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事後確率 a posteriori probability

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原題:アドベントのコラム記事
執筆者:MJ

はじめに

物理数学の講義後に,林田君とチェチョトキナさんがやってきて$\cdots\cdots\mbox{略}\cdots\cdots$,アドベントのコラム記事を書くことになった。研究室の院生たちと輪講しているニコ・ヴァンカンペンの確率過程の本から,先週読んだ事後確率 a posteriori probability とそれについて考えたことを紹介しよう。

ベイズの定理

本では,測定機材を用いた物理量$x$の計測プロセスを確率過程として議論する。観測者の測定した値が$u$であった場合に$x$の(事後)確率分布は,ベイズの定理より

\begin{align}
P^u(x) = \frac{P(x) R(u|x)}{\int P(x')R(u|x') \mathrm{d}x'}
\end{align}

である。関数$R(u|x)$は,物理量の値が$x$のときに観測値が$u$となる確率密度(条件付き)である。興味深いのは,物理量$x$の最確値(真値といってもいい)が必ずしも観測者の測定した値$u$に一致するとは限らず,あくまでも事後確率分布$P^u(x)$から推定されるというのだ。つまり,測定した値が$u$であったという事実にもかかわらず,$x$の最確値は$u$と異なる可能性があると述べている。正直言って,いままでこんなことは考えたことがなかった!!

具体例

具体的に考えてみた。
スリットを通過する粒子が左(L)と右(R)のどちらを通り抜けたかを検出する装置を用いて,4つの粒子が通過したときにLRRLと計測されたとしよう。左を通過した粒子が2つ,右を通過した粒子が2つだから,1粒子が左を通過する確率は単純に$p=\frac{2}{4}=0.5$となる。

ところが,この装置の性能$R(u|x)$がつぎのようなものだったとしたら,求まる$p$の値は変わる。

  • 左を通過する粒子に対して,10%の確率で右を通過したと誤る。(精度90%)
  • 右を通過する粒子に対して,20%の確率で左を通過したと誤る。(精度80%)

Lと判定される確率は,$0.9p+0.2(1-p)$である。一方,Rと判定される確率は,$0.1p+0.8(1-p)$である。上式(常識?)の事後確率分布

\begin{eqnarray*}
P^\mathrm{LRRL}(x)&=& \frac{
\{0.9p + 0.2(1-p)\} \{0.1p + 0.8(1-p)\} \{0.1p + 0.8(1-p)\} \{0.9p + 0.2(1-p)\}
}{
[ \{0.9p + 0.2(1-p)\} + \{0.1p + 0.8(1-p)\} ]^4
}\\
&=&
\frac{(0.7p+0.2)^2 (-0.7p+0.8)^2}{1^4}
=\{-(0.7p-0.3)^2+0.25\}^2
\end{eqnarray*}

を最大にする$p=\frac{3}{7}$が最も確からしい。実測の確率$0.5$とは異なるのだ。こんな装置を実際に使うとなると,解析は面倒になるけれど,統計的に色々と遊べそうで楽しいかもしれない。

クリスマスプレゼント

最後に,クリスマスプレゼント。年末年始にじっくり取り組んでください。今までの内容や物理とは無関係な課題です。12月25日に因んで,

\begin{align}
m^2 +n^2 =1225
\end{align}

を満たす自然数$m$, $n$の組を求めよ。

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