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Gemini 2.5 Flash:制御可能な推論機能を持つGoogleの次世代AIモデル

Last updated at Posted at 2025-04-17

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Start building with Gemini 2.5 Flash より

目次

  1. はじめに:Gemini 2.5 Flashの概要
  2. AIにおける「思考」の理解
  3. パフォーマンスとコスト効率
  4. 開発者向け制御機能と実装
  5. はじめ方と今後の展開

はじめに:Gemini 2.5 Flashの概要

Gemini 2.5 Flashとは

2025年4月17日、Googleは最新のAIモデル「Gemini 2.5 Flash」のプレビュー版をリリースしました。このモデルはGoogle AI StudioとVertex AIを通じてGemini APIで利用可能になっています。従来の人気モデルGemini 2.0 Flashをベースにしながらも、推論能力を大幅に強化し、同時に速度とコスト効率の高さを維持しています。

Gemini 2.5 Flashの最大の特徴は、「完全ハイブリッド推論モデル」という点です。開発者は「思考」機能のオン/オフを切り替えることができ、必要に応じて思考予算を設定して品質、コスト、応答速度の最適なバランスを見つけることができます。思考機能をオフにした状態でも、2.0 Flashの高速性を維持しながらパフォーマンスを向上させることが可能です。

主な特徴と改善点

Gemini 2.5 Flashの主要な特徴と改善点は以下の通りです:

  1. 思考能力の追加: モデルが応答する前に推論プロセスを実行できる機能
  2. ハイブリッド設計: 思考機能のオン/オフを切り替え可能
  3. 思考予算の設定: 思考に使用するトークン数の上限を設定可能(0〜24576トークン)
  4. 高度な推論性能: 複雑な数学問題や研究質問などの多段階推論を要するタスクで高い精度を実現
  5. 優れたコストパフォーマンス: 推論品質とコストのバランスが最適化されている

AIにおける「思考」の理解

AI「思考」の概念

Geminiモデルにおける「思考」とは、人間のような意識ではなく、応答を生成する前に実行される推論プロセスを指します。通常のAIモデルはプロンプトを受け取ると直接出力を生成しますが、思考機能を持つモデルは以下のステップを踏みます:

  1. プロンプトを理解し分析する
  2. 複雑なタスクを小さな部分に分解する
  3. 応答計画を立てる
  4. 段階的に問題を解決する
  5. 最終的な回答を生成する

このプロセスにより、特に複数のステップによる推論が必要な複雑な問題(数学的問題の解決や研究質問の分析など)において、より正確で包括的な回答を導き出すことができます。実際、Gemini 2.5 FlashはLMArenaのHard Promptテストで2.5 Proに次ぐ高い性能を示しています。

推論能力の重要性

AIモデルにおける推論能力は、特に以下のようなケースで重要になります:

  • 複雑な数学問題: 確率計算、方程式解決、多段階の計算問題
  • 多段階の論理的思考: 複数の条件や変数を考慮する必要がある問題
  • 計画と順序付け: スケジュール作成やリソース配分の最適化
  • コード生成と分析: プログラミング課題の解決やアルゴリズム設計
  • 研究質問への回答: 多面的な分析や根拠に基づいた結論の導出

これらのタスクでは、モデルが「考える」能力があることで、単純に答えを生成するよりも高い品質の回答が可能になります。

Geminiの思考アプローチ

Gemini 2.5 Flashの思考プロセスは以下のように機能します:

  1. プロンプト受信: ユーザーからの質問や指示を受け取る
  2. 思考フェーズ(オプション): 設定された思考予算内で推論を行う
  3. 応答生成: 思考結果に基づいて最終的な回答を作成する

開発者は「thinking_budget」パラメータを使用して、モデルに許可する思考の量を制御できます。予算が0の場合は思考フェーズをスキップして直接応答を生成し、高い予算を設定すると複雑な問題でより深い推論が可能になります。

重要なのは、設定された予算はあくまで上限であり、モデルは必要に応じて思考を行い、プロンプトが単純な場合は予算全体を使用しない点です。

パフォーマンスとコスト効率

ベンチマーク結果

Googleの発表によると、Gemini 2.5 Flashは他の主要モデルと比較して優れたパフォーマンスを示しています。特筆すべき点として:

  • LMArenaのHard Promptテストで2.5 Proに次ぐ2位にランクイン
  • 同等のサイズや価格帯の他モデルと比較して遜色ないメトリクス
  • 思考予算を増やすことで推論品質が向上(下のグラフ参照)
    image.png

特に、推論品質と思考予算の関係は注目に値します。思考予算を増やすと、ある程度まで推論品質が直線的に向上することが示されています。これにより、開発者は自分のアプリケーションに必要な品質レベルに応じて適切な予算を設定することができます。
image.png

コスト効率分析

Gemini 2.5 Flashは「最高のコストパフォーマンス比を持つモデル」として位置づけられています。この効率性の理由は以下の通りです:

  1. 選択的な思考: 複雑なタスクでのみ思考機能を使用することで、シンプルなタスクでは計算リソースを節約できる
  2. 思考上限の設定: 開発者が思考に使用するリソースに上限を設定できるため、コストを予測・管理しやすい
  3. 適応的な思考: モデルは必要なだけ思考し、設定した予算全体を常に使い切るわけではないimage.png

これらの特性により、開発者は品質、コスト、レイテンシーのトレードオフを細かく調整することができます。

市場における位置づけ

Googleは、Gemini 2.5 Flashを「コストと品質のパレートフロンティア」に位置づけています。これは、一方を改善すると他方を犠牲にせざるを得ない最適なバランスポイントを意味します。

市場におけるGemini 2.5 Flashの特徴的な点は、以下のギャップを埋める点にあります:

  • 低コストだが複雑な推論に弱い基本モデル
  • 高品質だが多くのアプリケーションでは過剰なコストがかかる高度なモデル

思考予算の調整により、開発者は特定のユースケースに合わせて最適なバランスを見つけることができます。

開発者向け制御機能と実装

思考予算の管理

Gemini 2.5 Flashの特徴的な機能は「思考予算(thinking_budget)」パラメータです。これにより、開発者はモデルの推論プロセスを詳細に制御できます:

  • 予算範囲: 0〜24576トークン
  • 予算0の場合: 思考なしで直接応答を生成(2.0 Flashと同様の動作だが性能は向上)
  • 設定方法: API経由またはGoogle AI StudioとVertex AIのスライダーで調整可能image.png

思考予算は上限を設定するものであり、モデルは与えられたプロンプトに応じて必要な量の思考を自動的に決定します。タスクの複雑さに応じて、設定した予算全体を使用しない場合もあります。

推論レベルの実例

Googleは推論レベルに応じたプロンプトの例を提供しています:

低レベルの推論が必要なプロンプト:

  • 例1: スペイン語で「ありがとう」
  • 例2: カナダには何州ありますか?

中レベルの推論が必要なプロンプト:

  • 例1: 2つのサイコロを振ります。合計が7になる確率は?
  • 例2: ジムではバスケットボールのピックアップ時間がMWFの9-3pmと火曜と土曜の2-8pmです。私は週5日9-6pm働いていて、平日に5時間バスケをプレイしたいです。すべてが機能するスケジュールを作成してください。

高レベルの推論が必要なプロンプト:

  • 例1: 長さL=3mの片持ち梁は、長方形の断面(幅b=0.1m、高さh=0.2m)を持ち、鋼鉄(E=200 GPa)でできています。全長に沿って均一に分布した荷重w=5 kN/mと、自由端にP=10 kNの点荷重が加わっています。最大曲げ応力(σ_max)を計算してください。
  • 例2: スプレッドシートのセルの値を計算する関数evaluate_cells(cells: Dict[str, str]) -> Dict[str, float]を作成してください。(細かい要件は省略)

これらの例は、タスクの複雑さに応じて必要な推論レベルが異なることを示しています。開発者は自分のアプリケーションで取り扱うタスクの複雑さを考慮して、適切な思考予算を設定することが重要です。

実装ガイド

Gemini 2.5 FlashのAPIを使用した基本的な実装例は以下の通りです:

from google import genai

client = genai.Client(api_key="GEMINI_API_KEY")

response = client.models.generate_content(
  model="gemini-2.5-flash-preview-04-17",
  contents="You roll two dice. What's the probability they add up to 7?",
  config=genai.types.GenerateContentConfig(
    thinking_config=genai.types.ThinkingConfig(
      thinking_budget=1024
    )
  )
)

print(response.text)

この実装における重要な要素は:

  1. モデル名の指定: gemini-2.5-flash-preview-04-17
  2. thinking_configオブジェクトの作成
  3. thinking_budgetパラメータの設定(この例では1024トークン)

思考予算の最適な値は、処理するタスクの複雑さと求められる応答品質によって異なります。シンプルなタスクでは低い値(または0)で十分ですが、複雑な数学問題やコード生成などでは高い値が推奨されます。

はじめ方と今後の展開

利用可能性とアクセス方法

Gemini 2.5 Flash(思考機能付き)は現在、以下のチャネルでプレビュー版として利用可能です:

  1. Google AI Studio: Gemini APIを通じてアクセス可能
  2. Vertex AI: GoogleのマネージドMLプラットフォーム
  3. Geminiアプリ: 専用のドロップダウンメニューから利用可能

プレビュー期間中、開発者はthinking_budgetパラメータを実験し、制御可能な推論がより複雑な問題の解決にどのように役立つかを探ることが推奨されています。

リソースとドキュメント

開発を支援するために、Googleは以下のリソースを提供しています:

  • API参照ドキュメント: 詳細なAPIリファレンスと思考機能に関するガイド
  • Gemini Cookbook: コード例や実装パターン
  • 開発者ドキュメント: 詳細な使用方法と最適化のヒント

これらのリソースは、Gemini 2.5 Flashの能力を最大限に活用するのに役立ちます。

今後のロードマップ

Googleは、Gemini 2.5 Flashを本番環境での完全な使用のために一般提供する前に、さらに改善を続ける予定であると述べています。具体的な改善点は明らかにされていませんが、以下のような進化が期待できます:

  • 思考機能のさらなる強化
  • より多くのユースケースに対する最適化
  • パフォーマンスとコスト効率の向上
  • 追加の制御パラメータや機能

開発者はプレビュー版を試して、本番環境での使用に向けた準備を始めることができます。

まとめ

Gemini 2.5 Flashは、GoogleのAIモデルラインナップに画期的な進化をもたらす新しいモデルです。「思考」機能のオン/オフを切り替える能力と思考予算を詳細に制御できる機能により、開発者は特定のユースケースに応じて品質、コスト、速度のバランスを最適化することができます。

特に注目すべき点は、以下の通りです:

  1. 複雑な推論タスクでの高い性能
  2. 柔軟な思考予算設定による制御性
  3. 優れたコストパフォーマンス比
  4. シンプルなAPIインターフェースでの実装のしやすさ

これらの特性により、Gemini 2.5 Flashは幅広いアプリケーションに適した汎用性の高いAIモデルとなっています。開発者は思考予算を調整することで、シンプルなタスクでは高速で低コストな応答を維持しながら、複雑なタスクでは必要に応じて高品質な推論を活用することができます。

今後のAI開発において、Gemini 2.5 Flashのような制御可能な推論機能を持つモデルはますます重要になるでしょう。特に企業や開発者が高度なAI機能とコスト効率のバランスを取る必要がある場合に、このようなハイブリッドアプローチは大きな価値を提供します。

このブログ記事は2025年4月17日に発表されたGemini 2.5 Flashの情報に基づいています。プレビュー版の機能や仕様は、一般提供版では変更される可能性があります。

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