統計検定準1級の勉強のための解説記事となります。下記にご了承いただける方のみ、お読みください。
以下の動画でも解説していますので、見やすいほうでご覧ください。
問題のポイント
$X$, $Y$が独立である場合の$aX + bY$の確率密度関数を求めるため、$2$次元確率変数$(X,Y)$から新しい$2$次元確率変数$(Z,W)$への変換を考えます。
$aX + bY$の確率密度関数を求めたい場合は、
Z = aX + bY,
W = Y ・・・①
とおきます。ここで、逆変換は、
X = \frac{Z}{a} - \frac{bW}{a},
Y = W ・・・②
となり、$f_{Z,W}(z,w)$は、
f_{Z,W}(z,w) = \frac{f_X\left(\frac{z}{a}-\frac{bw}{a}\right) \cdot f_Y(w)} { \left|J(X,Y)\right|} ・・・③
と表されます。上記の$J(X, Y) $は、ヤコビアンであり、
J(X, Y) = \begin{vmatrix}
\frac{\partial Z}{\partial X} & \frac{\partial Z}{\partial Y} \\
\frac{\partial W}{\partial X} & \frac{\partial W}{\partial Y}
\end{vmatrix} ・・・④
です。
$Z$の確率密度関数$f_Z(z)$を得るためには、$f_{Z,W}(z,w)$を$w$について積分し、$Z$の周辺確率密度関数を求めます。
f_Z(z) = \int_{-\infty}^{\infty} f_{Z,W}(z,w) dw ・・・⑤
解法ノート
解答
Z=aX+bYの確率密度関数
$X$と$Y$が独立であるときの、$X+Y$の確率密度関数を求める問題であることに着目します。
まず、新たな変数$Z$と$W$を導入し、$Z = X + Y, W = Y$とします。式①について、$a=1,b=1$であり、式④は、
J(X, Y) = \left|\det\begin{bmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{bmatrix}\right| = 1
と求まります。よって、式③は、
f_{Z,W}(z,w) = f_X\left({z}-{w}\right) \cdot f_Y(w)
と表されます。
ここで、$X$と$Y$の確率密度関数はそれぞれ、同じパラメータ$λ$に従い、
f_X(x) = λe^{-λx} (x ≥ 0)
f_Y(y) = λe^{-λy} (y ≥ 0)
です。式②から逆変換は、$X = Z-W, Y = W$となるため、これらをそれぞれ代入して、
f_X(z-w) = \lambda e^{-\lambda (z-w)} (z-w ≥ 0)
f_Y(w) = \lambda e^{-\lambda w} (w ≥ 0)
となります。
よって、式③は、
f_{Z,W}(z,w) = f_X\left({z}-{w}\right) \cdot f_Y(w) = \lambda^2 e^{-\lambda z} (0 \leq w \leq z)
となり、これを用いると、式⑤から、
f_Z(z) = \int_{0}^{z} \lambda^2 e^{-\lambda z} dw (z \geq 0)
となります。これを計算すると、$λ^2 e^{-\lambda z} $は、 $w$ に関して定数とみなすことができるので、
f_Z(z) = \lambda^2 e^{-\lambda z}\int_{0}^{z} dw (z \geq 0)
となり、これを計算すれば、
f_Z(z) = \lambda^2 z e^{-\lambda z} \quad (z \geq 0)
が導かれます。
参考
ガンマ分布との比較
パラメータ $(k, θ)$ のガンマ分布の確率密度関数は、
f(x) = \frac{1}{\Gamma(k)\theta^k} x^{k-1} e^{-\frac{x}{\theta}} \quad (x \geq 0)
です。$k=2, θ=1/λ$ とすると、
f(z) = \lambda^2 z e^{-\lambda z} \quad (z \geq 0)
となり、今回求めた$ f_Z(z)$ と一致します。
コラム
変数変換とヤコビアン
$f_{X,Y}(x,y)$を$X$と$Y$の同時確率密度関数とすると、2次元の確率変数$(X,Y)$を別の2次元確率変数$(Z,W)$に変換した際の同時確率密度関数$f_{Z,W}(z,w)$は、
f_{Z,W}(z,w) = \frac{f_{X,Y}(x,y)}{|J(X,Y)|}
となります。
ここで、$X$と$Y$は独立のとき、$X$の確率密度関数を$f_X(x)$、$Y$の確率密度関数を$f_Y(y)$とすると、
f_{X,Y}(x,y) = f_X(x) \cdot f_Y(y)
となります。
確率変数の和の確率密度関数については、以下の動画が参考になりました。
1つ目
2つ目
周辺確率密度関数については、以下の動画が参考になりました。