はじめに
ここ数年、AIによるソフトウェア開発支援は急速に進化しています。
ChatGPTやGitHub Copilot、Claude Codeの登場で、コード補完や自動生成はすでに多くの開発者にとって当たり前のものになりました。
そんな中、さらに一歩進んだ「AIエージェント型」の開発支援ツールが登場しています。
そのひとつが、今回紹介するFactoryです。
Factoryは単なるコード生成ツールではなく、複数の役割を持つ「Droid」と呼ばれるAIエージェントが、要件定義からコード実装、テスト、ドキュメント作成まで支援してくれるプラットフォームです。
この記事では、Factoryの概要と機能、実際に使ってみた感想や注意点をまとめてみました。
Factoryとは?
Factoryは、サンフランシスコ発のAI開発支援プラットフォームです。
参考リンク:Factory公式サイト
料金は月額40ドルから利用でき、企業向けにはEnterpriseプランも提供されています。
特徴的なのは、開発の各フェーズに特化したAIエージェント(Droid)を使い分けられる点です。
ユーザーはWebブラウザ上からDroidを起動し、プロジェクトを進行できます。
ただし、後述するように一部コマンド(特にgit)はWeb上で直接実行できず、ローカル環境やリモートサーバーに接続して実行させる必要があります。
できることと特徴
Factoryでは、開発のあらゆるフェーズに特化した 「Droid」 と呼ばれるAIエージェントを使い分けることで、効率的にプロジェクトを進められます。
各Droidは特定の役割に最適化されており、個人開発から大規模チームまで幅広く活用可能です。
参考リンク:Understanding Droids
主なDroidの種類
Code Droid
コーディングに特化したDroid。コードの記述、リファクタリング、デバッグが得意で、既存コードベースの理解や新機能実装にも最適。日々の開発作業をスピーディに進められる。
Reliability Droid
インシデント管理やシステムの信頼性向上を担当。エラー分析、RCA(Root Cause Analysis)ドキュメント作成、トラブルシューティングが得意で、オンコール対応やSRE業務を支援。
Knowledge Droid
ドキュメント化やナレッジ管理に特化。コードベースに関する質問への回答や技術文書の作成・更新を行い、チーム内の知識共有や新メンバーのオンボーディングをサポート。
Product Droid
プロダクトマネジメントを支援。ユーザーストーリーやロードマップ、PRD(Product Requirements Document)の作成を行い、開発計画や仕様策定を効率化。
Tutorial Droid
Factoryの使い方に特化。各機能の案内や質問対応を行い、新規ユーザーがスムーズに利用開始できるよう導く。
Factoryを使うメリット
個人開発者向け
• ツール間の行き来を減らせる
• 必要な情報に常時アクセス可能
• 複雑なタスクもガイド付きで進行
• 日常的な作業を短時間で完了できる
チーム向け
• プロジェクト間で標準化された進め方を適用
• 新メンバーのスムーズな立ち上がり
• チームの知見を継続的に蓄積
• 手作業による調整や共有作業を削減
組織向け
• ベストプラクティスの徹底
• ドキュメント品質の向上
• プロジェクト立ち上げ時間の短縮
• 一貫した成果物の提供
実際の使い方
1. アカウント登録
公式サイト(factory.ai)からアカウントを作成します。
メールアドレスかGoogleのSSOでサインインができます。
2. ワークスペース作成
初回ログインだとGitHubやGitLabとの連携画面が出てきます。
今回はGitHubとの接続を許可しています。
Droidや編集先のGitHubリポジトリ、そしてAIのモデルを選ぶことができます。
最近リリースされたGPT-5もつけるのはすごいですね。
3. 指示を出す
例:「この仕様でReactコンポーネントを作って」「このAPIを使ってテストコードを生成して」など。
今回は「AIチャットボットのベースをPythonで作って」と指示を出しています。
4. 成果物を確認・レビュー
Factoryが生成完了するとGitHubにPRを出す方法を提示してくれます。
DevinのようにPRを出してくれるのではなく、ローカルに持ってくるか、リモート環境でPRを出すか、という感じのようです。
自分がやった時は直接GitHub上にPRを出せず、手動操作が発生しました。
所感
良い点
- 実際に触ってみると、「進み方」画面に沿ってタスクを進められるのが便利
- 要件の理解がかなり早く、生成コードの品質も高め
悪い点
- 初回のセットアップ時にgit連携や環境接続の準備が必要なため、完全に「ブラウザだけで完結」するわけではない
- gitコマンドはWeb上で直接実行できない
- 公式仕様上は、Factory内にもワークスペースが存在しますが、完全なクラウドIDEというよりは「AIが操作する外部環境」というイメージ
- 現時点では英語UIのみのため、指示や設定も英語で行う必要がある
まとめ
Factoryは、AIエージェントを使って開発の各工程を加速できる革新的なプラットフォームです。
特に、小規模チームや個人開発で「企画からテストまで一気通貫でやりたい」という人には向いているかなと思いました。
一方で、完全にノーコード・ブラウザ完結ではないため、環境構築や接続の知識は必要です。
今後、Droid同士の連携やWeb上でのコマンド実行機能が強化されれば、より多くの開発者にとって手放せないツールになるでしょう。
AI開発支援の次のステップを体験してみたい方は、一度試してみる価値があると思います。