NTTコミュニケーションズ Azure上で社内向け料金システムを刷新。
Unified Supportフル活用でクラウド移行とAI開発スキル強化を推進
https://www.microsoft.com/ja-jp/customers/story/20910-ntt-azure#asset_id%E9%96%8B%E7%99%BA%E8%80%85%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E5%85%A8%E4%BD%93%E5%9B%B3
目次
- Part 1: はじめに - NTTコミュニケーションズの挑戦
- Part 2: Azureへの移行とAOプロジェクト
- Part 3: 内製化の実現と成果
- Part 4: AI開発への挑戦と人材育成
- Part 5: 未来への展望 - Road to AO Vision
- Part 6: まとめ
Part 1: はじめに - NTTコミュニケーションズの挑戦
Chapter 1.1: イントロダクション
Section 1.1.1: 本記事の概要と目的
本記事では、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)が、社内向け料金システムをMicrosoft Azure(以下、Azure)へ移行し、AI開発スキルの強化を推進した事例を紹介する。この取り組みは、システムのモダナイゼーション(現代化)に留まらず、内製化による開発体制の変革、そしてエンジニアのスキルアップと意識改革にまで及ぶ、多角的な挑戦と言えるだろう。本記事を通じて、同様の課題を抱える企業や、クラウド活用、AI導入に関心を持つ読者にとって、具体的な示唆やヒントを提供することを目指す。
Section 1.1.2: NTTコミュニケーションズのDXへの取り組み 🚀
NTT Comは、ドコモグループ法人事業の中核を担い、「ドコモビジネス」ブランドのもと、社会・産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。同社は「自ら始める、共に高める、社会に応える」という信条を掲げ、社内実践で得た知見やノウハウを顧客にフィードバックする取り組みを積極的に行っている。今回の社内向け料金システムの刷新も、そのショーケース化の一環と位置付けられる。
Chapter 1.2: 従来の課題と変革の必要性
Section 1.2.1: レガシーシステムの課題 (複雑化、属人化、開発スピード) 🧱
長年にわたり改修を重ねてきたNTT Comの社内向け料金システムは、いくつかの課題を抱えていた。
- システムの複雑化・ブラックボックス化: 度重なる部分改修により、システム全体の構造が複雑化し、全体像を把握することが困難になっていた。これは、まるで増改築を繰り返した古い建物のように、どこに何があるのか、どのような構造になっているのかが分かりにくい状態であったと言えるかもしれない。
- 運用管理の煩雑化と属人化: 複雑化したシステムは、運用管理も煩雑になりがちである。特定のベテラン担当者に運用が依存する「属人化」も進み、知識やノウハウの継承が難しい状況だった。
- 開発ベンダーへの依存: システム開発の多くを外部ベンダーに依存しており、社内に十分な技術的知見が蓄積されにくい構造だった。
- ビジネススピードへの対応の遅れ: 新しいサービスへの対応や改修に半年以上を要することもあり、変化の速いビジネス環境への迅速な対応が困難であった。
これらの課題は、多くの企業が直面するレガシーシステム特有の問題点と言えるだろう。
Section 1.2.2: クラウド化と内製化への決断 💡
これらの課題を解決するため、NTT Comは社内向け料金システムのクラウド化と、それに伴う組織改革、特に内製化による人材育成という大きな決断を下した。吉田剛氏(NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 マネージド&セキュリティサービス部 サービスプラットフォーム部門 担当部長)は、ベンダー中心の開発では社内の若手人材の確保・育成が難しいという危機感を抱いており、「自ら手を動かし開発できることは、エンジニアのモチベーション向上、全体のスキル底上げにつながる」という強い思いがあった。
内製化とは?
システム開発や運用を外部の企業に委託するのではなく、自社の社員(内部リソース)で行うこと。コスト削減、ノウハウ蓄積、柔軟性向上などのメリットが期待される一方、人材育成や体制構築が必要となる。
この決断は、単なるシステム刷新に留まらず、組織文化や人材育成のあり方までをも見据えた、未来への投資であったと言える。
(パート要約)
NTTコミュニケーションズは、複雑化・属人化した社内向け料金システムの課題解決とDX推進のため、クラウド移行と内製化を決断した。これは、技術的な刷新だけでなく、エンジニアの育成と組織文化の変革を目指す戦略的な取り組みである。
Part 2: Azureへの移行とAOプロジェクト
Chapter 2.1: Azure採用の背景
Section 2.1.1: なぜMicrosoft Azureだったのか? (グローバルスタンダード、PaaS活用) 🌐
社内向け料金システムの共通基盤となるパブリッククラウドとして、NTT ComはAzureを採用した。採用にあたっては、他社クラウドサービスとの比較検討が行われ、以下の点が評価されたと考えられる。
- グローバルスタンダードとしての安心感・信頼感: Azureは世界中で広く利用されており、その実績と信頼性が選択の大きな理由となった可能性がある。
- 最新技術の実装スピード: クラウドサービスは日々進化しており、Azureが提供する最新技術やサービスを迅速に活用できる点にアドバンテージが見出された。
- PaaS (Platform as a Service) の活用重視: 運用管理の負荷を軽減し、創出した時間を開発などに充てるため、PaaSの活用が重視された。Azureは豊富なPaaSを提供しており、このニーズに応えることができた。
PaaS (Platform as a Service) とは?
アプリケーションを実行するためのプラットフォーム(OS、ミドルウェア、データベースなど)を、インターネット経由でサービスとして利用できる形態。インフラの管理はサービス提供者が行うため、利用者はアプリケーション開発や運用に集中できる。
Section 2.1.2: AO (Aerial Oriented) プロジェクトの始動 ✈️
2021年にクラウド化プロジェクトは始動し、2022年夏、社内向け料金システムの共通基盤をAzure上で構築・運用する「AO (Aerial Oriented) プロジェクト」が本格的にスタートした。このプロジェクト名は、空(クラウド)を目指す、あるいは空のように自由で柔軟なシステムを目指すといった意味合いが込められているのかもしれない。
特筆すべきは、プロジェクトメンバーの多くが、Azureを含めパブリッククラウドに触れたことがない状態からのスタートだったという点である。これは、大きな挑戦であると同時に、ゼロから学び成長する絶好の機会でもあったと言えるだろう。
Chapter 2.2: Microsoft Unified Supportによる伴走支援
Section 2.2.1: 「開発者サポート」とは? 🤝
AOプロジェクトの推進にあたり、NTT ComはMicrosoft Unified Supportのオプションサービスである「開発者サポート」を活用した。これは、単なる技術的な問い合わせ対応に留まらず、プロジェクトに深く関与し、伴走型で支援を行うサービスである。吉田氏は、「プロジェクトの一員として、実現に向けて弊社のチームと一緒に歩んでいただいた」と語っており、Microsoftのサポートチームが単なる支援者ではなく、共に目標に向かうパートナーであったことがうかがえる。
この開発者サポートは、特にAzureで利用するプロダクトが多岐にわたる場合に有効であり、複数の専門エンジニアがチームとしてプロジェクトを支援する点が、AOプロジェクトのニーズに合致した。
Section 2.2.2: 支援体制と具体的なサポート内容 (勉強会、技術支援) 👨🏫
Microsoftの開発者サポートチームは、CSA Dev Advocate(Cloud Solution Architect Developer Advocate)がチームリードとなり、顧客とのコミュニケーションの軸を担った。さらに、Infra(インフラストラクチャ)、Apps(アプリケーション開発)、Data & AIといった各技術領域の専門エンジニアがアサインされ、包括的な支援体制が敷かれた。これは、まるで専門医が集まった総合病院のように、あらゆる技術的課題に対応できる体制と言えるだろう。
具体的なサポート内容としては、以下のようなものが挙げられる。
- Azureの勉強会: プロジェクト初期には、Azureの基礎知識やサービスを学ぶための勉強会が開催された。WANG HANPIN氏(NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 マネージド&セキュリティサービス部 サービスプラットフォーム部門)は、「Azureの基礎知識やサービスを学ぶことから始めました」と振り返る。
- 実践段階での技術支援: PaaSを利用する際の検証方法や、より最適で効率的なアプローチについて、常にアドバイスが提供された。「いつも隣にいるかのように、アドバイスが受けられ、とても助かっています」とWANG HANPIN氏はその効果を語る。
- 定例ミーティング: AOプロジェクトのミーティングは定例化され、Microsoftのメンバーも気軽に意見を求められる雰囲気であったという。
このような手厚いサポートにより、Azure未経験だったチームも着実にスキルを習得し、プロジェクトを推進することができたと考えられる。
(パート要約)
NTT Comは、Azureの信頼性やPaaSの豊富さを評価し、社内料金システムのクラウド基盤として採用。Azure未経験のチームで「AOプロジェクト」を開始したが、Microsoft Unified Supportの「開発者サポート」による伴走型支援(勉強会、技術アドバイス、専門家チームによる包括的サポート)が、プロジェクトの推進とチームのスキルアップを力強く後押しした。
Part 3: 内製化の実現と成果
Chapter 3.1: Azure共通基盤の構築と安定稼働
Section 3.1.1: システム移行のポイントと成果 ✨
AOプロジェクトは着実に進み、2023年秋、NTT Comの社内向け料金システムを支えるAzure共通基盤は本稼働を開始し、現在も安定稼働を続けている。
システム移行においては、過去に追加開発されたシステムを整理し、共通化を図った。吉田氏は、「システム基盤の更改に合わせて、Azureの共通基盤に移行することで、統合監視、運用ノウハウの共有、運用管理の負荷軽減といったPaaSのメリットを享受できることをメッセージとして出しています」と語る。まずは賛同を得られた部門のシステムから移行を進め、実績を積み重ねながら対象を広げていくアプローチが取られた。
Section 3.1.2: PaaS活用のメリット (運用負荷軽減、コスト削減) 📉
AzureのPaaSを積極的に活用したことで、具体的なメリットが生まれている。
- 運用管理工数の大幅削減: OSのパッチ適用や脆弱性対応といった、従来は大きな負担となっていたインフラ管理業務が不要となり、運用管理工数が大幅に削減された。これは、庭の手入れや家の修繕を管理会社に任せられる最新マンションに引っ越したようなもので、住人はより快適な生活(本来の業務)に集中できる。
- コスト削減: 運用管理工数の削減は、人件費や委託費の削減にも繋がり、トータルコストの最適化に貢献したと考えられる。
- リソースの最適活用: 削減された工数やコストは、新しい機能の開発やサービスの改善といった、より付加価値の高い業務に振り向けることが可能になった。
Chapter 3.2: エンジニアの成長と意識改革
Section 3.2.1: ベンダー依存からの脱却と迅速なトラブル対応 🛠️
開発者サポートの支援による内製化の進展は、エンジニアのスキル向上だけでなく、業務の進め方にも大きな変化をもたらした。
- 迅速なトラブル対応: トラブル発生時、以前はベンダーに問い合わせて回答を待つ必要があったが、内製化後は自分たちでAzureポータルなどを通じて状況を確認し、ユーザーからの問い合わせに迅速に対応できるようになった。これにより、問題解決までの時間が大幅に短縮された。
- ベンダー委託費の削減: 内製化が進んだことで、外部ベンダーへの委託費も削減できた。
Section 3.2.2: 自走するチームへの変貌 (品質向上、新機能開発への意欲) 🌱
吉田氏は、内製化による最も大きな効果の一つとして、エンジニアの意識改革を挙げる。「内製化により若手エンジニアの間で、品質向上や新しいサービス開発に積極的に取り組む動きが出てきました」。
例えば、故障管理の自動化や、AIを使った情報検索といった新しい取り組みが試験段階にあるという。新しいサービスを導入する際にも、「検証しましょう」「試しに動かしてみましょう」といった自主的なアクションが生まれ、チームは文字通り「自走できるチーム」へと変貌を遂げた。
WANG HANPIN氏は、「この2年間で、現場で役立つ力が身についてきたと感じています」と、実践を通じたスキルアップを実感している。これは、座学だけでなく、実際に手を動かし、課題に直面し、それを解決していくという経験が、真の力を育んだ証左と言えるだろう。
(パート要約)
Azure共通基盤は安定稼働し、PaaS活用により運用負荷とコストの大幅削減を実現した。さらに重要な成果として、内製化が進み、エンジニアチームがベンダー依存から脱却。トラブルへの迅速な対応が可能になったほか、品質向上や新機能開発へ積極的に取り組む「自走するチーム」へと成長し、エンジニアの意識改革も進んだ。
Part 4: AI開発への挑戦と人材育成
Chapter 4.1: Billing AI - 業務ノウハウの継承を目指して
Section 4.1.1: Billing AI開発の背景と目的 🎯
AOプロジェクトの一環として、2023年にはAzure OpenAI Serviceを利用した「Billing AI」(請求業務支援AIアプリケーション)の開発が開始された。このBilling AIは、単なる業務効率化ツールではない。後藤亜己子氏(NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 マネージド&セキュリティサービス部 サービスプラットフォーム部門 担当課長)は、その目的を次のように語る。「請求業務や社内向け料金システムを担っている、ベテラン社員のノウハウや知識を数値化・データ化し、AIアプリケーションとして実装することでノウハウの継承を実現します」。
これにより、ベテラン社員が退職した後も、若手社員はBilling AIに質問することで必要な回答を得られるようになり、組織全体の知識レベルの維持・向上が期待される。これは、AIを「賢いアシスタント」として活用し、組織の記憶装置とする試みと言えるだろう。
Section 4.1.2: Azure OpenAI Serviceの活用 🧠
Billing AIの開発には、Azure OpenAI Serviceが活用されている。これは、OpenAI社が開発した先進的な大規模言語モデル(LLM)を、Azureのセキュアな環境で利用できるサービスである。
Billing AIでは、RAG (Retrieval-Augmented Generation) と呼ばれる技術が用いられている可能性が高い。これは、LLMが回答を生成する際に、外部の知識データベース(この場合はベテラン社員のノウハウをデータ化したもの)を参照することで、より正確で文脈に即した回答を生成する技術である。
RAG (Retrieval-Augmented Generation) とは?
検索拡張生成。大規模言語モデル(LLM)が回答を生成する際に、事前に用意されたドキュメントやデータベースから関連情報を検索(Retrieval)し、その情報を基に回答を生成(Generation)する仕組み。LLMのハルシネーション(もっともらしい嘘の情報を生成すること)を抑制し、より信頼性の高い回答を得るために有効な技術とされる。
Chapter 4.2: AI Skill Challenge - AI開発者を育成する取り組み
Section 4.2.1: 勉強会の目的と構成 (ステップ1、ステップ2) 🧑🎓
Billing AIの開発をきっかけに、Microsoftの支援のもと、AI開発者育成のための勉強会「AI Skill Challenge」が開催された。この取り組みはAOプロジェクトのメンバーに限定されず、他部門やグループ会社にも門戸が開かれ、組織全体のAIスキル向上を目指すものとなっている。
後藤氏によると、AI Skill Challengeは「AIを利用する側ではなく実装する側のスキルを身に付けること」を目的とし、段階的なステップで構成されている。
- ステップ1: 生成モデルやRAGといった最新トレンドを踏まえたAIアプリケーション開発に関する基礎を学ぶ。後藤氏はBilling AI開発における課題や疑問点をリクエストし、「よいプロンプトを書くためのコツ」や「RAGアプリケーション開発の勘所」などに関する講義を受けたという。
- ステップ2: マルチモデル(適材適所でのモデル選択や組み合わせ)をテーマとする。
この勉強会は、単なる知識のインプットに留まらず、実践的なスキル習得を重視している点が特徴である。
Section 4.2.2: NTT版LLM「tsuzumi」の活用 🥁
AI Skill Challengeのステップ2では、NTT版大規模言語モデル(LLM)である「tsuzumi」も先行利用される。tsuzumiはAzureのModel-as-a-Service (MaaS) であるモデルカタログで提供されており、これはNTTグループのAI技術力の高さを示すものと言えるだろう。自社開発のLLMを活用することで、より日本のビジネス環境や文化に適合したAIソリューションの開発が期待される。
(パート要約)
NTT Comは、ベテラン社員のノウハウ継承を目的に、Azure OpenAI Serviceを活用した「Billing AI」の開発に着手。これを機に、Microsoft支援のもと全社的なAI開発者育成プログラム「AI Skill Challenge」を開始した。基礎から実践、さらには自社開発LLM「tsuzumi」の活用までを含む段階的な学習で、AI実装スキルを持つ人材育成を強化している。
Part 5: 未来への展望 - Road to AO Vision
Chapter 5.1: AOプロジェクトの進化
Section 5.1.1: 適用領域の拡大 (料金業務以外、アプリ・ミドルウェア) 🗺️
AOプロジェクトは、社内向け料金システムのAzure共通基盤への移行拡大に留まらず、さらなる進化を目指している。豊嶋守氏(NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 マネージド&セキュリティサービス部 サービスプラットフォーム部門 主査)は、「基盤だけに留まらずアプリ・ミドルウェアまで領域を拡大し、アプリからインフラまでの一貫体制も視野に入れている」と展望を語る。これは、AOプロジェクトで培ったクラウドネイティブな開発・運用ノウハウを、社内のより広範なシステムに展開していくことを意味する。
具体的には、以下のような拡大が考えられる。
- ビリング系システムの再編統合・共通化: さらなる効率化と標準化。
- ビリング以外のシステム移管: 他の業務システムもAzure共通基盤へ移行。
- アプリ・ミドルウェア領域の内製率アップ: より広範なレイヤーでの内製化を推進。
Section 5.1.2: 生成AIによる監視運用の高度化 🤖
直近では、AOプロジェクトから派生して、生成AIを活用した監視運用の非属人化も検討中である。これは、システムのアラートやログ情報を生成AIが分析し、問題の特定や対応策の提案を行うことで、運用担当者の負担軽減と迅速な対応を目指すものと考えられる。例えば、夜間のアラート対応をAIが一次切り分けし、人間の介入が必要な場合のみエスカレーションするといった運用が実現するかもしれない。
Chapter 5.2: 目指すは自律するクラウド・エキスパート集団
Section 5.2.1: 継続的なスキルアップとナレッジ共有 📚
「Road to AO Vision」が示すように、NTT Comが目指すのは、単にシステムをクラウド化することだけではない。自走力、BCoE (Business Cloud Center of Excellence) チーム力のアップ、そして最終的には「自律するクラウド・エキスパート集団」へと進化することである。
そのためには、以下のような取り組みが重要となるだろう。
- 継続的な学習とスキルアップ: クラウド技術やAI技術は日進月歩であり、常に新しい知識やスキルを習得し続ける必要がある。
- ナレッジの共有と標準化: AOプロジェクトサイトでのナレッジ公開のように、得られた知見を組織全体で共有し、標準化していく文化を醸成する。
- DevOps CI/CDの自動化推進: 開発から運用までのプロセスを自動化し、より迅速で高品質なサービス提供を目指す。
Section 5.2.2: Microsoftとの連携による更なる飛躍 🚀
豊嶋氏は、Microsoftの支援に対して、「高いナレッジによるサポートのもと、当社メンバーのスキルもあがってきました。今は『次に何をやるべきか』という視点から今後の提案をしてもらっています。これからもAOプロジェクトの一員として一緒に進んでいく存在でいてほしい」と期待を述べている。
この言葉は、Microsoftが単なる技術提供者ではなく、NTT ComのDX戦略における真のパートナーとして認識されていることを示している。今後も両社の強固な連携により、AOプロジェクト、そしてNTT Com全体のDXが加速していくことが期待される。
(パート要約)
NTT Comは「Road to AO Vision」を掲げ、AOプロジェクトで得た知見を基盤・料金業務以外にも拡大し、アプリからインフラまでの一貫体制を目指す。生成AIによる監視運用高度化も検討中。最終的には、自走力と専門性を高め、「自律するクラウド・エキスパート集団」となることを目標とし、Microsoftとの連携を継続しながらDXを加速させていく。
Part 6: まとめ
Chapter 6.1: 本事例から学べること 🌟
NTTコミュニケーションズのこの事例は、多くの企業にとって示唆に富むものである。
- クラウド移行はDXの出発点: 単なるインフラ刷新ではなく、ビジネスプロセス、組織文化、人材育成まで含めた変革の機会と捉えることの重要性。
- 内製化への挑戦と覚悟: ベンダー依存からの脱却は容易ではないが、エンジニアのモチベーション向上、スキルアップ、そして組織全体の技術力向上に繋がる可能性を秘めている。
- 伴走型サポートの価値: 特に新しい技術領域への挑戦においては、信頼できるパートナーからの専門的かつ継続的なサポートが成功の鍵となり得る。Microsoft Unified Supportの「開発者サポート」はその好例と言えるだろう。
- AI活用の実践的アプローチ: Billing AIのように、具体的な業務課題の解決(ここではノウハウ継承)とAI技術の導入を結びつけることで、実用的な価値を生み出すことができる。
- 人材育成への投資: AI Skill Challengeのような体系的な育成プログラムは、組織全体のAIリテラシーと開発能力を底上げするために不可欠である。
- 明確なビジョンと段階的実行: 「Road to AO Vision」のような明確な目標設定と、それを達成するための段階的なステップが、大規模プロジェクトを推進する上で効果的である。
Chapter 6.2: 今後のNTTコミュニケーションズに期待すること 期待
NTTコミュニケーションズは、このAOプロジェクトを通じて、クラウドとAIを駆使したDXの確かな一歩を踏み出した。今後、この取り組みで培われた「自走する力」と「エキスパート集団」が、社内システムのさらなる高度化に留まらず、顧客へ提供するサービスやソリューションの革新へと繋がり、日本の社会・産業全体のDXを力強く牽引していくことが期待される。Microsoftとの継続的なパートナーシップのもと、その挑戦がどのように花開いていくのか、注目していきたい。