日本語で
- 情報学
- 情報科学
- 情報工学
- 計算機科学
- コンピュータ科学
- コンピュータサイエンス
- 情報理工学
といった場合、情報科学と情報工学のscienceかengineeringかの意識の違いを除けばほぼ似たような意味を持つ。
一方で、これを英語にするとどうだろうか?
- informatics
- information science
- information engineering
- computer science
- computer science
- computer science
- information science and engineering
こうなるが、このうちアメリカの英語話者にとって日本語と同じような意味で捉えられているのはcomputer scieceであり、他はあまり使わない表現であるか、別の意味で捉えられてしまうらしい。
この辺りの事情は「加藤淳一, 日本における information science についての構想―序論:米国との比較―」にまとめられている。
一方で、他の主要な科学の発達した国の言語ではどうなっているかというと、
言語 | 名称 | 直訳 |
---|---|---|
英語 | computer science | 計算機科学 |
ドイツ語 | Informatik | 情報学 |
フランス語 | informatique | 情報学 |
イタリア語 | informatica | 情報学 |
スペイン語 | ciencias de la computación | 計算の科学 |
ロシア語 | информатика | 情報学 |
中国語 | 计算机科学 | 計算機科学 |
ということで各国語間で直訳が通じない混乱状態にある。
日本の主要大学では(大学院の)名称はどうなっているかというと、
大学 | 日本語名 | 英語名 | 英語名直訳 |
---|---|---|---|
東大 | 情報理工学 | information science and technology | 情報科学と情報技術 |
阪大 | 情報科学 | information science and technology | 情報科学と情報技術 |
北大 | 情報科学 | information science and technology | 情報科学と情報技術 |
九大 | システム情報科学 | information science and electrical engineering | 情報科学と電子工学 |
東北大 | 情報科学 | information sciences | 情報科学 |
京大 | 情報学 | informatics | 情報学 |
名大 | 情報学 | informatics | 情報学 |
東工大 | 情報理工学 | computing | 計算学 |
筑波大 | システム情報工学 | systems and information engineering | システムと情報の工学 |
(東工大だけ謎システムである)となっており、「computer science」または「計算機科学」でもって情報系の学問を代表して表すことは日本の主流ではない。上で一番剛直なのは東北大で誤解を恐れずに情報科学=information science(s)としている。
情報理論・物理を専門としてる身からすると、自己紹介のときに、「私の専門は計算機科学です」とは死んでも言いたくない。情報理論は計算機の学問ではない。しかし、英語のcomputer scienceは情報理論を含むことになっている。しかし私は計算機を研究してるわけではない。
日本語でいうところの「情報科学」の意味でもって「コンピュータ科学」と呼ぶのはやめてもらいたい。もちろんプログラミング言語の性質の研究を指してコンピュータ科学と呼ぶのはおかしくない。英語以外で「計算機科学」という表現は主流とは言い難いし、学問の描像に対して的を得ていない言葉だと感じる。