はじめに
「開発責任者ハンドブック engineering management Vol.0.95」(以下、ハンドブック)は、株式会社サイバーエージェント エンジニアリングマネジメントゼミ 著の開発者責任者向けハンドブックです。
開発責任者(エンジニアリングマネジメントを行う役職)がどのようにプロダクト、プロジェクト、そしてチームメンバーをマネジメントしていくのかについて、一部局所最適な内容を含め体系的にまとめてあります。
本記事では、そのなかから汎用的かつ役に立つエッセンスを取り出して紹介することとします!
エンジニアマネジメントとは
ときにエンジニアマネジメントは、「なにをすることなの?なにをする人なの?」と質問されることがあります。先日参加した EMゆるミートアップ でも同様の疑問が投げかけられ、人・組織・コンテキストによってその答えはさまざまでした。
ハンドブックにおいては、
「プロダクトを作ってそれで成果(主に売上)が出ている状態にする」ことが、エンジニアリングマネジメントの目的です。
と冒頭に書かれています。つまり、プロダクトによって成果を最大化するため必要に応じて対象を変えマネジメントすること・人がエンジニアマネジメントです。
(売上にコミットするということが明記されている点は事業会社らしいですね。)
オンボーディング
本稿では「アジャイルサムライ」の要素を色濃く採用したインセプションデッキの作成を明記しています。
プロダクト開発を進めるにしたがって「なぜこのプロダクトを作るのか?」という前提は簡単に失われます。“なぜ” を明確にすることにより、チーム全体が自立的に考え、判断できる状態を支援することができます。
と提言しています。同じメンバーでプロダクトの創出から EOL まで面倒を見続けるということは希有でしょう。その点 “なぜ” という目的を共通認識化・言語化することで、加わったタイミングに関わらず成果の最大化のため全員が同じ方向を向けることでしょう。
プロダクトマネジメント
「何をつくるか」を決めること」が役割であるプロダクトマネージャーには広い守備範囲が求められます。中でも特筆すべき能力は次の 3 つとなります。
- 課題発見と解決能力
- プロダクトKPIを定義する能力
- 継続的な開発体制を描く能力
と書かれている通りですが、プロダクトの価値を最大化することを目的にしたプロダクトマネジメントは事業やステークホルダー、技術のすべてに対して広い知識が要求されると感じます。専門職として PdM ロールをおく企業が多いのも、このような理由によるものと思います。
ハンドブックにおいては、さまざまなプロダクト KPI も紹介されています。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトはプロダクトを作るための時間や作業を指します。換言するとプロダクトマネジメントは「なにを」に着目し、プロジェクトマネジメントは「いつまでに、どのように」に着目していると言えます。
さて、ハンドブックでは一般的な開発手法としてウォーターフォールとアジャイルを紹介するとともに、具体的な Tips になり得る開発のポイントが紹介されています。
スケジュールの調整
一番スケジュールに影響を与えやすい多い差し込み業務は「トラブル対応」でしょう。これはシステム的なトラブルや、ビジネス要件で発生するトラブルなど、様々なものが考えられます。まずはどの程度トラブル対応に時間を使っているか計測してみることが必要です。
私がエンジニアマネジメントしているチームでは、トラブル対応に割かれる人的・時間的リソースを平均化してスケジュールに組み込むような工夫をしています。
差し込み要件で開発をした物がどの程度使われるか
差し込み要件で急に開発が必要となった場合、技術負債が生まれ易くなります。開発したものが今後継続的に使われていくのであれば、技術負債が産まれないように設計したり、技術負債を後で回収するための工数を予約したりする必要があります。
技術負債解消合宿
イベント的に技術負債を解消することで意欲的に技術負債を解消できます。
ピープルマネジメント
EMゆるミートアップ では、エンジニアマネジメントの大半はピープルマネジメントと捉えている人が多かったように思います。それだけ成果を最大化するうえで集の力を最大化することが重要であり、また反面に課題を感じている人が多いのでしょう。
本稿では「エラスティックリーダーシップ」の考え方を紹介しています。エラスティックリーダーシップに関しては、ぜひこちらをご覧ください。
さらに、1on1 に関しても触れられています。
アクティブリスニングは、特に「メンバーの成長を促す」という文脈で効果を発揮すると言われています。メンバーが自ら自分の考えを話すことで、自らの思考や価値観に気付きが生まれ、より納得感のある形でアクションに繋げることができるという狙いです。
アクティブリスニングは、よく「傾聴」と訳されますが、黙って聞いていればいいという訳ではなく、やり方には色々と工夫の余地があります。
- 話を途中で遮らず、最後まで聞く
- 具体的な内容まで聞く。掘り下げる。
- 沈黙に耐える
傾聴において「具体的にはこういうこと?」と言ってしまうのではなく、具体的な内容はあくまで本人に考えて語ってもらうことが大切ですね。
まとめ
さて、本記事ではエンジニアマネジメントとはなにか?から始まり、エンジニアマネジメント形づくる 3 つのマネジメントとその詳細について汎用的かつ役に立つエッセンスを取り出して紹介してみました。
ハンドブックではこの他にピープルマネジメントを掘り下げた目標設定やメンバー育成、テックリードに関しても言及がされています。機会があれば(ないような気がしますが)手にとってみてください。