統計検定準1級の勉強のための解説記事となります。下記にご了承いただける方のみ、お読みください。
以下の動画でも解説していますので、見やすいほうでご覧ください。
# 学習のポイント確率変数の列${X_n}$ は平均 $\mu$、分散 $\sigma^2$ の独立同一分布に従うと仮定する。また、$X_1, X_2, ..., X_n$ の標本平均を $\bar{X}_n$ とする。
・中心極限定理
$\sqrt{n}(\bar{X}_n - \mu)$は、正規分布 $N(0, \sigma^2)$ に分布収束する。
・デルタ法
ある関数 $f$ を用いて $f(\bar{X}_n)$ と表される量を考える。$f(x)$ が連続微分可能のとき、$\sqrt{n}(f(\bar{X}_n) - f(\mu))$ は $N(0, (f'(\mu))^2 \sigma^2)$ に分布収束する。
・連続写像定理(分布収束)
確率変数列$X_n$が確率変数$X$の分布に分布収束し、かつ$h$が連続関数であれば、$h(X_n)$は$h(X)$に分布収束する。
・カイ二乗分布
$Z_i \sim N(0,1)$, $i = 1,...,n$で、これらが互いに独立であるとき、
$Y = Z_1^2 + ... + Z_n^2$ が従う分布を自由度$n$のカイ二乗分布という。
中心極限定理
確率変数列 ${X_n}$ は独立同一分布に従い、平均は $\mu$、分散は $\sigma^2$ です。
中心極限定理より、$\sqrt{n}(\bar{X}_n - \mu)$ は正規分布 $N(0, \sigma^2)$ に分布収束します。
この確率変数を $\sigma$ で割ると、平均は $0 \times \frac{1}{\sigma} = 0$、分散は $\sigma^2 \times (\frac{1}{\sigma})^2 = 1$ となります。よって、$\frac{\sqrt{n}(\bar{X}_n - \mu)}{\sigma}$ は標準正規分布 $N(0, 1)$ に分布収束します。
デルタ法の適用
確率変数列 ${X_n}$ は独立同一分布に従い、平均は $\mu$、分散は $\sigma^2$ です。
$g(x) = x^3$ とおくと、$g'(x) = 3x^2$ です。
ここで、$g'(\mu) = 3\mu^2$ となり、デルタ法を適用すると、
$$
\sqrt{n}(\bar{X}_n^3 - \mu^3) \xrightarrow{d} N(0, 9\mu^4\sigma^2)
$$
となります。
以上より、${\sqrt{n}(\bar{X}_n^3 - \mu^3)}$ の分布収束先は、平均 $0$、分散 $9\mu^4\sigma^2$ の正規分布です。
自由度 1 のカイ二乗分布へ分布収束
確率変数列 ${X_n}$ は独立同一分布に従い、平均は $\mu$、分散は $\sigma^2$ です。
$\frac{\sqrt{n}(\bar{X}_n - \mu)}{\sigma}$ は標準正規分布 $N(0, 1)$ に分布収束します。
ここで、連続写像定理を適用すると、$ (\frac{\sqrt{n}(\bar{X}_n - \mu)}{\sigma})^2$ は、標準正規分布 $N(0, 1)$ に従う確率変数の二乗の分布に分布収束する。
よって、$ (\frac{\sqrt{n}(\bar{X}_n - \mu)}{\sigma})^2$ の分布収束先は、自由度 1 のカイ二乗分布 $\chi^2_1$ です。