統計検定準1級の勉強のための解説記事となります。下記にご了承いただける方のみ、お読みください。
以下、動画でも解説しています。
問題のポイント
確率母関数は、確率分布を解析するための強力なツールです。
確率母関数を用いることによって、離散型確率変数の確率分布の期待値と分散を容易に求めることができます。
確率母関数の定義:G_X(s) = E(s^X) ・・・①
期待値:E[X] = G'_X(1) ・・・②
分散:V[X] = G''_X(1) + G'_X(1) - (G'_X(1))^2 ・・・③
解法ノート
解答
幾何分布に従うXの確率母関数
①の式に期待値の定義を当てはめると、以下のような式が導かれます。
G_X(s) = E(s^X) =\sum_{x}^{} s^x p(x)
問題文の条件にある、幾何分布の確率関数
p(x) = (1-p)^x p, \quad x = 0, 1, 2, \ldots
を代入すると、
G_X(s) = E(s^X) = \sum_{x=0}^{\infty} s^x (1-p)^x p
となります。
ここで、$x$乗の部分をまとめると、
G_X(s) = \sum_{x=0}^{\infty} p \left(s(1-p)\right)^x
と式変形ができます。
これは、初項が$p$、公比が$s(1-p)$の無限等比級数の和です。
ここで、$|s(1-p)| < 1$のとき、この級数は収束するため、無限等比級数の和の公式を用いると、
G_X(s) = \frac{p}{1 - s(1-p)} \quad (|s(1-p)| < 1)
が導かれます。
幾何分布に従うXの期待値
まず、確率母関数$G_X(s)$を$s$で1回微分した値を求めます。商の微分の公式を用いて、計算すると、
G'_X(s) = \frac{p(1-p)}{(1 - s(1-p))^2}
が導かれます。
よって、式②、および上記の式の$s$に1を代入した式を用いると以下のように変形できます。
E[X] = G'_X(1) = \frac{p(1-p)}{(1-(1-p))^2}
この式を計算して整理すると、
E[X] = \frac{1-p}{p}
が導かれます。
幾何分布に従うXの分散
まず、確率母関数$G_X(s)$を2回微分した値を求めます。商の微分の公式を用いると、
G''_X(s) = \frac{2p(1-p)^2(1 - s(1-p))}{(1 - s(1-p))^4}
と表されます。これを計算して、式変形すると、
G''_X(s) = \frac{2p(1-p)^2}{(1 - s(1-p))^3}
が導かれます。さらに上記の式の$s$に1を代入して計算すると、
G''_X(1) = \frac{2p(1-p)^2}{(1-(1-p))^3} = \frac{2(1-p)^2}{p^2}
となります。
よって、分散は、式③を用いて、
V[X] = G''_X(1) + G'_X(1) - (G'_X(1))^2 = \frac{2(1-p)^2}{p^2} + \frac{1-p}{p}- \left(\frac{1-p}{p}\right)^2
と表されます。
この式を計算して整理すると、
V[X] = \frac{1-p}{p^2}
が導かれます。
コラム
幾何分布のグラフは$p$によって、以下のように変化します。
$E[X] = \frac{1-p}{p}$は、$p$の単調減少関数です。
よって、成功確率$p$が大きくなると成功までの試行回数の期待値は小さくなります。グラフを確認しても、$p=0.2$よりも$p=0.8$のほうがグラフが左にシフトし、Xの期待値が小さくなっていることがわかります。
$V[X] = \frac{1-p}{p^2}$は、$p$の単調減少関数です。
よって、成功確率$p$が大きくなると、結果に大きなばらつきが出にくいことを示しています。グラフを確認しても、$p=0.8$よりも$p=0.2$のほうが、Xがばらついています。
参考)高校数学の知識
無限等比級数の和
初項 $a$, 公比 $r$ の無限等比級数の和 $S$ は、$|r| < 1$ のとき、
S = \sum_{n=0}^{\infty} ar^n = \frac{a}{1-r} \quad (|r| < 1)
商の微分
\left(\frac{f(x)}{g(x)}\right)' = \frac{f'(x)g(x) - f(x)g'(x)}{g(x)^2}