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技術者のための!かいつまみ哲学

Last updated at Posted at 2022-04-22

概要

システム開発、ハードウェア開発、ソフトウェア開発を志している技術者、学生のために開発・設計・勉強に役に立つであろう哲学をまとめます。簡単な古代の哲学から始め、現代のシステム開発方法論に至るまで文献に基づいて追っていきます。そして時折、哲学と技術との関連を示して、読者がよりよい開発方法、設計方法、勉強方法を探るヒントになるようにします。

なぜ哲学なのか

大学でシステム開発のための授業がなかったからか、システム開発を知らないままこの業界に飛び込み悩みました。そのうちに自分が作ろうとする"システム"とは何かを知らないことに気づき、それを理解するにはこれまでの西洋哲学を学ばなければならないことに気づきました。そして老齢の技術者は経験からシステムの意味に気付いているがほとんどの技術者はこのことについて無知であることにも気づきました。

ロードマップ

哲学を次のようにまとめます。
古代の哲学→中世の哲学→近代の哲学→現代の哲学

古代の哲学

アリストテレスは形而上学の中でより根源的に物事を説明できる知を探求しました。
これは東洋の哲学にはないと思います。西洋では伝統的に「なぜ」に答えられる
ことが重要視されるのです。

個人的にアリストテレスのことがすごいと思う点は2つあります。
・論理学を作ったこと
・(当時としては)完成された物事を説明するフレームワークを作ったこと

アリストテレスの論理学

アリストテレスの論理学は非常によく知られています。
今日では命題論理と呼ばれるものと、問答法的論理と呼ばれるものを作りました。
命題論理とは形式論理とも言われます。
命題A,B,Cがあったとして
Aが真ならばBも真、Bが真ならばCも真ゆえにAが真ならばCも真というやつです。
これに対し問答法的論理とは非形式論理とも言われます。
ある命題について論証以外の方法で確証を試み、反論をすべてはねのければ蓋然性があるとみなすというものです。
論証の前提となる真であるべき命題(上記でいえば命題A)は論証できないので、問答法的論理に頼る必要があります。また、論証に頼れない部分も問答法的論理に頼る必要があります。

技術者としても、取り急ぎ簡単に論理的に話を進めるのならアリストテレスの論理学で十分事足りるのではないでしょうか。

アリストテレスの説明フレームワーク

アリストテレスは物事を説明するために現代でいう5W1Hのようなフレームワークをすでに持っていました。
それは次のような問いに答えるものでした。
(1)実体:それが何(what)であるか
(2)数量:それがどれくらい(how much or how many)であるか
(3)性質:それがどんな(how)か
(4)関係:それ自体または他と比較してどういう関係を持つか
    (例:2倍、半分、等しい、似ている、大きい、小さい)
(5)場所:それがどこ(where)か
(6)時間:それがいつ(when)か
さらに次がオプションとして付け加えられる。
(7)姿勢
(8)所持
(9)作用 (action)
(10)被作用 (reaction)

現代でも物事を説明するための基本ですね。さすがアリストテレス。
さらに物事が成り立つ原因(whyに対する答え方)の分類をしました。
①質量因:何からできているかを説明する
②形相因:何であるかを説明する
③始動因:それが成立するための動きや変化を与えるものを説明する
④目的因:何(どういう目的)のために成立するかを説明する

これを仕事で使うとしたら次のように役に立つでしょう。
機能について説明する
1.いくつのサブ機能からなりたつのか
2.どんな機能なのか
3.何が始動となって機能が働くのか、機能するためにどんな前提条件があるのか、いつ必要なのか、どこで必要なのか
4.その機能は何のために使われるのか

物について説明する。
1.それは何でできているのか(サブモジュール、電気、ビット、機械、材質など)
2.それは何か(形式、見た目、構造など)
3.それはどのような環境下で性能を維持するのか(温度、電磁的環境、振動、衝撃など)、始動するための条件(電源、温度など)
4.それは何のために使われるのか

真理の定義

アリストテレスの師、プラトンは真理は私たちには見えない超次元の世界のルールであると言いました。これをわかりやすく言えば、この世の中が映画「マトリックス」の中の仮想現実であったとして、仮想現実のプログラムが真理であるということです。我々は仮想現実の中で起きる現象から仮想現実のプログラムを想像するが、それが正しいとは限らないとしました。これに対しアリストテレスは真理とは「認識と対象が一致していること」と述べたとされ、これが西洋哲学の伝統的な真理の定義とされています。ただし、実際にはアリストテレスは「存在するものを存在しないと言い、あるいは存在しないものを存在するというのは偽であり、存在するものを存在すると言い、あるいは存在しないものを存在しないと言うは真であるからして...(以下略)」と述べているだけのようです。プラトンの真理は超次元の話であるのに対し、対象は現実世界の現象です。我々、技術者はどちらの立場のほうが良いでしょうか?
よく3現主義と言われます。現場・現物・現実を重視する立場はこの伝統的な真理観に適合していると思います。

今回は古代の哲学をまとめてみました。次は中世の哲学をまとめてみます。

参考文献

アリストテレス形而上学 上, 岩波文庫
アリストテレス入門, ちくま新書

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