はじめに
2025年2月3日(月)、東京大学の学生対象にOpenAI本社の経営幹部と対話できる限定イベントが開催されました。
当日は事前告知なくOpenAI CEOの「サム・アルトマン」が登場して会場がざわつきました...!
非常に面白い質疑応答だったので、その内容についてまとめて紹介します。
質問とその回答に加えて、一部内容を補足や解説を加えて記載していきます。
※ 東大の学生にはOpenAIのイベントがあって、本社の経営幹部と話せるという告知がありましたが、サムアルトマン氏が来ることは知らされておらず、当日かなり驚きました。
イベントは、30名程度の限定募集で運よく参加できたのですが、運よく参加することができましたので皆さんにも学びと体験をシェアします。
本編の構成
1|生成AI時代に人間にとって重要なスキル
2|OpenAIの開発の方向性について
3|今からスタートアップを始める時のポイント
4|人類とAIの関わり方
5|BMI(Brain MaChine Interface)について
6|モデルがオープンソースになる流れについて
それでは、サムアルトマン氏との質疑応答の内容と補足解説を見ていきましょう。
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OpenAI サムアルトマンとの対話まとめ
※ 読みやすさのため、一部順番を入れ替えて記載しています。
1|生成AI時代に人間にとって重要なスキル
Q. 今後、人間に重要となるスキルは何か?
数学やプログラミング、物理学などの分野では人間がAIに勝つことは不可能と言われる中で、これからの人間に必要な力が何になってくるのかを伺った。
A. 数理的能力ではなく「リーダーシップ」「ビジョンを描いて人を動かす力」が重要になる
人間は、数学、プログラミング、物理学などの領域でAIに勝つことはほぼ不可能です。例えるなら、電卓に人間が計算速度で勝てないのと同じです。「知」による差別化が難しい時代に突入する。
これからはあらゆる人々が「最高レベルの知」に容易にアクセス可能になります。
今後は全ての人々が最高レベルの知にアクセス可能になる。その中で、『リーダーシップがより重要』になります。
どのようにビジョンを描き、人々を動かすかが大きな差になっていきます。
創造性や決断力などもこれに含まれます。AIを使いこなし、人や組織をまとめる能力が非常に重要になる。
2|OpenAIの開発の方向性について
関連する質問が2個あったのでそれぞれ記載します。
Q. 今後の開発の方向性は?
GPT-3〜GPT4からGPT-5やGPT-6に進化していく中でどのような開発の方向になっていくのか?について伺った。
A. 強化学習や新たなアルゴリズムの採用する可能性が高い
これまでのGPT-3やGPT-4などのモデルは「事前学習: Pre-Training」による開発でした。今後開発していくGPT-5やGPT-6のようなモデルでは強化学習や新たなアルゴリズムなどを含めた開発になっていくでしょう。
また、物理学・生物学の領域の道の化学的発見もしていくと思われます。AIが新たな科学的領域や発見に進出できる可能性を秘めています。
Q. 今後の開発の方向性 (2)
実用面でどのようなモデルが登場していくのかという視点で伺った。
A. 1つのモデルで様々なタスクをこなせたり、さらに軽量なモデルが登場していく方向性
コードのコンパイルや音声認識、ブラウジングなど様々なことが単一のモデルで実現できるように進化していくでしょう。
o3-miniをローンチしましたが、今後もさらに軽量で高速に動作するモデルが登場していく見込みです。
また、DeepResearchは長時間ブラウジングを行い、画像やPDFなど様々なフォーマットの情報も処理しながらレポートを作成できる。より一層リアルエージェントとしての存在に近づいていくでしょう。
▼ 補足:
- AIのトレンドとしてモデルの軽量化があります。スマホ端末上で動作するレベルのLLMの開発などコンパクトなLLMの開発が実現するメリットは大きく注目テーマになっています。
- 自分の手元を離れて不特定時間作業して結果をまとめてくれるエージェントの動きがDeep Researchでは実現できています。筆者もo1-proに契約して試してみましたが、テーマを与えると20~30分リサーチをして数万字のレポートで全貌を構造的にまとめてくれました。自分が細かい範囲でタスクを指示しなくても最初から最後まで通しでやってくれる体験は非常に良いと思います。
3|今からスタートアップを始める時のポイント
Q. Startupを今始めるとき、どのように優位性を作っていくか
OpenAIなどの大手が基盤モデルの開発競争が加速する環境で、今からスタートアップを始めるならどのように優位性を作っていくべきか?
A. エッジが立つ領域に特化させることが非常に重要
前提、ピーター・ティールの「Zero to One」の考え方に賛同しています。もし今スタートアップを始めるなら、エッジを狙うことが重要です。
サービス/プロダクトを作っていて、「もっと良いモデルがあれば...」と感じるのであればそれは良い兆候だと言えます。モデルの性能向上がプロダクトの性能向上に直結する。
大企業と同じ土俵で戦うのではなく、ニッチな領域でゼロイチを作ることが重要。
▼ 補足:
※ Zero to Oneは『隠れた真実を見つけよ』『独占せよ』などスタートアップをやる時に狙うべきことがまとまっている書籍です。
日本語の書籍もあるので興味のある方は読んでみてください。
▼ 解釈:
- 基盤モデルの進化によって自社のプロダクトの性能もアップグレードするような座組みを組めていると強いと思いました。
- 例えるなら、既に大きな波が来ている海岸ではなく、大きな波が来る前の海岸でサーフボード上で波を待つサーファーになるようなイメージでしょうか。
4|人類とAIの関わり方
Q. 人類とAIとの協調について
AIが今後も進化していく中で、AIと人間のあるべき関わり方について伺った。
A. AIと人間の互いの強みを補完する『協働的知性』が鍵になる
「CO-INTELLIGENCE(Ethan Molick著)」という書籍がおすすめです。
AIによって人間の思考が拡張され、社会を変革するための強力なツールになっていくでしょう。AIと人間がそれぞれの強みを補完する「協働的知性」が重要になります。
▼ 補足:
サム氏が紹介していた書籍「CO-INTELLIGENCE(Ethan Molick著)」の日本語訳書籍のリンクを下記に貼ります。興味のある方は覗いてみてください。
5|BMI(Brain MaChine Interface)について
Q. Brain-Machine Interfaceについての見解を聞きたい
A. 興味深い成果が出てきている状況で、人間と機械の融合が一気に進む可能性がある
BMIの領域はこれまでブレイクスルー的な手法は中々出てきていなかったが、近年は非常に注目に値する結果が登場してきています。
今後の技術の発展次第では人間と機械の融合が一層進む可能性を秘めています。
6|モデルがオープンソースになる流れについて
Q. Deep-seekなども踏まえ、Open AIとしてOpen Sourceモデルを出すつもりはあるのか?
中国製の大規模言語モデルDeepSeekが直近でリリースされ、アメリカのNVIDIAの時価総額が一夜にして約90兆円吹き飛ぶという前代未聞の出来事があった。モデルが一般公開される流れが起き始めている中で、OpenAIとしての見通しを伺った。
A. リスクと利便性の天秤にかけた上でなんらかの形で貢献する意気込み
世界的に「オープン化」のトレンドがきている。社会自体もオープンモデルのトレードオフを受け入れられるような段階に入ってきています。
その中で、我々(OpenAI)も何らかの形で社会に貢献していこうと考えています。
▼ 補足:
中国のAI企業、DeepSeekがオープンソースで、超高性能の大規模言語モデルを公開したことで世界的に激震が走りました。先ほど述べたようなNVIDIAをはじめとするアメリカ株の暴落が起きたたりもしています。
アプリとしてのDeepSeekは、入力したデータの扱いについて疑問の声が寄せられていますが、技術としてはかなりブレイクスルーだと思うので興味のある方は、モデルの学習手法など調べてみると良いと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。イベント直後でまだ私も驚きとワクワクが残っている状態で執筆していました(笑)。
OpenAIのトップが見ている世界や考え方を少しでも共有して学びになったのであれば幸いです。
ソフトバンク代表の孫さんとOpenAIの共同出資で合弁会社が設立されたことも話題ですが、これからもAIの進化や各企業の取り組みに目が離せません。
LLMの進化を追いつつ、私たちにできることを着実に取り組んでいくことが超重要だと思いました。
私自身もAIはこれからさらに盛り上がる領域だと思うので、これから積極的にサービス開発や情報発信に取り組んでいきたいと思います。
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