概要
4月に入り,研究室での生活が始まる時期となりました.
研究では様々な苦難が待ち受けていますが,最初の関門は論文サーベイだと感じる学生は多いと思います.
そこで,本記事では論文サーベイ時に強い味方となるツールをいくつか紹介しています.
一個人の意見である事を予めご了承ください。
論文サーベイとは
そもそも論文サーベイとは何でしょうか?
今流行りのChatGPT先生に聞いてみました.
とのことです.
当然のことですが,「何を研究したいか」を決めるためには「どんな研究があるのか」を知る必要があります.最近の技術的流行も知る必要もありますし,逆に行われてこなかった事も見つける必要があります.
そのためには,公開されている既存研究の論文を読み,分野の理解を深めていくための論文サーベイが必要となっていくのです.
そして論文サーベイにおいて,以下のような点で詰まる方は多いのではないでしょうか.
- 基本英語
- そもそも論文をどう探せばいいのかわからない
- 文量が多い
- 英語
そこで,様々なツールをフル活用する事で,このような詰まりを減らすことができます.
おすすめツール
DeepL翻訳ツール
お馴染みの翻訳ツール.
DeepL翻訳ツールは,こちらもお馴染みGoogle翻訳などの数多の翻訳エンジンよりも精度がよい,として話題になりました.
実際かなり流暢な翻訳文を提示してくれるため,専門用語の多い論文サーベイでは非常に重宝します.
またブラウザ以外にWindows・mac・iPhone版アプリもあり,アプリ版ではより便利になります.
具体的には以下のようなショートカットキーを使う事で便利になります.
ショートカットキー | 説明 |
---|---|
Ctrl+C+C | DeepLアプリを呼び出しテキスト翻訳 |
Ctrl+F9 | 他アプリ内のテキストを瞬時に翻訳 |
どちらも便利ですが,特に便利なのがCtrl+F9キーです.
例えば以下のような文章を翻訳するとします.
I am a student recently assigned
to a lab.
もしCtrl+C+Cキーで翻訳をすると以下のような結果になります.
このように改行された文章を入力すると,翻訳結果が少し変になってしまいます.そして論文によっては丸コピすると改行が入ってしまい,翻訳がうまくいかない場合があるのです.
これをCtrl+F9キーで翻訳をすると以下のような結果になりました.
改行による影響を受けずに翻訳ができていることがわかります.とても便利!
しかしCtrl+F9キーは無料版では1000文字未満までしか翻訳できません.
もし無料版のまま1000文字以上を一気に翻訳したい!という場合はShaperというサイトを活用することで改行を削除することが可能です.
Google Scholor
論文サーベイのド定番ツール.論文名だけでなくキーワード検索や期間指定も可能なため,「こんな感じの分野の論文が読みたい」「2020年度以降の論文のみ見たい」など,様々な使い方ができます.
また検索した論文で琴線に触れたものがあれば,その論文を引用している論文をたどることができます.
例)Vision Transformerで検索した結果
論文を引用している論文を調べたい時は,画像の赤枠で示した被引用数をクリックすることで可能になります.実際にクリックした結果は以下の画像のようになりました.
引用されているという事は分野や内容の関連性が高いことを意味しますので,駆使する事で自分の研究に近い論文を見つけやすくなるでしょう.
arXiv
arXivは、主に自然科学や数学の分野で、査読されていない研究論文をインターネット上で公開するウェブサイトで,誰でも無料で閲覧することができます.arXivは、研究者が自分の成果を早く広めたり、他の研究者からフィードバックを得たりするために利用されています.
arXiV自体はツールではなく論文が毎日大量に投稿されているサイトになりますが,arXiV APIを活用することで,SlackやLINEなどに興味のある論文を自動投稿するなど,情報収集をより効率的に行うことができます.
例に挙げたもの以外にも活用方法があると思うので,ぜひ調べてみてください.
Paper With Code
Paper With Codeとは,機械学習の論文とその実装コードをリンクさせたサイトです.論文のタイトルや要約,GitHubのリンクやスター数,データセットやタスク,モデルの性能などが一覧で見られます.また,各タスクやデータセットにおけるモデルのランキングやトレンドも確認できます.
「興味のある分野は定まってきたけど,どんな手法があるかわからない」という場合や「最新の手法で実装があるものを見つけたい」という場合に役立つので,是非興味のある分野(タスク)をPaper With Codeで調べてみましょう.
文献管理ツール
大量の論文を読むうちに,「どの論文を読んだんだっけ?」という現象が発生します.そんな時に役立つのが文献管理ツールです.
文献管理ツールとは,文献情報(論文や本のタイトルや著者など)を管理するツールのことです.
例えば,過去読んだ論文の振り返りはもちろん,メモの記録や,サービスによっては文章にハイライトをつけることや他者との共有も可能です.これらの機能は,自分が読んだ論文を整理したり,他人と意見交換したりする際に便利です.
またWordなどの文書作成ソフトにアドインを入れることで,レポートや論文を書くときに,参考文献リストを自動で作ってくれるなど,論文サーベイ以外にも役立つ場面があるでしょう.
大学によっては,学生に文献管理ツールの有料版の提供をしていますので,活用する事をお勧めします.
代表的な文献管理ツール
Connected Papers
研究を始める人にとって,関連する論文を見つけるのは大変な作業です.そこで,Connected Papersというツールが役に立ちます.Connected Papersは,ある論文から関連度の高い論文をグラフで可視化し,研究の流れやトレンドを把握するのに便利です.
現在はフリープラン・有料プランが存在し,フリープランでは1カ月に5つの論文に対してグラフを作成することができます.
また類似サービスに,Incitefulというものがあり,現時点では無料(かつ無制限らしい)です.使い易さでは劣る印象ですが,沢山調べたい場合は非常に役立つと考えられます.
Scrapbox
Scrapboxとは,オンライン上でメモ・ノートを保存し整理するためのツールです.そして論文サーベイ時にScrapboxを使うと,以下のようなメリットがあります.
- 論文の要約や感想,参考文献などを自由に書き込める
- ページ間のリンクやタグで関連する論文を簡単に探せる
- 画像や動画,数式なども貼り付けられる
- プロジェクトに他の人を招待することで,情報共有できる
またテンプレートを作成することも可能なため,論文サーベイ用のテンプレートを作成して時短しつつ,膨大な論文情報を管理できます.
Bing AI
誤った結果が生成されることも多いため,出力結果を盲信するのはNGです.
論文サーベイの効率化に大きな影響を与えそうなのが,ChatGPTをはじめとした対話型AIです.
活用方法としては,「論文の要約」「詳細な情報の抽出」「アイディア出し」など多岐に渡ります.
そしてBing AIは,検索エンジンBing上で使用可能なAIで,ChatGPTとの大きな違いとして,最新情報を収集して質問に答えることができるため,最新の論文の要約も可能です.
またBing AI には独創性・バランス・厳密の3種類の回答トーンがあり,トーンによって生成結果に違いを出すことができます.
現時点では1トピックにつき20回答までと制限があるため,ChatGPTほど大量のやり取りは出来ませんが,要約程度であれば問題ない範疇と思います.
まとめ
本記事でまとめたツール以外にも様々な役立ちツールが存在すると思いますので,自分に合ったものを是非見つけてみてください.
参考サイト