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ワークブック:Power Platform ローコード開発を促進するための、揃えるべき7つのピース

Last updated at Posted at 2022-03-21

みなさま、こんにちは!
日本マイクロソフトのカスタマーサクセスマネージャーの岩田です。
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)が加速する中、企業に置いてローコードツールの活用が非常に注目されています。
今まで、プログラミングに精通したIT技術者に頼らなければいけなかったアプリケーション開発を、非IT系の業務部門の人たちが、少ないコードで手軽にアプリケーションを開発できるインパクトは大きく、多くの企業様で「市民開発者育成」「現場発のアプリケーション開発」といった切り口で議論が交わされています。
そこでは、いかにしてローコードツールを浸透させ、全社的に活用できる状態にもっていくのか、という点が議論の中心になっています。

議論の土台に上げる7つのピース

本投稿では、当社のローコードプラットフォームであるMicrosoft Power Platform を例に、その浸透・定着化の指南となるMicrosoft Power Platform Adoption Planning Workbookから、重要なポイントを抜粋してご紹介します。

まずは、以下本稿のディスカッションワークブックをダウンロードしてください。
Power Platformローコード開発を促進する7つのピース

ダウンロードした「Power Platformローコード開発を促進する7つのピース」を元に、資料内の7つのピースを議論の土台に上げ、ディスカッションを開始してください。
①エグゼクティブスポンサーの関与(ビジョンと戦略)
②ビジネス価値の定義
③ガバナンスと運用保守の自動化
④市民開発者の育成
⑤フュージョンチーム
⑥抵抗勢力に対するコミュニケーション
⑦成熟度の評価

①エグゼクティブスポンサーの関与(ビジョンと戦略)

社内でPower Platform のローコードを浸透させるには、ツールが持つテクノロジー面はもとより、人、既存プロセス、もっと言えば文化を変化させることにつながりますので、チームを編成して、特定の役割を持つステークホルダーの関与が必須になります。
小さく始めて大きく育てたい気持ちは分かります。ただ、特定部門だけで小さく話していて、大きく花開くケースは稀でしょう。
一部門で閉じるのではなく、組織横断的なチームでスタートすることをお勧めします。

以下の表に従い、各役割毎に適切な部門や人材を特定してみてください。
image.png

Power Platformの導入は、単なる技術的なプロジェクトではなく、働き方改革に通じる市民開発文化の醸成であるため、エグゼクティブスポンサー(経営陣)のサポートは不可欠です。
Power PlatformがDX戦略の主なツールとして位置づけられ、そのビジョンと戦略が全社員に理解されるためには、エグゼクティブスポンサーからのメッセージが必要になります。

エグゼクティブスポンサーを特定するには、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチがあります。
下記トヨタのPower Platformの取り組みは、まさにトップダウンアプローチと言えるでしょう。トップ自らがPower PlatformがDX戦略の主要ツールであることを認識し、メッセージを打ち出しています。
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一方ボトムアップアプローチ、既に組織内のある部門(例えば財務など)が、Power Platformを使用した成功事例がある場合、その部門の上層部の方にエグゼクティブスポンサーになって頂く方法がありますが、他の部門に対する権限を持つことはできないため、トップダウンアプローチの方がより好ましいと言えます。
いずれにせよ、エグゼクティブスポンサーの賛同を得ることを恐れないでください
「まずは我々だけ(一部門)で小さく始めよう・・」でなく、どうすればエグゼクティブスポンサーに賛同が得られるのかを考えることからスタートしていただければと思います。

②ビジネス価値の定義

流行っているからPower Platformのようなローコードソリューションを導入する企業はないでしょう。
このテクノロジーを活用し、ビジネスや業務をより良く変革ことが目標であるはずです。
自社に当てはめて、ローコードを活用してより良くしたいビジネスや業務は何でしょうか。自社にどのようなメリットをもたらすでしょうか。
もし、エグゼクティブスポンサーへの賛同が得にくい場合、そもそもの導入の目的とメリットを定義し説明する必要があります。
エグゼクティブスポンサーへの説明は、理想論だけでなく、どのような状態になったら成功といえるのか、その測定方法とKPIも提示する必要があるかもしれません。
ここでは、目標設定に役立つフレームワーク「SMART」を念頭に、実現したいこと、その測定方法とKPIを定義してください。
「SMART」とは下記のすべての要素を含んだ目標設定の指標です。
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以下の表は一例です。実現したいこと、その測定方法とKPIを話し合ってください。
image.png

③ガバナンスと運用保守の自動化

かつてのEnd User Computingはもとより、ローコード開発においてもガバナンスの課題は、
・自由にしすぎて管理不可
・制御しすぎてエンドユーザーからの不満
という二律背反する側面を持っています。
IT部門は、いかにこの二つを両立させ、バランスをとっていくことが求められます。
Power Platformのガバナンスのポイントは、環境設定と、データ損失防止(DLP)ポリシーの設定です。
環境という、アプリケーション開発スペースを用途ごとに複数設定し、それぞれの環境にセキュリティポリシーを設定します。
本稿は、技術論に深入りしないため、環境設定やDLPポリシーの説明は割愛します。

また、アプリの作成・運用・保守が作成者個人に依存してしまうと、その人が異動もしくは退職した際にメンテナンスができなくなり、野良アプリケーションが乱立してしまいます。それを防ぐためも、アプリケーションのライフサイクルを定義、もっと言えば自動化する事が望ましいと言えます。

ここでのディスカッションは、他社での事例を元に、IT部門がサポートすべき範囲とそうでない範囲を洗い出し、カバナンスと運用・保守、その先の自動化に関して、現状と望ましい状態をディスカッションしてください。
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④市民開発者の育成

Power Platformによるアプリケーション開発が、一部のトレーニングを受けたユーザーだけの武器にならないよう、社内全体で広める活動を行う必要があります。
市民開発者(業務部門の社員)まで裾野を広げるためには、教育トレーニングを行い、定期的なアイディアソン・ハッカソンを行い、社内コミュニティを拡大することが求められます。
そして、Powe Platform開発者が社内で正当に評価される仕組みを整える事が最も重要です。
DXを促進する動機づけを行うために、もっと具体的には、Power Platform開発がキャリア形成の一助となる意識を持ってもらうためにも、貢献者に対しては、公正で一貫性のある報酬や表彰をタイムリーに行ってください。

以下は、報酬や表彰の例になります。
Power Platform開発者のモチベーションを高めるためにも、自社に置き換えた報酬・表彰モデルをディスカッションしてみてください。
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⑤フュージョンチーム

Power Platformによるローコード開発には、以下3つの立場があり、それぞれ役割分担があります。
①市民開発者(業務担当者):ローコードを武器に自分たちの業務をより良くする
②プロ開発者(開発者、業務部門にいるシステム担当):コンポーネントの再利用・共通化に貢献
③IT管理者(IT部門):保守・運用・ガバナンス担当

ビジネス要件を理解している市民開発者は、最小限のコーディングで迅速にソリューションを組み立てることができます。
一方、ローコード単体では満たされない、より複雑な状況が常に存在します。例えば、アプリと相互作用する既存システムやデータベースのコネクタがないケースや、データの一貫性を維持するために追加のビジネスロジックを構築する必要なケースなどです。
このような問題に対処するには、フュージョンチームとして協業し、解決策を生み出す必要があります。

ここでは、フュージョンチームの3つのプレイヤーと役割を認識し、現状の役割分担の課題と望ましい協業の状態をディスカッションしてください。
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⑥抵抗勢力に対するコミュニケーション

ローコードを社内で浸透させ、社内での「市民開発者育成」を進める際、抵抗する人たちが存在します。
現状維持を望む人たちにとって、変化に対する抵抗は自然な反応ですので、先読みして先手を打つ必要があります。

ここで「なるほど!」と思った、ある企業の担当者様(A様)との会話をご紹介させていただきます。
A様は全社的にPower Platform の開発者コミュニティ推進に関して積極的な姿勢をお持ちです。
フュージョンチームにおける3つのプレイヤーにおいて、

①市民開発者(業務担当者)
②プロ開発者(開発者、業務部門にいるシステム担当)
③IT管理者(IT部門、ガバナンス担当)

A様が考えられていた自社の課題は、IT部門は②のプロ開発者ばかり教育を施しており、①の市民開発者対してツールの浸透や教育が行われていないのはなぜなのか?ということでした。
Power Platform のようなローコードツールは個人で使える武器であり自分たちの仕事を楽にするための認識を、一部の人たちだけでなく全社員に浸透させるべきだという自社への問いでした。
また、①の市民開発者を育てるのを怠っているのは、ITや開発に長けた人たちは、ローコードツールにより自分たちの"特権"を奪われるのを恐れているのではないのかという発言がありました。
私が想像していた"いわゆる抵抗勢力"はヘルプデスクの方々で、ローコードとはいえ開発なので、これまでのツールとはレベルの高い質問が来てその対応に苦慮するだろう・・という考えでした。
このA様の問いは「⑤のフュージョンチーム」に対応しますが、本質的な問いだと思いました。

Microsoft Power Platform Adoption Planning Workbook の「Resistance Management」には、抵抗意見として、以下のような例が挙げられています
・誰もが開発者になるとデータ損失の可能性が高まる
・上層部の賛同が得られない
・既存開発者は、他の人が開発者になった場合、自分の仕事の安定性を心配する
Resistance Managementでは、これらの異議に耳を傾け、理解し、障壁を取り除くことが必要なります。

抵抗勢力にはコミュニケーションで対処してください。
どのような抵抗が予想され、その際のコミュニケーションのアイディアを話し合ってください。
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⑦成熟度の評価

最後に、弊社が定義したPower Platformの促進の成熟度モデルで、自社が達成したいレベルの物差しとして利用してください。
レベル100~レベル500までの段階はチェックリストではなく、すべての分野に沿って同じペースで進行する必要はありませんが、自社の進行状況をチェックし、さらに前進するためにどこに焦点を合わせる必要があるかを把握するために使用できます。
ワークシートでは、現状の取り組みを記載し、自社がどのレベルの段階にいるのかを把握してみてください。
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最後に

いかがでしたでしょうか。
是非、7つのピースを揃え、ワンピース(市民開発者文化の醸成)にしていただければと思います。
本稿をたたき台として利用いただき、市民開発者(業務担当者)に武器を与え、DXを加速させる一助になれば幸いです。

※本稿では、以下の情報を参考にしました。
Microsoft Power Platform Adoption Planning Workbook
情シスが読むべき、自社で Microsoft Power Platform の活用を成功させる手法

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