外れ値が含まれるデータセットの扱い方
データ分析において、外れ値(アウトライアー)の存在は、モデルの精度や信頼性に影響を与えることがあります。外れ値が分析結果に悪影響を及ぼす場合、その特定と処理が必要です。本記事では、外れ値の検出や処理方法について、Pythonでの実装例を交えながら説明します。
目次
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外れ値の検出方法
- Zスコア法
- IQR (四分位範囲) 法
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外れ値の処理方法
- 削除
- 変換
- 補完
- トリミング
- 統計的手法の選択
- データの性質の考慮
- 可視化による確認
- 統計的検定による客観的判定
- ドメイン知識の活用
- 外れ値に強いモデリング手法
- まとめ
- 参考文献
1. 外れ値の検出方法
Zスコア法
Zスコア法では、データポイントが平均からどれだけ離れているかを標準偏差単位で測定します。通常、絶対値が3以上のZスコアを持つデータポイントを外れ値とみなします。
Pythonでの実装例:
import numpy as np
# サンプルデータ
data = [10, 12, 13, 12, 500, 15, 14]
# Zスコアを計算
mean = np.mean(data)
std_dev = np.std(data)
z_scores = [(x - mean) / std_dev for x in data]
# Zスコアが3以上のものを外れ値とする
outliers = [x for x, z in zip(data, z_scores) if abs(z) > 3]
print("外れ値 (Zスコア法):", outliers)
IQR (四分位範囲) 法
IQR法では、データの第1四分位数(Q1)と第3四分位数(Q3)から1.5×IQR未満または1.5×IQR以上に位置するデータポイントを外れ値とみなします 。
Pythonでの実装例:
import numpy as np
# サンプルデータ
data = [10, 12, 13, 12, 500, 15, 14]
# 四分位範囲を計算
Q1, Q3 = np.percentile(data, [25, 75])
IQR = Q3 - Q1
outliers = [x for x in data if x < Q1 - 1.5 * IQR or x > Q3 + 1.5 * IQR]
print("外れ値 (IQR法):", outliers)
2. 外れ値の処理方法
a) 削除
外れ値を含むデータを削除する方法です。データの一部が失われるデメリットがあるため、サンプルサイズが小さい場合は慎重に行う必要があります 。
b) 変換
外れ値の影響を軽減するために、対数変換やBox-Cox変換などの手法を適用する方法です 。
c) 補完
外れ値を中央値や平均値などで置き換えることで、データの連続性を保持します 。
d) トリミング
データの両端から一定の割合(例:5%や10%)を削除し、外れ値の影響を緩和する方法です 。
3. 統計的手法の選択
外れ値の影響を抑えるため、ロバストな統計手法を採用することが推奨されます。例えば、平均の代わりに中央値を使用したり、ピアソンの相関係数の代わりにスピアマンの順位相関係数を用いることが有効です 。
4. データの性質の考慮
外れ値が真の異常値(測定エラーなど)か、それとも重要な情報を含む極端な値なのかを慎重に判断する必要があります。データの文脈を理解することで、外れ値が持つ意味を適切に捉えることが可能です 。
5. 可視化による確認
箱ひげ図やヒストグラムを使ってデータの分布を視覚的に確認することが効果的です。これにより、外れ値がどこに存在するかを直感的に把握できます 。
6. 統計的検定による客観的判定
スミルノフ・グラブス検定などの統計的検定手法を用いることで、外れ値を客観的に判定できます。この方法は主観的な判断に頼らず、数値的な根拠に基づいて外れ値を判断するために役立ちます 。
7. ドメイン知識の活用
データに関する専門的な知識を活用することで、外れ値が重要な情報を含んでいるかどうかを判断できます。例えば、金融データでは急激な価格変動が重要なイベントを示していることがあるため、単純に外れ値として除外せずに慎重に考慮することが必要です 。
8. 外れ値に強いモデリング手法
外れ値の影響を受けにくいアルゴリズム(例:決定木ベースのモデル)を選択したり、アンサンブル手法を用いることで外れ値の影響を抑えることができます。例えば、ランダムフォレストやXGBoostなどの手法は、外れ値の影響が少ないモデルの構築に適しています 。
9. まとめ
外れ値の処理は、データの性質や分析目的に基づいて慎重に行うことが重要です。外れ値がモデルに及ぼす影響を正確に把握し、適切な検出・処理方法を選択することで、モデルの精度と信頼性を向上させることが可能です。
参考文献
- Sales Analytics - 外れ値の判断と処理方法
- Blog Since2020 - データ分析における外れ値処理
- Codexa - Pythonでの外れ値検出方法
- Note - Pythonを使った外れ値検出と処理
- Gochikika - 外れ値の処理と対策
外れ値の存在を適切に把握し、適切な処理を行うことで、データ分析における信頼性とモデルの安定性が向上します。