023年5月ごろからたくさんの国産LLMが登場し、競争が激化している
- 縦軸のパラメータ数の大きさが各モデルの性能のざっくりとした指標となっている。(ただし、パラメータ数だけでは性能は判断できない)
- 7月以降、パラメータ数130億の軽量なモデルの公開が相次いでいる。
出典元:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02590/102300010/
Llama2の公開
2023年7月18日。Meta社が開発しているLlamaというLLMの最新シリーズLlama2が公開された
- Llama2は、オープンソースであり、研究および商用利用向けに無償で提供される
- パラメーター数は7B(70億)、13B(130億)、70B(700億)の3モデルが用意されている
- それと同時にMicrosoftとのパートナーシップを拡大し、優先パートナーとなることを発表
コメント
MicrosoftはOpneAIだけでなく、Llama2のようなオープンソースモデルも味方につけたということになる
ELYZA7Bモデルの公開
2023年8月29日。東京大学松尾研究室発のAIスタートアップELYZA社がELYZA-japanese-Llama-2-7bモデルを公開。
出典元:https://note.com/elyza/n/na405acaca130
- ELYZA社が商用利用可能な日本語LLM「ELYZA-japanese-Llama-2-7b」を公開した。
- これは、Llama2をベースに日本語データを追加学習したものである。
- 130億、700億パラメータの日本語モデルも開発中である。
コメント
最近コード生成に特化した7Bのモデルも公開している。
キャラクターがかわいい
ChatGPT Enterpriseの登場
2023年8月29日。ChatGPTの新たな企業向けプラン「ChatGPT Enterprise」が登場。
- ChatGPT Enterpriseは企業向けプランで以下のようなメリットがある。
- 入力内容はOpenAIモデルの学習に使用不可で、かつデータが暗号化されているため、セキュリティ面で強化されている。
- 企業などの大規模利用でも管理しやすい機能が追加されている
- GPT-4の速度が通常の2倍で無制限で利用可能となっている
ChatGPT Enterpriseの料金
ChatGPT Enterpriseを使用するには、問い合わせする必要がある。料金も問い合わせてみないとわからない。
GPT-4Vの公開
2023年9月25日。GPT-4Vを公開。ChatGPTは見たり、聞いたり、話したりできるように。
- GPT-4Vは、音声入力と画像入力を可能にしたものであり、マルチモーダルなAIとなっている。
- 有償版のChatGPT Plusに加入すると利用できる
- 画像を要約したり、ソースコードを生成したり、今までより用途が幅広くなった。
コメント
- X(Twitter)を見ていたら、教習所で使われるような画像問題も回答できることが話題になっており、自動運転の将来が見えてきたように感じた
- AIと英会話するのは、気が楽だし、より英語が上達しそう
AmazonがAnthropicに巨額投資
2023年9月26日。AmazonがAnthropicに最大5900億円投資することを発表。
- AWSはAnthropicの主要なクラウド提供者となる
- この投資はAmazonもAI競争に参入したことを意味する
コメント
- AzureでOpenAIのモデルが使えるのと同じことをAWS上でもやろうとしているようだ
- 生成AIによってクラウドのシェアも覆る可能性が出てきた
DALLE-3の公開
2023年10月19日。OpenAI社が開発するDALLEという画像生成AIの最新版DALLE-3を公開。ChatGPT Plusで利用可能。
- DALLE-3は、ChatGPTと統合されており、会話しながら画像の微調整が可能である。
- これまでのモデルは、プロンプトの単語や説明を部分的に無視する傾向にあったが、それと比較して、や詳細を深く理解できるようにニュアンスなった。
- 権利を侵害したり、不適切な画像を生成したりすることを防ぐ技術を備えている。
OpenAI Dev Dayの開催
2023年11月7日。OpenAI社初の公式イベントOpenAI Dev Dayを開催
- OpenAIは以下のアップデートを発表した
- GPT-4 turboのAPI公開
- 128kトークン対応となり、GPT-4の4倍となり、本300ページ分に相当する。GPT-4よりも高速で、価格も安い。また、2023年4月までのデータに対応している。
- GPTs
- オリジナルのGPTをノーコードで作れるツール。この機能を使うことで、例えばChatGPTが飛行機の予約をとってくれたり、自分好みの画像を出力するように学習させることも可能。GPTストアから目的に沿ったGPTsを購入することで使用することができる。
- GPT-4 turboのAPI公開
GPT-5について
記者会見でサムアルトマンがGPT-5について「非常に困難な科学的問題に直面しており、リリース時期については未定である」と述べた。
サムアルトマン解任劇
2023年11月17日。OpenAI社の取締役会がサムアルトマンCEOの解任を発表。その後CEOに復帰した。
- サムアルトマンを解任した原因は、取締役会が安全なAIを作ることを優先する一方で、サムアルトマンはビジネスを追求して、危険になりうるAIを作ろうとしていることの確執といわれている
- 11月19日、Microsoft CEOサティアナデラがサムアルトマンのMicrosoftへの入社を発表。サムアルトマンは、新しく設立されたAI研究チームを率いる予定である。
- 11月20日、OpenAI社の社員のうち9割が、「サムアルトマンが復帰しなければ、退社をする」という書簡に署名。
- 11月21日、サムアルトマンがCEOに復帰することが決定
コメント
- AGIと呼ばれる汎用的な知能を持つ人間に近い人工知能が完成間近という噂で、今回の解任の原因ではないかという話もある
- Githubの元CEOに、OpenAICEOのお誘いが来ていたが、それに気づかずにスーパーマリオRPGを楽しんでいたらしい
参考
- https://gigazine.net/news/20221223-google-code-red-against-chatgpt/
- https://news.microsoft.com/ja-jp/2023/01/23/230123-general-availability-of-azure-openai-service-expands-access-to-large-advanced-ai-models-with-added-enterprise-benefits/
- https://www.sbbit.jp/article/cont1/105732
- https://news.yahoo.co.jp/articles/f18a81c57f556a69d75ff5e0528e07a2f496b582
- https://news.yahoo.co.jp/articles/d1f07119be1941eea7f8084f3f67c003f8808a45
- https://newspicks.com/news/8026634/body/
- https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2302/09/news077.html
- https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1476766.html
- https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2303/05/news031.html
- https://gigazine.net/news/20230315-openai-gpt-4/
- https://thebridge.jp/2023/03/anthropic_claude-mugenlabo-magazine
- https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230411b.html
- https://www.sbbit.jp/article/cont1/113786
- https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02423/052600028/
- https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1517341.html
- https://note.com/elyza/n/na405acaca130
- https://weel.co.jp/media/chatgpt-enterprise#index_id4
- https://transcope.io/column/gpt-4v
- https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08439/
- https://business.ntt-east.co.jp/content/cloudsolution/column-374.html
- https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1540828.html
- https://weel.co.jp/media/openai-devday
- https://japan.cnet.com/article/35211209/
- https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231120/k10014263491000.html