はじめに
VMware Cloud on AWS(以降VMC)はvSAN構成であるためストレージだけを増やすことはできませんでした。もちろんゲストOSからNASを利用することはできたのですが、仮想マシンのバックエンドストレージとして使えるのは内蔵SSDのみでした。しかし、VMware Explore 2022にて2つの方法が発表されました。
Amazon FSx for NetApp ONTAP(2022年9月より)を使う方法とVMware Cloud Flex Storage(2023年2月より)を使う方法です。この記事ではそれぞれの特徴と使いどころを検討していきたいと思います。
Amazon FSx for NetApp ONTAP(FSxN) v.s. VMware Cloud Flex Storage(Flex)
ローカル | FSxN | Flex | |
---|---|---|---|
マウント方法 | vSAN | NFS | NFS |
最小容量 | 20.74GiB(※1) | 1TiB | 25TiB |
最大容量 | 14.3PiB(※2) | 3PiB(※3) | 400TiB |
容量課金(25TiB/月で比較) | $18,254/month(※4) | $2,183.21/25TiB-month(※5) | $4,485.12/25TiB-month(※6) |
通信課金 | なし | $1,491/month(※7) | なし |
応答速度 | 高 | 低(※7) | 中 |
転送速度 | 高 | 中 | 中 |
最大IOPS | 高(※8) | 低(80k) | 中(300k) |
重複排除 | 可 | 可 | 可 |
圧縮 | 可 | 可 | 可 |
暗号化 | 可 | 可 | 可 |
その他 | ストレージを足すにはホストを足すしかない | 接続にはVMware Managed Transit Gatewayが必要 | アサイン量ではなく使用量に対して課金 |
※上記情報は 2023/3/23時点の東京リージョン利用時の情報であり最新の情報はAWS、VMware社のWEBをご参照ください。
※1 i3 10.37GiB x 2(最小台数) = 20.74GiB(冗長化、管理領域考慮せず)
※2 SDDCあたりi3en 45.84TiB x 16台(最大クラスタ台数) x 20(最大クラスタ数) = 約14.3PiB(冗長化、管理領域考慮せず)
※3 高速アクセスのためのSSDは192TiBまでなのであまり容量を増やすと速度が落ちます。
※4 i3(10.37GiB) $6,084/month x 3台 = $18,254/month (i3はもうすぐ廃止される予定です)
※5 FSxNの料金計算はSSDの割合、スループット、IOPSアサイン等で変わり複雑なため25TB分をカリキュレータで計算したサンプルを以下に記載します。(25TiB/SSD 20% シングルAZ 重複排除効果考慮せず、1000IOPS、1024MBps)
https://calculator.aws/#/estimate?id=9b06a828c85e1be5d0bb7e6d600a5be117ddafb9
※6 オンデマンド料金 $179.40480/TiB-month x 25TiBで $4,485.12/month
※7 FSxとVMCを繋ぐためにはVMware Managed Transit Gatewayを通す必要があり通信課金があります。また、ネットワーク的に遠いためFlexよりは応答性が落ちます。通信課金は時間課金 $0.07/アタッチメント-hと通信課金 $0.02/GB-hが掛かります。VMCとFSxNを接続するのでアタッチメントは2、月に72TB通信したとすると、時間課金 0.07 x 2 * 24 * 30.4 = 51.072、通信課金 0.02 * 72,000 = 1,440、計 $1,491/month
※8 公表値はありませんが、オールNVMe SSDでのvSANなので相当速いです。
まとめ
価格はvSAN > Flex > FSxN です。ただし、FSxNは通信課金やスループット、IOPS課金があるのでヘビーユースには向かないです。一番速いのは何と言ってもvSANです。
上記を考慮すると、以下の様なユースケースが合ってるかと思います。
【vSAN】
・本番機(高いディスク性能が必要)
・とにかく速度が欲しい。
・CPU、メモリ、ストレージのバランスがVMC構成にマッチしている(外部ストレージを使う必要がない)
【FSxN】
・検証機(常時稼働しない)
・いつも稼働している訳ではないがいつでも使えるように仮想マシンを残しておきたい。性能は求めない。
【Flex】
・本番機&検証機(そこそこ性能を必要とする)
・VMCホストのCPU、メモリ、ストレージバランスだとストレージが不足する。
・常時稼働でそれなりに性能を要求する。
おまけ
どうしても仮想マシンからはローカルディスクとして見せたいならば上記のようにESXiのデータストアとして構成する必要がありますが、別にゲストOSからNFSやSMBマウントでもいいのであれば、積極的にFSxNをNASとして利用することをお勧めします。FSxNは元々NASとして設計されているので、マルチユーザ、マルチアクセス、マルチプロトコルでのアクセスが可能です。複数のサーバで使う場合むしろマルチアクセスできた方が嬉しいことも多いと思います。
参考サイト
Amazon FSx for NetApp ONTAP を VMware Cloud on AWS のデータストアとしてサポート
VMware Cloud Flex Storage とは
VMware Cloud on AWS上の仮想マシンでのFSx for NetApp ONTAP利用