はじめに
Microsoft Teams Rooms (MTR) は、会議室でのビデオ会議、音声通話の品質を最適化できる会議室向けのソリューションです。
MTRには企業のWeb会議効率化に役立つ機能がたくさんありますが、インターネット上にはまだ情報が少なく、少しでも情報を探す方の参考になればと思い記事を作成しました。
本記事ではMTRの利用開始までの手順を簡単に説明します。
本記事の対象読者
- IT管理者・情報システム担当者
- MTRの導入を検討している担当者
MTR導入のメリット
MTRを導入するメリットは個人的に下記の3つと考えています。
- 簡単な操作で会議の開始ができる
MTRは会議にワンタッチで簡単に参加することができます。これはIT管理者にとっては社内からの問い合わせが少なくなり、ITリテラシーの少ない利用者にとってもストレスが軽減できるため、良いポイントです。 - Microsoft Teams を既に利用中の場合、運用開始までの負荷が少ない
MTRはMicrofot Teamsと同じような操作感で会議を実施することができ、ライセンスの追加費用も発生しません。(Basicライセンスを使用する場合)
したがって、運用開始までの人的・経済的な負担が少ないです。 - 会議室の規模や予算に応じて様々なデバイスを選定できる
Web会議に使用するオーディオ・カメラデバイスは多種多様なメーカーからTeams Rooms 認定デバイスとして販売されており、どの規模の会議室でも対応できます。
手順
MTRを利用開始するにあたり必要な手順は大きく分けて下記の通りです。
- MTRを導入する会議室を決定する
- デバイスを選定する
- Microsoft 365の環境設定をする
- デバイスを設置・セットアップする
- ログインと設定を行う
1. MTRを導入する会議室を決定する
MTRを導入する会議室を決定したら、その会議室の収容人数、大きさ、環境等をリスト化します。
このステップは周辺機器を選定する際、重要になります。
このとき会議室の床がフローリングだったり、壁が金属のパーテーション、コンクリートであったりする場合は要注意です。Web会議中の音が反響することによって会議の音声品質が低減するので、カーペットや壁へ吸音材の設置を行うことを検討する必要があります。
他にも大きな音を発生させるエアコンやマスキングも会議の音声品質を低減させるので要注意です。
2. デバイスを選定する
2-1. OSを選択する(Windows版かAndroid版か)
MTRデバイスはWindowsとAndroidのどちらでも展開されていますが、使用するデバイスのOSは統一すると管理が楽だと個人的には思いました。
Windows版は使用できる機能が多く、機能のリリースもAndroid版よりも早いです。また、Windows版のMTRは通常のクライアント端末と同様に管理できるところもメリットがあります。
一方でAndroidはデバイスの価格が。若干Windows版より安いところにメリットがあります。
↓詳細な機能の違いについてはこちらに記載があります。
2-2. 周辺機器を選択する
オーディオデバイス・カメラデバイスは会議室の大きさに応じて選択することが一般的です。
また、マイクの収音範囲が会議室の大きさをカバーできるかも注意です。
- 4~6人程度の小会議室
オーディオ・カメラが一体型のサウンドバータイプ - 7~12人程度の中会議室
オーディオとカメラがそれぞれ独立しているタイプ - それ以上の大会議室
複数のオーディオ・カメラの設置に対応しているタイプ
Teams Rooms 認定デバイスの中から適切なデバイスを選び、予算に応じて購入します。
3. Microsoft 365の環境設定をする
デバイスの手配が完了したら、次はMicrosoft 365の環境設定を行います。
- Microsoft Teams Rooms ライセンスの取得
- リソースアカウントの作成とライセンスの割当
- Exchange メールボックスのプロパティの変更
3-1. Microsoft Teams Rooms ライセンスの取得
Microsoft Teams Roomsの利用には、専用のMicrosoft Teams Roomsライセンス取得が必要です。
Microsoft Teams Rooms Basic(無償)とMicrosoft Teams Rooms Pro(有償)の2種類のライセンスがあります。
Basic ライセンスは25個まで無償で取得できます。つまり、25デバイスまでならランニングコストゼロで使用できます。
Pro ライセンスはBasic ライセンスよりも機能は多いですが有償です。
↓詳細はこちら
ライセンスの取得方法
- Microsoft 365 管理センターにログイン
- サイドバーの「マーケットプレイス」をクリック
- 検索欄に「Teams Rooms」と入力して検索
- 「Microsoft Teams Rooms Basic/Pro」の「詳細」ボタンをクリック
- ライセンスの数量を選択の上、「購入」ボタンをクリックしてライセンス取得完了
3-2. リソースアカウントの作成とライセンスの割当
Microsoft Teams Rooms のライセンスを割り当てる対象は通常のユーザーアカウントではなく、会議室リソースアカウントです。
既に会議室の管理に会議室リソースアカウントを使用している方は馴染があると思いますが、もし会議室の管理に使用したことがない場合は下記の記事が大変おすすめです。
会議室リソースアカウントの作成
- Microsoft 365 管理センターにログイン
- サイドバーの「リソース > 会議室と備品」を選択
- 「リソースの追加」を選択
- 会議室の各種情報を入力
リソースの種類:会議室を選択
名前:任意の会議室名を入力
メール:任意のアドレス名を入力 - 「保存」を選択して会議室リソースアカウントの作成完了
会議室リソースアカウントのパスワード設定
Teams Roomsにログインするためにパスワードのリセットが必要です。
- 「ユーザー>アクティブなユーザー」を選択
- 作成した会議室リソースアカウントのチェックボックスを選択
- 「パスワードのリセット」を選択
- 「パスワードを自動生成する」、「初回サインイン時にこのユーザーにパスワードの変更を要求する」からチェックを外す
- 任意のパスワードを設定し、「パスワードのリセット」を選択して完了
会議室リソースアカウントにライセンスを割当
- 「ユーザー>アクティブなユーザー」を選択
- ライセンスを割り当てたい会議室リソースアカウントを選択
- 「ライセンスとアプリ」を選択
- 割り当てるライセンスのチェックボックスにチェックを入れる
- 「変更の保存」をクリックして完了
3-3. Exchange メールボックスのプロパティの変更
Exchange PowerShellを使用してメールボックスのプロパティを変更すると、会議イベントの処理方法やディスプレイに表示される会議情報等を変更できます。
Exchange PowerShellを使用したことが無い場合は、PowerShell Exchange Moduleをインストールするところから始めます。
PowerShell Exchange Moduleのインストール方法
- Windows PowerShell を「管理者として実行」する
- 次の構文を使用し、PowerShellの実行ポリシーを変更します。「実行ポリシーを変更しますか?」と聞かれたら、"y"を押してEnterキーを押します
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned
- 次の構文を使用してPowerShell Exchange Moduleをインストールします。「'PSGallery'からモジュールをインストールしますか?」と聞かれたら、"y"を押してEnterキーを押します
Install-Module -Name ExchangeOnlineManagement
- インストールしたら、次の構文を使用してモジュールを読み込みます
Import-Module ExchangeOnlineManagement
Exchange Onlineに接続する
次の構文を使用してExchange Onlineに接続します。Exchangeの管理者権限のあるユーザーのメールアドレスで認証する必要があります
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName example@example.com
メールボックスのプロパティ
Microsoft が推奨するメールボックスのプロパティから、運用の要件に合わせて適用するプロパティを選びます。
-
AutomateProcessing
$AutoAccept: 必須設定。予約をリソースアカウントに送信したときに自動で承認されるようになります -
AddOrganizerToSubject
$false: 会議の開催者がイベントの件名に追加されない(推奨)
$ture: 会議の開催者がイベントの件名に追加される -
DeleteComments
$false: 受信した会議出席依頼のメッセージ本文のテキストが保持される設定。Zoom, Webexに参加する場合は必須 -
DeleteSubject
$false: 会議出席依頼の件名を保持する(推奨)
$true: 会議出席依頼の件名を保持しない -
ProcessExternalMeetingMessages:
$true: 組織の外部から送られたWeb会議の招待をMTRデバイスに転送して、MTRデバイスからWeb会議に参加できるようになります -
RemovePrivateProperty:
$false: 元の会議出席依頼で会議の開催者によって送信されたプライベートフラグが反映されます -
AddAdditionalResponse:
$true: AdditionalResponse パラメーターで指定されたテキストが会議出席依頼に追加されます -
AdditionalResponse: 自動承認したときに自動で開催者に返信されるテキストを設定できます
変更するプロパティが決定したら下記のように実行します。
Set-CalendarProcessing -Identity example@example.com -AddOrganizerToSubject $false -DeleteComments $false -DeleteSubject $false -ProcessExternalMeetingMessages $true -RemovePrivateProperty $false
現在のプロパティを取得するには下記の構文を使用します。
Get-CalendarProcessing -Identity "example@example.com" | Format-List
4. デバイスを設置・セットアップする
デバイスの設置
デバイスが届いたら各メーカーの説明書に従ってデバイスを設置しましょう。カメラやマイクはこの段階では壁や机には固定せず、実際に通話テストを行ってからすると良いと思います。
デバイスのセットアップ
MTRの初回起動時には初期設定があります。
初期設定にはDHCP環境の利用が推奨されています。
どんなデバイスでも初期設定時のアップデートはかなり時間がかかるようです。Teams Roomsの開始画面が出るまで気長に待ちましょう。(半日ぐらいかかることも...)
痺れを切らして強制終了してしまうと最悪リカバリーが必要になります。
5. ログインと設定を行う
MTRへのログイン
ログインには会議室リソースアカウントのメールアドレスとそのパスワードが必要です。
3-2. リソースアカウントの作成とライセンスの割当で作成した会議室リソースアカウトのメールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。
MTRの設定
MTRのタッチコントロールパネルから設定画面にアクセスできます。「その他 > 設定」
初期パスワードは"sfb"です。
会議に使用する周辺機器の設定や音量を調節したら「保存して終了」を押して設定を保存してください。
テスト通話
最後にテスト通話を行ってオーディオ・カメラデバイスの機能に問題がないことを確認してください。
タッチコントロールパネルの予定表に会議予定を追加するときは、クライアント端末OutlookやTeamsを使って予定を送信します。
さいごに
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利用開始までの流れをざっくり理解して貰えれば嬉しいです。
深堀りできなかった内容については今後紹介予定です。
質問やコメントがあればコメント欄へ是非。