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MakerDAOの400万ドルGoxについて

Last updated at Posted at 2020-03-13

MakerDAOが運営しているステーブルコイン発行のDeFiであるDaiについて、400万ドル余りの損失がネットワーク全体で発生したとの情報がありました。
今回はとりあえずそれについてまとめてみます。
参照: https://forum.makerdao.com/t/black-thursday-response-thread/1433

概要

 まず、昨日、Ethereumの価格が暴落しました。すると、送金が活発になったり、DeFiの担保が清算される前に取り除きたいとの思惑からネットワークが混雑します。普段は10Gwei程度がせいぜいのGas代も100Gweiを余裕で超えるまでネットワークが混雑します。
 ネットワークが混雑すると何が問題かというと、自分のトランザクションが取り込まれるのがいつになるのかわからなくなります。
 一方、MakerDAOでは価格が下落するとCDPと呼ばれる担保が清算されます。MakerDAOでは清算されるとETHが没収され、そのETHがDaiとの取引でオークションにかけられます。その上でETHをオークションで売ってDaiをもらい、そのDaiをBurnすることで、ETHの担保とDaiの発行量のバランスを保っています。つまり、ネットワーク全体で清算されたDai(Burnで消滅)とETH(売ることで消滅)がほぼ同量消え去ることでETHの担保を確保しています。
ここで昨日のような下落があると大量に清算され、オークションに大量のETHが流れます。
 さて、ここからが本番なのですが、この状況でオークションに参加したい人はどれくらいいるでしょうか?
ネットワークが混雑しています。なのでいつ自分のBidのトランザクションが取り込まれるかわかりません。取り込まれた時果たしてETHはいくらになっているでしょうか? 昨日の感じだと、ETHをゲットした時点でETHは多分相当値下がりしているはずだし、みんなそう予想します。さらにはGasが超高騰しているので迂闊にトランザクション投げるのもはばかられます。そうなった結果、オークションの参加者は一人だけになりました。
 その人は0Dai、つまり無料でETHを競り落とすことができます。そうしてこの人は400万ドルあまりのETHを引き出しました。おそらくGasをかなり高めに設定して意地でもトランザクションがすぐ通るように設定したのでしょう。(そうすると単純にGas代、例えば0.1ETHガスに設定して1ETH競り落とすと、ただただ0.1ETHと1ETHを交換したことになる)
 そうなるとどんな問題が生じるでしょうか? Daiの価値は担保のETHとDaiの発行額のバランスに依存します。なので単純にDaiのネットワーク全体に悪影響が生じます。

そもそもDaiとはなんなのか

そもそもDaiとはなんなのでしょう。Daiには二つの役割があります。

  • 清算されたETHへのオークション参加券
  • CDPを維持、解約するための料金

つまり、Daiの価値にはこの二つの役割が反映されることになります。
逆にいうとDaiにはそれ以上の価値はありません。
前者はざっくり言えばDai発行量とETH担保量の比率で価値が定まります。(つまりオークションへの参加券の枚数と商品の数の比率)
後者はCDPをどう動かしたいかに依存します。つまり解約したい人が多ければ多いほど、価格が上がります。

ここで重要なのはDaiには価格がドルに近傍するメカニズムは理論的に存在しないということです。
Daiの価格は理論的には上記二つの要素が絡み合って決まります。
現に今、Daiの価格は上がっています。みんな清算される前にCDPを解約したいからです。

こいつが一ドル付近にいるのはマーケットがそう信じ込んでいるから、もしくは 偶然の産物 にすぎません。
MakerDAOにはStability Feeという税金のようなものがあり、それを上下させることで一応供給の長期的な操作は可能なのですが(税金が高ければ供給が下がる)、Auction参加券としての価値が変わるわけではないので、あまり意味がある施策とは思えません。(供給が減るとCDP解約などのための買い圧力は高まりますが、それよりもDai全体に被る負の外部生の方が大きいでしょう)

なぜそんなことになったか

オークションに最低入札価格がない

最低入札価格がなかったことで0 Daiでの入札を許してしまいました。

オークションに参加しづらい

Daiは一般ユーザーからすればただのETHオークション参加券にも関わらず、ユーザーにとって参加障壁が高いため十分な参加者が集まりにくいことが考えられます。

(少し本筋から離れますが)Daiの価格が遊離しやすい

本件とは関係ないのですが、これは重大な問題です。
Daiの重要なファクターとしてETH担保とDai発行量の比率の問題があります。ETHの比率が高いほどDaiのオークション参加券としての価値は上昇します。
しかし一方でETHオークションが多く開催される価格急下落局面(昨日今日とか)は、CDPの清算を防ぐためみんなDaiを買い集めます。するとDaiの価格が上がります。するとどうでしょう。
オークションでETH:Daiの比率を維持するのに十分なDaiがETHを売っただけでは集まらなくなります。また、自分のBidがチェーンに取り込まれるタイミングは少し先なのでそれを見越してETHの価格は過小評価される傾向にあります。
そうなるとどんどんETH:Daiの比率は下がっていきます。これを担保するための仕組みとしてLiquidity Feeという仕組みが備わっているのですが、Daiの価格が1.28ドル(3/13 13:30現在)まで行ってしまうとどこまで機能するかはわかりません。
また、そのニーズが終わった段階でETH:Daiの比率はどうなっているでしょうか。ETHの量が非常に低くなっていた場合、価格下落は避けられません。

これからどうする可能性があるか

Makerトークンを新しく発行してDaiで買ってもらいそのDaiをBurnすることでDai:ETH比率を元に戻す

Makerトークンを希釈し、その利益でDaiを買い戻すという戦略です。これは実行にうつされそうです。Makerトークンホルダーは損失を被りそうですが、そもそもCDPホルダー(債務者)からStability Feeという運営費を巻き上げているでMakerDAOがやらかした時は彼らがケツを拭くのが当然の流れでしょう。

いったんクローズする

いったんDaiのコントラクト自体を止めて、清算するというやり方です。一応コントラクトには緊急停止機能がついていますが、そうするとDaiの時価総額はほぼ0になりますし、コミュニティ的にもダメージが大きいので最終手段でしょう。現状では否定しています

オークションを使いやすくする

オークションに参加者がいないのが問題なのであれば使いやすくするという選択肢があります。

最低入札価格をつける

入札価格の最低値がないのが問題なので最低入札価格をつけるという選択肢があります。

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