はじめに
皆様、はじめまして。
テストリーダー兼テスターをしている@QA_jellyです。
普段は運用中のゲームタイトルに対して、テスト実行やテストケース作成を担当しています。
今年は新しい業務領域として、新規テスターの人材育成に挑戦しました。
本記事では、当時直面した課題や対策、そこから得た改善案などについてご紹介します。
研修概要
今回は別拠点にいる新規テスターを対象に、リモート環境上でOJT研修を行いました。
実施期間 :半年程度
対象メンバー:少人数(2~3人)
実施環境 :完全リモート
研修の実施例
新規テスターの育成において、リモート環境での研修を効果的に進めるために4つの取り組みを実施しました。
各取り組みはコミュニケーションの質の確保と自己学習環境の整備を重視して設計しています。
資料作成
内容:ドメイン(テスト対象)、各ツールの使用方法の資料
目的:作業効率化と独力で進められる環境
研修に必要となる2種類の資料を用意します。
ドメイン(テスト対象)の資料では、機能の全体像から細かな仕様までを整理。
ツールの使用方法は、実施の手順と注意点を含んだ構成としました。
質問シートの用意
内容:スプレッドシートにて、Q&A集を用意
目的:質問の可視化と展開
リモート環境での質問のしづらさを解消するため、スプレッドシートを活用したQ&A集を作成しました。
研修生からの質問とその回答を一元管理することで、同様の疑問を持つメンバー同士での共有ができます。
質問タイム
内容:毎日30分程度の質問タイムを設定
目的:リアルタイムでの課題の抽出と早期解決
日々の業務の中で、質問専用の時間を確保しました。
この時間では研修生が抱える疑問や課題について、リアルタイムでの解決を図ります。
振り返りMTG
内容:自己評価とKPT形式での振り返り
目的:進捗確認と次回への改善案抽出
定期的な振り返りミーティングでは、研修生による自己評価とKPT(Keep/Problem/Try)形式での振り返りを実施しました。
これにより、研修の進捗状況を確認するとともに、カリキュラムの改善点抽出も目指します。
結果と振り返り
成功例とその効果
質問シート
リモート環境では、相手の状況が見えないため、研修生の作業進捗や躓きポイントの把握が困難です。
これに対して、スプレッドシートを利用したQ&A集を導入したことで、以下の効果が得られました。
- 過去の質問履歴が学習リソースとして機能
- 同じ疑問を持つメンバーが過去の回答を参照可能
- 質問シートに記載しておくことで、躓いたときに回答を待ちながら別の作業を行える
特にテストケース進捗の定期確認と組み合わせることで、相手の状況が見えないことを解決しながら質問の可視化と共有を実現できました。
質問タイム
リモート環境では、相手の端末に触れないという物理的な制約がある中、毎日の質問タイムを設けたことで、以下の効果が得られました。
- 疑問の早期解決により、業務に集中できる環境を構築
- 専用の時間を設けることで、積極的なコミュニケーションを促進
- 質問タイム以外の時間でも、画面共有を活用
操作指示の際には、ショートカットキーを活用して明確に手順を伝達
例:chromeのディベロッパーツールを開く
「右上の丸ボタンをクリックして...」→「F12キーを押してください」
特に積極的に画面共有を活用することで、相手の端末に触れないことを解決しながらリアルタイムでの課題抽出と早期解決を実現できました。
失敗例と改善案
資料作成の課題
失敗例
- 初心者の目線を欠いた説明構成
- 機能一覧が不足し、注意点の説明に偏重
- 基本的な操作手順の説明が省略され、実用性の低い内容
改善案
- 機能ツリーやキャプチャ画像を追加し、視覚的な理解を促進(図1参照)
- 前提知識の補足資料を作成し、段階的な学習をサポート
- 基本操作から応用まで、体系的な説明構成に修正
リモート環境では、何かを教える際に目の前で実演することができません。
そのため、効率的な手順や注意点などのポイントを伝えるためには、周りに誰もいない環境でも伝わる資料を用意する必要がありました。
※図1 視覚的な理解を促進
改善前 | 改善後 |
---|---|
目次が無く、キャプチャ画像も無い | 目次と、キャプチャを追加 |
振り返りMTG
失敗例
- ファシリテーターとして緊張し、研修メンバーにも影響を与えてしまった
- 課題の議論が質問タイムと重複することが多く、MTGの意義が薄れる
- KPT形式に固執し、自由な意見が出にくい雰囲気だった
改善案
- アイスブレイクの導入でリラックスした雰囲気作り
- MTGの目的を明確化し、質問タイムとの差別化を図る
- 状況に応じて異なるフレームワークを活用し、柔軟な振り返りを実施
リモート環境では、同じ空間での会議ができないため、実際に同じ場で会議をするよりも緊張が伝わりやすいです。
そのため、アイスブレイクを導入したリラックスした雰囲気作りや、声のトーンなどにも気を配る必要がありました。
最後に
今回初めてリモート環境でのOJT研修を担当して、初心者視点の重要性とコミュニケーションの質が最も重要でした。
初心者視点の重要性については、実際に研修生が学ぶ環境を十分に考慮する必要がありました。
また、物理的な距離が離れていることで発生するコミュニケーションの質低下については、定期的な質問タイムや質問シートが、効果的に働いていたと感じます。
これから初めて研修を担当される方やリモート研修を検討している方にとって、本記事が少しでも力になれば幸いです。