0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

アーク整合性とバックトラッキング探索:制約満足問題を効率的に解く手法

Posted at

アーク整合性とバックトラッキング探索:制約満足問題を効率的に解く手法

制約満足問題 (Constraint Satisfaction Problem, CSP) を効率的に解くためには、アーク整合性 (Arc Consistency) とバックトラッキング探索の手法を組み合わせることが重要です。本記事では、これらのアルゴリズムの詳細と、制約満足問題の解決における応用について解説します。


アーク整合性 (Arc Consistency) とは?

アーク整合性は、制約グラフにおける変数間の制約を考慮し、不整合な値をドメインから除外するプロセスです。これにより、探索空間を縮小し、効率的に問題を解くことが可能になります。

アーク整合性のプロセス

  1. 初期化
    制約グラフ内のすべてのアークをキューに追加します。

  2. 整合性の確認
    キューからアークを取り出し、アーク整合性を確認します。例えば、変数 ( X ) のドメインから値を選び、それが隣接する変数 ( Y ) のドメインと一致するかを調べます。不一致の場合は、その値を ( X ) のドメインから削除します。

  3. 隣接アークの更新
    もし ( X ) のドメインが更新された場合、その変更が影響を及ぼす隣接アークをキューに追加します。

  4. 終了条件
    キューが空になれば、アーク整合性の処理は完了です。


AC3アルゴリズムの詳細

AC3 (Arc-Consistency 3) アルゴリズムは、アーク整合性を効率的に適用する手法です。このアルゴリズムでは、以下の手順が実行されます。

  1. キューの準備
    問題に関連するすべてのアークをキューに追加します。

  2. アークのチェック
    キューからアーク ( (X, Y) ) を取り出し、( X ) のドメインから不整合な値を削除します。

  3. 再確認のアーク追加
    ( X ) のドメインが変更された場合、その影響を受ける隣接するアーク ( (Z, X) ) をキューに追加します。

  4. 終了
    キューが空になるまで処理を繰り返します。


AC3とバックトラッキング探索の統合

AC3アルゴリズムは、探索開始前または途中で実行することで、変数のドメインを事前に縮小し、探索効率を向上させます。以下に、バックトラッキング探索と統合した手法を示します。

バックトラッキング探索

バックトラッキング探索は、再帰的に変数に値を割り当てながら制約をチェックする手法です。矛盾が発生した場合は、直前の割り当てに戻り、別の値を試みます。

def backtrack(assignment, problem):
    if is_complete(assignment, problem):
        return assignment
    var = select_unassigned_variable(assignment, problem)
    for value in order_domain_values(var, assignment, problem):
        if is_consistent(var, value, assignment, problem):
            assignment[var] = value
            inferences = ac3(problem, var)  # アーク整合性を適用
            if inferences is not None:
                result = backtrack(assignment, problem)
                if result:
                    return result
            del assignment[var]
    return None

効率化のためのヒューリスティクス

探索効率をさらに向上させるために、以下のヒューリスティクスを活用します:

  1. 最小残余値 (Minimum Remaining Values, MRV)
    ドメインサイズが最も小さい変数を優先して選択します。制約の影響が大きい変数を先に処理することで効率化を図ります。

  2. 最大制約次数 (Degree Heuristic)
    他の変数と最も多くの制約を共有する変数を優先的に選択します。これにより、早期に矛盾を発見できます。

  3. 最小制約値 (Least Constraining Value)
    他の変数のドメインを最小限に制約する値を優先します。これにより、後続の探索が容易になります。


実践例:試験スケジューリング問題

問題設定

7つの試験 (A~G) を、月~水曜日の3つのスロットに割り当てます。制約として、同じ日に複数の試験を受けることはできません。

結果

AC3アルゴリズムとバックトラッキング探索を組み合わせることで、以下の割り当てが得られました:

  • 月曜日: A, E
  • 火曜日: B, F
  • 水曜日: C, D, G

この割り当てはすべての制約を満たしています。


まとめ

AC3アルゴリズムとバックトラッキング探索は、制約満足問題を効率的に解くための強力なツールです。さらに、ヒューリスティクスを組み合わせることで、探索空間を最小化し、効率的な解決が可能になります。これらの手法は、スケジューリング問題やパズルの解決など、多岐にわたる応用が可能です。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?