宇宙の深淵からこんにちは!
\displaystyle\int {\rm d}\boldsymbol{r}\hat{\psi}^{\dagger}(\boldsymbol{r})ぽっぴんフレンズ\hat{\psi}(\boldsymbol{r})
です!今回は栄えある Qiita 初投稿ということで、モノポールが存在する世界での Maxwell 方程式を求めてみました!
Maxwell 方程式は電磁気学の基礎方程式ですが、実はモノポールが存在しないという前提で作られているんです!(な、なんだって~!!!) しかし、皆さんは将来異世界転生する機会があるかと思いますが、転生先の世界にモノポールが存在していた場合、こちらの世界の Maxwell 方程式を振りかざしてしまっては大恥をかいてしまいかねません。ということで、恥ずかしい思いをしないためにも、モノポールが存在する世界で、Maxwell方程式がどのようになるか見ていきましょう!
#モノポール
この世界には、なぜかは分かりませんが、電気と磁気という非常に似通った2つの存在があります。電気、磁気共にプラスとマイナスの2種類あり、同符号同士は反発しあい、異符号同士は引き付けあいます。しかし、両者には1つだけ大きな違いがあります。それは、電気はプラスとマイナスが独立で存在できるのに対し、磁気は必ずプラスとマイナスがセットでないと存在しえないことです。
陽子・電子はそれぞれプラス・マイナスの電荷を持ており、引力によって原子を形成していますが、陽子・電子単体を原子から取り出すことは(理論上)可能です。しかし、プラス極とマイナス極を持つ磁石を半分に切っても、プラス極或いはマイナス極単体の磁石はできません。プラス・マイナスの両極を持つ磁石が2つできるだけです。
プラス或いはマイナスだけの磁石は現実には存在しませんが、理論上の存在として考えることはできます。それが、モノポール(単極子)です。モノポールは様々なSF作品(Robotics;Notesなど)で登場しますが、それらの世界と我々の世界では、電磁気学の基礎方程式である Maxwell方程式 に違いが生じてくるでしょう(もちろん、我々の世界の Maxwell方程式 はモノポールが存在しない前提で作られています)。
#我々の世界での Maxwell 方程式
まず、電気や磁気がどのようにして力を伝えているのかを考えてみましょう。何もない空間に電荷がぽつんと置かれたとします。すると、空間には電気的な歪みが生じます。この歪みは電荷に近いほど強く、遠いほど弱くなります。ここに、別の電荷が少し離れたところに現れたとしましょう。新たな電荷は、自分のいる位置に電気的な歪みを感知し、その歪みの強さと自身の電気量に応じた力を受けます。丁度、丈夫で平らなゴム膜の真ん中にボーリング玉を置くと膜が歪み、ボーリング玉から少し離れたところにビー玉を置くとゴム膜の歪みによってビー玉が転がり始めるようなイメージです。ここでいう電気的な歪みとは、すなわち電場のことです。磁気も同様に、磁荷から磁場が生じ、別の磁荷が磁場を感じ取ることで力が生じます。一方で、磁気の場合はモノポールが存在しないという事情により、磁場よりも磁束密度というものがよく用いられます。
電場と磁場には切っても切れない関係があります。長い年月を通して、電場と磁場について以下のことが分かってきました。
- 電荷があると電場が湧きだす。
- 磁束密度はどこからも湧き出さない。
- 磁束密度が変化すると、渦巻く電場が生じる。
- 電場が変化すると、或いは電流があると、渦巻く磁束密度が生じる。
これらの関係を式にまとめたのが、Maxwell 方程式です。以下が真空における方程式です。$\boldsymbol{E}, \boldsymbol{B}$ がそれぞれ電場と磁束密度、$\rho, \boldsymbol{j}$がそれぞれ電荷密度と電流密度、$\epsilon_0, \mu_0$がそれぞれ真空の誘電率と透磁率、$\nabla=(\partial/\partial x, \partial/\partial y, \partial/\partial z)^t$ はナブラ演算子です。
\begin{align}
&\nabla\cdot\boldsymbol{E}=\frac{\rho}{\epsilon_0}\\
&\nabla\cdot\boldsymbol{B}=0\\
&\nabla\times\boldsymbol{E}=-\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}\\
&\nabla\times\boldsymbol{B}=\epsilon_0\mu_0\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} + \mu_0\boldsymbol{j}
\end{align}
嗚呼、既に美しい。。。
#電荷保存則、磁荷保存則
電磁気学には、もう一つ重要な法則があります。それが電荷保存則です。簡単に言えば、電荷はプラスやマイナスだけが突然増えたり消えたりすることはない(プラスとマイナスがセットで生成・消滅することはありえる)という法則です。これを式で書くと以下のようになります。
\frac{\partial \rho}{\partial t} =- \nabla\cdot\boldsymbol{j}
左辺はある点の近傍における電荷密度の変化分(増加する場合が正)、右辺はある点の近傍に流入する電気量( $\nabla\cdot\boldsymbol{j}$ が湧きだしを意味するため、マイナスをつけることで流入を意味することになる)です。つまり、入ってきた分だけ増えるということです(シンプル~)。
電荷保存則は、実は Maxwell 方程式から導出することができます。Maxwell 方程式の第4式の辺々に $\nabla\cdot$ を作用させてみましょう。ベクトル解析の公式 $\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol{A})=0$ なども使うと、以下のようになります。
\begin{align}
&\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol{B})=\nabla\cdot\left(\epsilon_0\mu_0\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} + \mu_0\boldsymbol{j}\right)\\
\Longrightarrow\ &0 = \epsilon_0\mu_0\nabla\cdot\left(\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t}\right)+\mu_0\nabla\cdot\boldsymbol{j}\\
\Longrightarrow\ &\epsilon_0\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\cdot\boldsymbol{E})=-\nabla\cdot\boldsymbol{j}
\end{align}
左辺に Maxwell 方程式の第1式を代入すれば、
\begin{align}
&\epsilon_0\frac{\partial}{\partial t}\left(\frac{\rho}{\epsilon_0}\right)=-\nabla\cdot\boldsymbol{j}\\
\Longrightarrow\ &\frac{\partial \rho}{\partial t} =- \nabla\cdot\boldsymbol{j}
\end{align}
となり、電荷保存則が導出されました。
モノポールが存在する世界では、電荷密度や電流密度に対応して、磁荷密度や磁流密度が存在すると言ってよいでしょう。そして、電荷保存則に対応して、磁荷保存則が成立している必要があるはずです。ここで、電荷密度及び電流密度を $\rho_e, \boldsymbol{j}_e$、磁荷密度及び磁流密度を $\rho_m, \boldsymbol{j}_m$ としましょう。このとき、電荷保存則及び磁荷保存則をこの世界に要請しましょう。
\frac{\partial \rho_e}{\partial t} =- \nabla\cdot\boldsymbol{j}_e\\
\frac{\partial \rho_m}{\partial t} =- \nabla\cdot\boldsymbol{j}_m
この2式を足掛かりとして、次からいよいよモノポールが存在する世界での Maxwell 方程式を考えていきましょう。
#Maxwell方程式の書き換え
電気に関する物理量に変更はないので Maxwell 方程式の第1式に変化はありません。早速変化するのは第2式です。モノポールが存在するので、磁場 $\boldsymbol{H}$ の代わりに磁束密度 $\boldsymbol{B}$ を用いる理由もありません。第1式に対応して、第2式は以下のようになります。
\begin{align}
&\nabla\cdot\boldsymbol{E}=\frac{\rho_e}{\epsilon_0}\\
&\nabla\cdot\boldsymbol{H}=\frac{\rho_m}{\mu_0}\\
\end{align}
次に、第4式も書き換える必要はありません。前節で述べたように、第1式と第4式を合わせることで電荷保存則が導かれました。モノポールが存在する世界でも電荷保存則は成立してほしいので、第1式に変化がない以上第4式にも変化はありません。磁束密度を磁場に直し、電流密度の記号も直せばよいのです。真空における磁場と磁束密度の間には $\boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{H}$ という関係があるので、これを第4式に代入すると、以下のようになります。
\nabla\times\boldsymbol{H}=\epsilon_0\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} + \boldsymbol{j}_e
ということで残るは第3式です。とりあえず、以下のように磁束密度を磁場に直し、さらに補正項を加えてみましょう。
\nabla\times\boldsymbol{E}=-\mu_0\frac{\partial \boldsymbol{H}}{\partial t} + (補正項)
ここで、ついに磁荷保存則の出番です。磁荷保存則が成立するように補正項を決定すれば仕事の完成です。早速、上の式の両辺に $\nabla\cdot$ を作用してみましょう。
\begin{align}
&\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol{E})=\nabla\cdot\left(-\mu_0\frac{\partial \boldsymbol{H}}{\partial t} + (補正項)\right)\\
\Longrightarrow\ &0 = -\mu_0\nabla\cdot\left(\frac{\partial \boldsymbol{H}}{\partial t}\right)+\nabla\cdot(補正項)\\
\Longrightarrow\ &\mu_0\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\cdot\boldsymbol{H})=\nabla\cdot(補正項)
\end{align}
左辺に、修正後の第2式を代入すると、
\begin{align}
&\mu_0\frac{\partial}{\partial t}\left(\frac{\rho_m}{\mu_0}\right)=\nabla\cdot(補正項)\\
\Longrightarrow\ &\frac{\partial \rho_m}{\partial t} = \nabla\cdot(補正項)
\end{align}
これが磁荷保存則になってほしいので、$(補正項)=-\boldsymbol{j}_m$ であれば良いことが分かります。これで、第3式の補正も終わりました。
\nabla\times\boldsymbol{E}=-\mu_0\frac{\partial \boldsymbol{H}}{\partial t} - \boldsymbol{j}_m
以上で、モノポールが存在する世界での Maxwell 方程式が導出されました!さて、早速そのご尊顔を拝してみましょう!これで異世界転生先にモノポールが存在しててももう大丈夫ですね!
\begin{align}
\\
&\nabla\cdot\boldsymbol{E}=\frac{\rho_e}{\epsilon_0}\\
&\nabla\cdot\boldsymbol{H}=\frac{\rho_m}{\mu_0}\\
&\nabla\times\boldsymbol{H}=-\epsilon_0\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} - \boldsymbol{j}_e\\
&\nabla\times\boldsymbol{E}=\mu_0\frac{\partial \boldsymbol{H}}{\partial t} + \boldsymbol{j}_m
\end{align}
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#まとめ
今回はモノポールが存在する世界での Maxwell 方程式を求めてみました。みなさん、いかがだったでしょうか?コメント欄にてぜひご感想をお聞かせください!また、式や文章の間違い、記事の書き方についてのアドバイス、その他取り上げてほしい題材のリクエスト等あれば遠慮なくコメントしてください。ブログも学問も人生もまだまだ初心者なので、皆さんから優しくご指導を賜れればと思います。それでは、また次の記事でお会いしましょう!