今や、ビジネス界全体で生成AIの普及が加速しており、私たちRPA提供メーカーでも、AIの活用とRPAの組み合わせについて、多くのお客様から関心を寄せられています。この組み合わせが、なぜこれほどまでに注目を集めているのか、具体的な事例を交えながら解説していきます。
AIとRPAの組み合わせの強力なメリット
まずはじめに、AIとRPAの役割の違いを改めて確認します。
AIとRPAの違い
AIとは
AI(Artificial Intelligence、アーティフィシャル インテリジェンス)は、データ分析や学習により、人間の判断プロセスを模倣し、需要予測を行うなど「複雑な問題解決」が得意です。特に、人間では気が付くことの難しい判断を大量のデータから有益な情報を引き出し、新たなサービスやビジネスチャンスを作り出します。
事例:AI画像検査
- 製造業での品質検査にAIを活用。見逃し率0%、過検出率2%を達成し、目視検査員不要での量産を実現
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation、ロボティック・プロセス・オートメーション)は、PC上の定型的な業務プロセスを自動化する技術です。繰り返し行われる作業をミスなく、漏れなく、高速に、365日稼働で(自動)実行し、時間とコストを削減します。
引用:定型的な事務作業、日々のパソコン業務でこんなお悩みありませんか?|RPAT
事例:電子申請の登録や、外部機関への情報照会など約40業務を自動化
このように、AIは「知的分析」と「意思決定支援」を得意とし、未知のパターンを発見し、予測モデルを構築することで、ビジネスに新たな価値をもたらします。一方で、RPAは「定型的な作業の自動化」に特化し、ルーティンワークを迅速かつ正確にこなすことで、人的資源をより戦略的な業務に割り当てることができます。
AIとRPAの組み合わせが解決する課題
データ連携の壁を超える
AIの潜在能力を最大限に引き出すには、適切なデータの収集と処理が不可欠です。現代のビジネス環境では、SaaSの利用が一般的ですが、時として欲しいデータがAPI経由で取得できない場合があります。
RPAは、こうしたデータ連携の壁を乗り越えるためのキーとなります。
たとえば、APIを提供していないサイトから定期的にデータを収集する必要がある場合、RPAを使用してデータを収集・整理することが可能です。これにより、AIプロジェクトのデータ基盤を強化し、より正確な分析と予測などを実現することが可能となります。
- 事例・サービス:
RPAで自動化できる例
引用:BizRobo!で自動化できる業務例 「データ収集/出力」、「報告書作成」、「DB補正/洗い替え」「メール送付/通知」、「データ連携(API)」、「ファイル保存・記録」|RPAT
費用対効果の最適化:即時効果と長期ビジョン
ビジネスの世界では、AIの導入が大きな話題となっていますが、その効果を見極めるためには長期的な取り組みが必要です。一方、RPAは具体的な時間削減とコスト削減を可視化しやすいため、効果をある程度事前に見積もることが可能です。AIが学習と成熟を重ねている間も、業務プロセスの効率化とコスト削減を実現してくれるため、経営層を安心させながらイノベーションへの投資を推進することが可能になります。
RPAによる時間創出とAI活用業務の効率化
私自身、AIアプリの開発プロセスを理解するために簡易的なAIアプリを作成していますが、RPAを活用することで効率が大幅に向上することを実感しています。
例えば、AIモデルの精度を向上させるためには、さまざまなパラメータを検証し、何度も実行を繰り返す必要があります。複数のパラメータを検証する場合や、エポック数が多い場合、待機時間が発生するため、時間がかかります。ここでRPAを使えば、「試したいパラメータをセット」「実行」「完了後に結果をSlackで通知する」などのプロセスを自動化できます。
このようにAI開発の現場でも一連の流れをRPAで組むことで、以下のような効果が得られます。
- 効率化: パラメータ検証作業の自動化
- コスト削減: 手作業の削減によるリソース節約
- 時間創出: 自動化により空いた時間を学習や企画に活用
AIツールとRPAの連携: ノーコードで実現する最速の効率化
また、AIアプリを現場が活用する場合も、AIアプリの操作、前後の定型作業をRPAが「自動実行」するこで効果が拡大します。
AIとRPAの組み合わせ事例 データ連携
(1)AI画像解析”DR-Vision”による車内カメラの映像解析業務
自社が主体的に取り組める業務改善手法としてRPAに着目。その翌年には、運行車両の運転席映像をAIによる画像解析で毎日全てチェックする“ながらスマホ防止策”を準備中、システム開発会社からAIとRPAの連携による映像の自動転送を提案
引用:松浦通運株式会社 AIとRPA データ連携事例 物流の安全・安定を支援|RPAT
(2)IoT×AI×RPAによる外観検査と定期報告、納品書作成作業
自動化統合管理の上、RPAが定期実行で異常検知アプリを定期自動操作し、独自フォーマットでメールを送付するサンプル
※本来バックグランドで一瞬で処理され、メール送信機能利用など処理が見えない部分がありますが、「RPA② 」部分のイメージ共有の為、意図して「Gmailを開いて文章をセットし送付する」などフロント画面操作をRPA実行しています。
まとめ:DXを推進するブリッジとしてのRPA
AIプロジェクトは、その可能性を最大限に発揮するためには時間がかかりますが、RPAはその「ブリッジ」として機能します。RPAによる確実な初期効果を背景に、AIの長期的なメリットが熟成するのを待ちつつ、全体としてのデジタルトランスフォーメーションを加速させることができます。
効率性の大幅な向上、コスト削減とROIの最大化、ビジネスの柔軟性とスケーラビリティの向上、従業員のエンゲージメントと生産性の向上など、AIとRPAの組み合わせは、実はすごく身近で、私たちのビジネスや日常生活に革命をもたらす力があります。
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
参考サイト
「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」経済産業省
「機械学習品質マネジメントガイドライン 第3版」国立研究開発法人産業技術総合研究所
「RPA導入における費用対効果は?評価カテゴリーから算出方法まで徹底解説」RPAテクノロジーズ
「機械学習でのデータ収集方法徹底解説!データセット構築手順、外注するメリットとは?」Nextremer
「【Colab 入門】Google Colaboratory とは?使い方・メリットを徹底解説!」キカガク
AI×RPAの事例調査
AISmiley
DXを推進するAIポータルメディア「AIsmiley」| AI製品・サービスの比較・検索サイト
ディープラーニング主要な用途
医療画像解析(Medical Image Analysis)
- 疾患の診断支援
- 医療画像の解析と解釈
- 画像ガイド治療の計画
医療画像解析 事例
急拡大する「画像診断支援AI」の業界地図、大腸や肺を対象とした実用化が先行
エルピクセル株式会社 医師の診断を支援するAI画像診断支援技術「EIRL(エイル)」、創薬に特化した画像解析AI「IMACEL(イマセル)」
合成生物学(Synthetic Biology)
- 遺伝子配列の解析と設計
- 生物学的システムのモデリング
合成生物学 事例
日本医療研究開発機構 深層学習(ディープラーニング)を用いた新規のHLA imputation法、DEEP HLAを開発
実践編例: ディープラーニングを使った配列解析 日本メディカルAI学会公認資格:メディカルAI専門コースのオンライン講義資料
自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)
- テキスト分類、感情分析、名前付きエンティティ認識(NER)
- 機械翻訳
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- テキスト要約
- 言語モデル(例:GPTシリーズ)
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白質高信号AIレポートの自動生成機能である「EIRL Brain Report」をリリース
音声認識(Speech Recognition)
- 自動音声認識(ASR)
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音声認識 事例
歯科医院の予約をスムーズに!AI音声認識機能を活用した自動電話予約対応システム
推薦システム(Recommendation Systems)
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AMAZON Recommender systems アイテムベース協調フィルタリング
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異常検出(Anomaly Detection)
- 金融詐欺検出
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システムの振る舞いを自動学習/監視し異常予兆を検知することにより、安全で効率的なシステム操業を可能にします。「NEC Advanced Analytics - インバリアント分析
千葉銀行、特殊詐欺などの不正取引をAIで検知するシステムを導入、2024年に運用開始
AIが機械部品の故障を予測する予知保全システム トヨタ自動車さまとの協業の取組み
ロボティクス(Robotics)
ロボットによる物体の把握と操作
自動運転車
環境認識とナビゲーション
筆者について
文系非エンジニアだが、データ活用に興味を持ちプライベートでAI学習中。精度向上などに日々トライをしながら、AIやRPAについて素朴に思ったことを発信します。