この記事について
幅広い分野で使われる行列計算についての新たに学びたい人又は、昔習ったことがある方には復習にでも、この記事を読んでもらえらた嬉しいです。
独学で勉強をした行列についての振り返りも兼ねて書いたので、わかりやすければ幸いです。
この記事では主に、行列計算とは何かから始め、行列計算(足し算、引き算、掛け算)についてわかりやすく書いていけたらと思います。
行列とは?
行列(matrix)というのは、このように括弧の中に数字が書かれた形で示されるものです。
\begin{bmatrix}
0\\
1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0&1\\
2&3
\end{bmatrix}
括弧の中に現れる数字は、行列の成分(entries)と言います。
例えば、最も簡単な$2\times2$の行列を使うと、
A =
\begin{bmatrix}
1&3\\
-7&8
\end{bmatrix}\;
B =
\begin{bmatrix}
1&b\\
-7&d
\end{bmatrix}
の時、$b = 3, d = 8$となります。よって行列を同一とみなす時は、この行列の成分が一緒である時です。
では、$2\times2$より大きな行列では、基本的に行列($n\times n$)をこのように定義します。
A =
\left(
\begin{array}{ccccc}
a_{11} & a_{12} & \cdots &a_{1n-1} & a_{1n} \\
a_{21} & \ddots & & & \vdots \\
\vdots& & a_{ii} & & a_{in} \\
a_{n-11}& & & \ddots & \vdots \\
a_{n1} & \cdots & a_{ni} & \cdots & a_{nn}
\end{array}
\right)
では、早速行列の足し算と引き算に進んでいきましょう。
行列の足し算と引き算
行列の足し算と引き算はとても簡単で、実は普通の計算とそう変わりありません。
A =
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
B =
\begin{bmatrix}
e&f\\
g&h
\end{bmatrix}
このような2つの行列を足したい時、一つずつの行列の成分と、もう一つの行列の同じ成分とを足しわせるだけでいいのです。
A + B =
\begin{bmatrix}
a+e&b+f\\
c+g&d+h
\end{bmatrix}
引き算でも同じように、一つずつの行列の成分から、もう一つの行列の同じ成分を引くことによって求まります。
A - B =
\begin{bmatrix}
a-e&b-f\\
c-g&d-h
\end{bmatrix}
実は行列の足し算と引き算はとてもシンプルなんです。
Note:
\begin{bmatrix}
0&0\\
0&0
\end{bmatrix}
このような特殊な行列は行列計算での0を表す行列となっています。
行列の掛け算
行列の掛け算はもう少し複雑ですが、式で表すとこうなります。
A =
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
B =
\begin{bmatrix}
e&f\\
g&h
\end{bmatrix}
A\times B =
\begin{bmatrix}
ae+bg&af+bh\\
ce+dg&cf+dh
\end{bmatrix}
例え:
\begin{align*}
\begin{bmatrix}
3&4\\
-2&5
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
2&1\\
6&3
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
3\cdot2+4\cdot6&3\cdot1+4\cdot 3\\
(-2)\cdot 2+5\cdot6 & (-2)\cdot 1+5\cdot3
\end{bmatrix}\\
&=
\begin{bmatrix}
30&15\\
26&13
\end{bmatrix}
\end{align*}
特殊な例としてあるのは、このような行列の積です。
\begin{bmatrix}
0&1\\
0&0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1&0\\
0&0
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
0&0\\
0&0
\end{bmatrix}
= 0
特殊な行列
単位行列(Identity Matrix)
\begin{bmatrix}
1&0\\
0&1
\end{bmatrix}
このような特殊なベクトルは$E$(単位行列)や$I$(identity matrix) と表記されます。この行列の性質は、普通の計算での1と同じように扱われ、ある行列と単位行列との積はかけられた積となります。
例えば、
A=
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
I =
\begin{bmatrix}
1&0\\
0&1
\end{bmatrix}
である時、
\begin{align*}
AI &=
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1&0\\
0&1
\end{bmatrix}\\
&=
\begin{bmatrix}
a\cdot1+c\cdot 0&b\cdot1+d\cdot 0\\
a\cdot 0+c\cdot 1&b\cdot 0+d\cdot 1
\end{bmatrix}\\
&=
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
= A
\end{align*}
となります。
対角行列(diagonal matrix)
\begin{bmatrix}
a&0\\
0&d
\end{bmatrix}
このように対角線状に行列の成分が存在する行列は、対角行列(diagonal matrix)と言います。
スカラー行列(scalar matrix)
\begin{bmatrix}
a&0\\
0&a
\end{bmatrix}
このような対角成分が同一である行列はスカラー行列(Scalar matrix)と言います。スカラー行列は$aI$としても表記することができます。
aI =
\begin{bmatrix}
a\\
a
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1&0\\
0&1
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
a&0\\
0&a
\end{bmatrix}
この知識は後に学ぶ固有値問題というものを解くのにも役に立つ知識ですね。
上三角行列/下三角行列(upper triangular matrix/lower triangular matrix)
A =
\begin{bmatrix}
a&b\\
c&d
\end{bmatrix}
とあった時に、もし$c$が0であればこれは、上三角行列(upper triangular matrix)と呼び、もし$b$が0であれば、下三角行列(lower triangular matrix)と呼びます。
\begin{align*}
Upper\; Triangular\;Matrix &=
\begin{bmatrix}
a&b\\
0&d
\end{bmatrix}\\
Lower \; Triangular \; Matrix &=
\begin{bmatrix}
a&0\\
c&d
\end{bmatrix}
\end{align*}
最後に
ベクトルの基礎中の基礎の部分を簡単に説明しました。わかりやすければ幸いです。