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[緊急][重要]ChatGPTの天気予報は正確か?激しいにわか雨13mm/h問題とその対策

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要旨

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ChatGPTは天気予報に関して、英語ベースの天気APIやデータモデルを参照し、日本語と英語の対応関係があいまいなものをそのまま翻訳する結果、「激しいにわか雨 13mm/h」といった不正確な回答を生成する場合があることが判明した。この記事はその原因を追究するとともに当面の緩和方法を述べたものである。

ChatGPT refers to English-based weather APIs and data models for weather forecasts and translates ambiguous Japanese-English correspondence as is, resulting in inaccurate answers such as "heavy rain 13mm/h."This article investigates the causes and describes the mitigation methods for the time being.
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問題提起

ChatGPTが日本語で出力する天気予報文において、「激しいにわか雨(13mm/h)」という表現が確認された。これは、日本の気象庁が定義する「激しい雨」(30~50mm/h)と明らかに矛盾しており、用語と数値の間に構文的ズレが生じている。

この種のズレは単なる翻訳ミスではなく、「危険予知」や「防災」に関する「避難判断」に直結しかねない、構文的な災害リスクである。

そして、これはいわゆるAIが嘘をつく、「ハルシネーション」とは全く別の現象である。今回、ChatGPTは天気予報に関し、検索、情報を取得しているにも関わらず不正確な結果を出力しているためである。

技術背景と原因

この問題について調査を進めた結果、ChatGPTの天気予報の出力は、多くの場合、英語ベースの天気APIやデータモデルを参照して生成されていることが明らかになった。

  • 例:「heavy showers」→「激しいにわか雨」
  • しかし実際の降水量は 13mm/h であり、日本の定義では「やや強い雨」(10~20mm/h)に該当する

このように、英語からの直接翻訳による構文的誤変換が原因であり、気象庁基準と乖離している。

OpenAIへの提案と経緯

筆者はこの問題に気づき、OpenAIに対して正式に提案を行った。

  • 提案内容名:Hadou-31:Weather Term Harmonization — JMA Alignment Mode
  • 内容要旨:
    • 日本語出力時に、気象庁定義と数値の整合性を検証するレイヤーを設けること
    • 用語のズレがあった場合は自動的に修正・注記を加えること
    • 特定のAPIデータに依存していることを明記すること

この提案はOpenAIサポートに受理され、以下が確認された:

  • 提案は社内の製品フィードバックチャンネルに転送された
  • 「激しいにわか雨(13mm/h)」は明確な不整合事例として記録された
  • JMAの定義表と出典リンクは技術資料として採用された

緩和策

現時点ではサポートチームの対応を待っているところであるが、このような誤った出力については、当面適用可能な緩和策を施さなければならない。なぜなら、もうすぐ日本は梅雨入りするため、気象に関する用語で不正確な回答は命にかかわりかねないためである。

そこで、有料ユーザー(Plus以上)は「パーソナライズ設定」に以下の一文を登録するという方法がある。

推奨設定(ChatGPT Plusユーザー向けパーソナライズ例、日本語)

**天気に関する出力は、日本の気象庁(JMA)の定義と数値に基づき整合を取った表現とし、その前提で判断してください。**英語のAPI表現をそのまま翻訳した出力には構文的なズレが含まれる可能性があります。

Recommended Setting (English Version)

I am an English speaker, but I live in Japan. Because the expression of English-based weather forecasts may differ from Japanese standards, I strongly hope that weather information for Japan will be output using consistent terminology based on the definitions and numerical thresholds of the Japan Meteorological Agency (JMA), and that AI will interpret and generate content based on that premise. See sites like Multilingual Information on Disaster Risk Reduction - JMA

この一文をパーソナライズ設定に加えるだけで、ユーザー自身による暫定的な「構文整備」が可能となる。なお、無料ユーザーはパーソナライズ設定が使えないものの、代替案として、「天気予報について、気象庁のサイトの用語を使って回答してください。」という一文を加える方法をとるとよいだろう。完全ではないが、少なくとも抑制する効果はあるはずである。

気象庁による雨の定義(2025年3月時点)

降水強度(mm/h) 用語 英語対応
10~20 やや強い雨 Light to moderate rain
20~30 強い雨 Strong rain
30~50 激しい雨 Heavy rain
50~80 非常に激しい雨 Very heavy rain
80以上 猛烈な雨 Torrential / extreme rain

出典:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html

今後の展望

今回は筆者がChatGPTのユーザーであったために気づいたが、他のAIにおいて同様の問題がどう扱われているのかは筆者では確認ができない。他のAIユーザーは、ぜひ自分の使っているAIにおいて、天気予報の表現がどのように出力されているかを確認してみてほしい。この問題は特定のAIにのみ起きうる問題ではなく、構文と言語体系が異なる場合にはどのAIにも必ず起きうるものである。

また、次のような例では、中国語、韓国語などでも同様のエラーは構造的に起こりうるため、当該言語の話者はこの記事を参考にして、パーソナライズ設定を活用してほしい。

  • 韓国:「호우(豪雨)」の誤使用
  • 中国:「暴雨」などの誤対応
  • ほか、フランスでは:「pluie forte」のズレなど

日本発のこの構文提案が、すべてのAIユーザーおよび多言語の安全基準整備の起点となることを期待する。

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