はじめに
「ちょっとしたコードを書きたい」「ファイルの操作をしたい」「情報をサクッと調べたい」
エンジニアの日常は、そんな細かなタスクの連続です。これらの作業をターミナルから一歩も出ずに、まるで優秀なアシスタントに頼むように実行できたら、どれだけ開発がスムーズになるでしょうか?
今回ご紹介する Gemini CLI は、そんな願いを叶えるための強力なツールです。Googleの高性能AIモデル「Gemini」を、使い慣れたターミナルから対話的に利用できるオープンソースのAIエージェントです。
この記事では、Gemini CLIのインストールから基本的な使い方、そしてプロジェクトに特化したカスタマイズ方法まで、具体的な例を交えながら分かりやすく解説します。
Gemini CLIとは?
Gemini CLIは、自然言語の指示でAIと対話し、様々なタスクを自動化できるコマンドラインインターフェースです。
主な機能
- 💬 自然言語による操作:
grep
やfind
のような複雑なコマンドを覚えなくても、「このディレクトリにあるファイルをリストアップして」のように日常的な言葉で指示できます。 - 💻 コーディング支援: 新規コンポーネントの生成、既存コードへの機能追加、大規模なコードベースの検索や編集などをAIがサポートします。
- 拡張性: 独自のカスタムツールを作成し、機能を拡張することが可能です。
- 🧠 コンテキスト認識: プロジェクトのルートに
GEMINI.md
ファイルを置くだけで、そのプロジェクト固有のルール(コーディングスタイルやビルド手順など)をAIに覚えさせることができます。 - 🛠️ 便利な組み込みツール: ファイル検索(
grep
)、ファイルの読み書き、Web検索、ターミナルコマンドの実行など、開発に役立つツールが標準で搭載されています。
インストールと設定
1. 前提条件
Node.js v18以上
まずは、お使いの環境にNode.jsがインストールされていることを確認してください。
2. インストール
以下のnpmコマンドをターミナルで実行し、Gemini CLIをグローバルにインストールします。
npm install -g @google/gemini-cli
3. 認証
インストール後、最初のgemini
コマンド実行時に、ブラウザが起動してGoogleアカウントでの認証が求められます。画面の指示に従ってサインインを完了させてください。
gemini
これだけで、無料利用枠の範囲内でGemini CLIが使えるようになります。より多くのリクエストを行いたい場合は、Google AI StudioやVertex AIでAPIキーを取得し、環境変数に設定することも可能です。
基本的な使い方
対話モードでAIと話そう
ターミナルでgemini
と入力すると、対話モードが始まります。>
の後に、やってほしいことを自然言語で入力してみましょう。
gemini
>
プロンプトの例
ファイル操作
# カレントディレクトリのファイルをリストアップ
> カレントディレクトリにあるファイルをリストアップして
# CSSファイルを作成して書き込み
> style.cssという名前でファイルを作成し、背景色を#f0f0f0に設定するCSSを書き込んで
コーディング
# Reactコンポーネントの生成
> Reactで簡単なカウンターコンポーネントを作成して
# Pythonで天気を取得するコード
> Pythonで今日の天気を取得するコードを書いて
情報収集
# 最新情報の検索
> Gemini APIの最新情報を教えて
覚えておくと便利なコマンド
対話モード中に/
から始まるコマンドを使うと、さらに便利に操作できます。
-
/help
: 利用可能なコマンドの一覧を表示します。 -
/tools
: 現在利用できるツールの一覧を表示します。 -
/stats
: トークンの使用状況を確認できます。 -
/memory show
:GEMINI.md
から読み込まれたコンテキスト情報を表示します。 -
/exit
: 対話モードを終了します。
応用的な使い方
非対話モード(ワンショット実行)
--prompt
フラグを使えば、対話モードに入らずに一度だけクエリを実行できます。シェルスクリプトに組み込む際などに便利です。
gemini --prompt "現在のディレクトリ構造をツリー形式で表示して"
GEMINI.mdでプロジェクト専用AIにカスタマイズ
Gemini CLIの最も強力な機能の一つが、このGEMINI.md
です。
プロジェクトのルートディレクトリにこのファイルを作成しておくと、Geminiがその内容を記憶し、プロジェクト固有のルールや指示に従ってくれるようになります。
例: GEMINI.md
# プロジェクトのルール
- **コーディングスタイル**: TypeScriptを使用し、ESLintのルールに従うこと。
- **テスト**: 新しい機能を追加した場合は、必ずJestで単体テストを記述すること。
- **コミット前**: `npm run lint`と`npm run test`を実行し、エラーがないことを確認すること。
このように書いておけば、「この機能のテストコードを書いて」と指示するだけで、Jestを使ったテストコードを生成してくれるようになります。
具体的なユースケース
新しいプロジェクトの開始
# ディレクトリを作成して移動
mkdir my-new-app && cd my-new-app
# Gemini CLIを起動
gemini
# AIに雛形作成を依頼
> ReactとTypeScriptを使った新しいWebアプリの雛形を作成して。
既存コードの修正
# Gemini CLIを起動
gemini
# AIにコードの修正を依頼
> `src/utils.ts`にある`calculatePrice`関数に、消費税を計算する機能を追加して。税率は10%で。
まとめ
Gemini CLIは、日々の開発作業を劇的に効率化してくれる可能性を秘めたツールです。ターミナルから離れることなく、自然言語でAIと対話しながらコーディングや情報収集ができる体験は、まさに未来の開発スタイルと言えるでしょう。
インストールも簡単なので、ぜひ一度お使いのターミナルに導入して、AIアシスタントとの共同作業を体験してみてください!