本日、緊急事態宣言の延長がアナウンスされる状況であるが、一応、今日現在の全国の状況を抑えておこうと思う。
前回はSIRモデルに基づいて、感染数のピークアウトを予測したが、今回はSIHRモデルを利用して終息予測を実施したいと思う。
本記事も素人が書いたものであり内容は自己責任で取り扱ってください
SIHRモデルとは、治癒数の遅れを再現するために、SIRモデルを拡張したものであり、以下のようなものである。
{\begin{align}
\frac{dS}{dt} &= -\beta \frac{SI}{N} \\
\frac{dI}{dt} &= \beta \frac{SI}{N} -\gamma I \\
\frac{dH}{dt} &= \gamma I-\delta I \\
\frac{dR}{dt} &= \delta I \\
\end{align}
}
また、データは以下の参考①からほとんど取得し、東京都の治癒数データが異常値なので、これは参考②から取得している。
【参考】
①新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和2年5月3日版)@厚労省
②新型コロナウイルス国内感染の状況@東洋経済オンライン
そして、今回利用したデータ③およびアプリ④、⑤は以下に置いた。
③は3つのファイルから構成されている。また、④が大体の様子を描画するアプリであり、⑤がこれをフィッティングするアプリである。
③COVID-19_Japan/data/
④COVID-19_Japan/simple_draw_Japan.py
⑤COVID-19_Japan/fitting_SIHR_Japan.py
###やったこと
・日本の状況
・東京の状況
・大阪の状況
・北海道の状況
・その他の地域の状況
###・日本の状況
まず、概況
リニアスケールで描くと以下のとおり、なお、新規感染数の棒グラフの左端に大きな値が入っていますがこれは3月25日以前のデータの合計値が入っています。
というわけで、今回は3月26日から始まった第二波の感染についての分析をやります。
以下のグラフを見ると、まず感染数(入院数)はぎりぎり1万人手前で減少する傾向が見え始めています。
以下が棒グラフ以外を片対数グラフで描画しています。
これを上記の微分方程式で解くと以下のとおりとなります。
ただし、入力パラメータ依存があり、得られる結果は異なることに注意してください。
ここでは、新規感染数が少し大きめの数値を例として表示しています。
すなわち、
基本再生産数=4.18\\
実効再生産数=0.21\\
感染率\gamma (R-1)=-3.49e^{-2}
と得られました。
なお、この数値はフィッティングするときのパラメータ依存があるので、取り扱いはご注意願います。
結論的に云えば、新規感染数のピークアウトは過ぎて、今ちょうど感染数のピークでこのあと減少してくるようです。そして、12日程度で感染数と治癒数曲線が交差し、その後3週間程度で約半数の感染数(入院数)に到達する模様です。
ただし、状況によっては感染数が減らずにだらだら推移する場合もあるので、やはり全国緊急事態宣言の延長はやむをえない判断だと言えます。
どうなれば終息へ確実に向かうのかということは難しいけど、いろいろフィッティングして来て、このまま感染数と治癒数が交差できれば、第二波としては戻らない状況と言え、いろいろ緩和できると思う。
ただし、地域によってはそれぞれの判断が入ると思うし、生活様式は依然として今の様式を継続する必要がある。
###・東京の状況
概況は以下のとおり、ほんとに右の165人、160人が残念です。この所為で全体がランダムに発生しているように見えています。しかし、実際そうなのかもしれませんが、...
また、治癒数が途中で段差ができていて、データ管理されていないように見えます。
※治癒数は医療崩壊と直結する一番大切なデータの一つです
とはいえ、感染数と治癒数、そして死亡数はある程度規則性も見えるので、フィッティングしてみることとします。
フィッティング結果は以下のとおりです。
得られた諸量は以下のとおり
基本再生産数=3.82\\
実効再生産数=0.32\\
感染率\gamma (R-1)=-3.93e^{-2}
###・大阪の状況
大阪も治雄数が大きな段差が見えます。それを除けば新規感染数は減少してきたように見えます。
結果は以下のとおりです。
得られた諸量は以下のとおり
基本再生産数=4.18\\
実効再生産数=0.59\\
感染率\gamma (R-1)=-1.50e^{-2}
大阪も治癒数の増加が今後どうなるか見ないと終息へ向かえるのかどうか難しいところです。
###・北海道の状況
北海道は前回丁度感染拡大が始まった都市のひとつでした。
以下の概況を見ただけで、やはり厳しい状況にあるのが分かります。
そして、フィッティング結果は以下のとおりです。
計算上は、新規感染数はピーク辺りであり、飽和しつつあるような結果になっています。
得られた諸量は以下のとおりで、実効再生産数は少し大きめです。そして、感染数ピークはこれからであり、治癒数が小さいことから予断を許さない状況です。
基本再生産数=4.18\\
実効再生産数=0.59\\
感染率\gamma (R-1)=-1.50e^{-2}
###・その他の地域の状況
####神奈川1060
神奈川県も北海道同様、新規感染数ピークは過ぎたようだが、まだまだ感染数ピークあたりである。
予断は許さない状況です。新規感染数の減少速度が非常に小さく、治癒数の増加もこれからな状況です。
基本再生産数=4.89\\
実効再生産数=0.63\\
感染率\gamma (R-1)=-1.15e^{-2}
####千葉823・埼玉676
千葉と埼玉の振る舞いはすごく似ています。
両者とも神奈川同様、新規感染数ピークは過ぎたようです。そして、感染数ピークあたりです。
基本再生産数=5.49\\
実効再生産数=0.06\\
感染率\gamma (R-1)=-3.06e^{-2}
実効再生産数が千葉に比べて大きくなっている要因は不確かです。しかし、埼玉の方がちょっと飽和の手前のようです。
基本再生産数=6.78\\
実効再生産数=0.50\\
感染率\gamma (R-1)=-1.08e^{-2}
####石川260・富山209
最近のニュース報道を見ていると、ちょっと感染が増えていそうなのは石川と富山です。
以下のように、石川の方が全体に多いですが、振る舞いは似ています。
そして、石川は新規感染数はピークを過ぎて、感染数ピークに到達したように見えますが、富山は量は少ないですが、一日毎の量は継続しているのでピークアウトしたかどうかは難しいところです。
基本再生産数=5.97\\
実効再生産数=0.47\\
感染率\gamma (R-1)=-1.69e^{-2}
富山はフィッティングがとても難しく、以下はあくまで参考情報としてみてください。
実効再生産数が少し大きめな数値になっています。
基本再生産数=5.36\\
実効再生産数=0.81\\
感染率\gamma (R-1)=-9.30e^{-3}
####福岡648・兵庫654・京都328・愛知491
これらの各県は最近の新規感染数は5人以下となってきています。
グラフを見ると、治癒数が上がってきた京都は感染数も減少に転じていますが、その他の県は治癒数がまだまだ少なく感染数が減少するためには、治癒数の増加が待たれるところです。
しかし、今後は確実に治癒数が増加して終息に向かうと思われます。
###まとめ
・SIHRモデルを利用して、日本各地の実効再生産数などを求めてみた
・日本全体としては、そろそろ感染数も減少期になりつつあり、終息が見えてきた
・しかし、東京、大阪はまだまだ終息できるかどうかの瀬戸際な状況であり、ここを終息へ向かわせることが喫緊の課題である。どちらも治癒数をもっと増加させる必要がある。
・北海道はまだまだ新規感染数ピーク辺りであり、予断を許さない状況である。ここを終息に向かわせることが第二の課題である
・その他の地域はおおむね新規感染数は減少傾向に転じており、ほぼ感染数ピーク近傍乃至は減少期に入ったものと思われる。しかし、今回取り上げた地域は予断を許さない状況であることが分かる
・得られた諸量は入力パラメータ依存があるので、得られた諸量の精度を示す必要がある