MySQLのデフォルトのストレージエンジンといえばInnoDBだが、元々は旧MySQL社(MySQL AB)とは別会社のInnobase Oyというフィンランドの会社が開発していた。2002年2月28日リリースのMySQL 3.23.49からMySQLに同梱される安定版として提供されるようになった。
知名度:★★★☆☆
闇度 :★★☆☆☆
裏話盛り上がり度:★★★★★
MySQLの歴史上の大事件の一つが2005年10月7日にこのInnobaseがオラクルに買収されたこと。
オラクルが買収後にInnoDBの開発停止やMySQLへの提供を取りやめていれば、当時のMySQLは他にまっとうなトランザクション対応のストレージエンジンがなかったためRDBMSとしては死活問題になり得た。なおMySQL ABとInnobase Oyとの間に「複数年契約」が存在していたこともあり数年間は同様の形態での連携が継続は確実だったが、その後のこの「複数年契約」の更新時に契約が打ち切られるかどうかはかなり不安が残っていた。この契約が無事に自動更新された際のお祭り騒ぎについては当時の中の人を飲ませるとめいっぱい語ってくれる、かもしれない。
買収半年後のMySQL User Conference 2006でのInnoDBのプレゼンテーションのテンプレートが当時のオラクル社のテンプレートから右下の会社ロゴ部分を変更しただけのものになっていて、買収を実感させられて衝撃だった。Q&Aのスライドも当時のオラクル社のスライドそのまま。
ちなみにオラクルになってからのInnobaseのメンバーはInnoDBストレージエンジンを第2世代のプラグイン版に更新してファイルフォーマットもbarracudaを導入するなどそれとなく開発を継続。いつ頃変わったのかは調べきれなかったがMySQL User Conference 2009のInnoDBプレゼンテーションのテンプレートは青基調のInnobase独自のものだった。Q&Aのスライドも色が変わっていた。
最後のページは”an Oracle Company"の赤字のところが逆に目立つけど。
ここにも載っているように知名度ほぼゼロなEmbedded InnoDBなる製品の開発もしていたらしい。2009年にはオラクルがEmbedded InnoDBに関するプレスリリースを打った形跡も。保管していたEmbedded InnoDBのソースコードをGitHubに上げている人もいるようなのでご興味があればぜひ。
2010年にMySQLの開発チームが買収によってオラクルの一部になるまで、オラクルがMySQLのトランザクション対応ストレージエンジンを提供していた形だったのは意外と知れていないのかもしれない。