二重振り子は、エネルギー保存則が成り立つ系である。
言い換えれば、その解はエネルギー保存が成立していなければならない。
これはこれまでカオスアートと称してきたが、本当の意味(つまりある意味自然界に存在する)で実現性のあるカオスなのかという問題がある。
それは少なくとも数値解析の影響、すなわち数値解析の段階で丸め誤差などの影響を受けずに再現できるのかということで、エネルギー保存則をチェックしておく必要がある。
ということで、今回はエネルギー保存則を確認した、
やったこと
(1)二重振り子のエネルギー保存則
(2)数値解析の限界
(3)エネルギー保存則の高角度域の振舞
(1)二重振り子のエネルギー保存則
前回までの記事のとおり
単振り子連結二重振り子
K=\frac{1}{2}(m_1+m_2)L_1^2\theta_1'^2+\frac{1}{2}m_2L_2^2\theta_2'^2+m_2L_1L_2\theta_1'\theta_2'\cos\theta_{12}
U=(m_1+m_2)gL_1(1-\cos\theta_1)+m_2gL_2(1-\cos\theta_2)
BE=m2*L1*L2*p1*p2*np.cos(x1-x2)
TE1=(m1+m2)*g*L1*(1-np.cos(x1))+0.5*(m1+m2)*L1*L1*p1*p1
TE2=m2*g*L2*(1-np.cos(x2))+0.5*m2*L2*L2*p2*p2
TE=TE1+TE2+BE
実際のコードでは、振り子それぞれの触れ角によるそれぞれのトータルエネルギーと二つの振り子が連結していることによる相互作用のエネルギーBEに分離して計算した。
こうすることによりそれぞれの振り子間のエネルギー移動や内部に蓄積しているエネルギーを評価できる。
【参考】
二重振り子@カオス&非線形力学入門
参考サイトはポテンシャルエネルギーの二項目の符号が異なるが、。。この辺りは数値計算すればどちらが正しいか判明する。
棒連結二重振り子
K=\frac{1}{2}(m_1+4m_2)L_1^2\theta_1'^2+\frac{1}{2}m_2L_2^2\theta_2'^2+2m_2L_1L_2\theta_1'\theta_2'\cos\theta_{12}
U=(m_1+2m_2)gL_1(1-\cos\theta_1)+m_2gL_2(1-\cos\theta_2)
BE=2*m2*L1*L2*p1*p2*np.cos(x1-x2)
TE1=(m1+2*m2)*g*L1*(1-np.cos(x1))+0.5*(m1+4*m2)*L1*L1*p1*p1
TE2=m2*g*L2*(1-np.cos(x2))+0.5*m2*L2*L2*p2*p2
TE=TE1+TE2+BE
【参考】
二重振り子@Wikipedia
参考にはエネルギーについての記述はないが、単振り子と棒連結二重振り子のそれぞれの運動方程式が記載されているので、アナロジーから上式の妥当性が見えると思う。
(2)数値解析の限界
ということで、それぞれ数値解析の限界をチェックしました。
単振り子連結二重振り子
まず普通に成り立っていそうな領域は以下のとおり
初期値;y01=0.7767ラジアンあたり
pen1_L11L21m11000m21651y010.7767774400335005n20000
初期値;y010.00021115ラジアン辺りは、ちょっと危ない感じ
すなわち、全エネルギーがほんの少しだが下がりつつあるようだ
pen_L110L210m1100m220y010.00021115n
そして、花びらのカオスアートの領域は
初期値;y01=0.014227ラジアン辺りは保存則が成り立っていそう
pen_L11L21m11000m21651y010.014227175088568963n20000
初期値;y01=0.00021115ラジアン辺りだが、どうも全エネルギーが下がりつつある。。。
pen_L11L21m11000m21651y010.00021115n20000
初期値;y01=2.85e-05では下がりはきつくなり成り立っていない
pen_L11L21m11000m21651y012.8576045055410773e-05n20000
一方こちらは、
初期値;y01=0.00021115ラジアンで保存則OK
pen_L11L21m1100m21y010.00021115n20000
初期値;y01=6.35e-05ラジアンだと下がり気味
でもこの辺りはまだまだ成り立っているというか、カオスアートとして実現しそうな領域です。
そして、あの樹枝状成長な領域は??
初期値;y017.767774400335006e-06ラジアン辺りで全エネルギーは上がり気味
そして、エネルギー保存則は悪化するばかりだが、カオスアートは美しくなる。。
y014.2630449774571484e-06
y011.7287499851241587e-06
以上のことから、やはり初期値が小さい領域では微分方程式の数値解析において、誤差が拡大して本来の解とは異質なものとなってしまっていると云える。
単振り子連結二重振り子
初期値;y010.0386ラジアン辺りはエネルギーの授受が周期的に見えるが保存則は成り立っている。
以下では若干減少傾向が見えるがまだまだ成り立っているといえる。
初期値;y010.0007083ラジアン
初期値;y010.00026ラジアン
y019.487581077335133e-06ラジアン、だいたい成り立っているが、。。
Pen2_L11L21m1100m21y019.487581077335133e-06
以下は全然エネルギー保存則が成り立っていないが、あまりに綺麗なのでなんらかの意味を持たせたくなってしまう。。。。
Pen2_L11L21m1100m21y011.1588157696125369e-07n
(3)エネルギー保存則の高角度域の振舞
実は高角度域では以下のようにエネルギー保存則が成り立っている。
この辺りはリーズナブルな感じでエネルギー授受しているように見える。
この辺りになると、全エネルギーはかなりノイジーになっていて、全エネルギーがまっすぐになるのが不思議な気がする。
以下のように比較的調和的なカオスアートになるものもある。
以下の例では、エネルギーは不思議なやりとりをしている。つまりある瞬間はほとんど授受せずまっ平らな状況が見える。特にエネルギー授受は相互作用となるBEに蓄積されていることが分かる。
ということで、広角度領域ではすべての運動がエネルギー保存則を満たしていた。
まとめ
・二重振り子のカオスアートをエネルギー保存則の観点から実現性を見た
・低角度領域はエネルギー保存則が満たされておらず、興味深いカオスアートであっても、自然に存在するとは言えない
・逆に高角度領域ではすべてのケースでエネルギー保存則を満たしており、複雑な運動も自然界に存在するものと思われる
・一応、区間の密度を4000点と20000点で実施したが、違いは見られなかった。そこでこの誤差がどこからくるのかは不明である。
・カオスアートという意味では、自然界に存在しないデザインが大量に存在することが予測される