統計検定準1級の勉強のための解説記事となります。下記にご了承いただける方のみ、お読みください。
以下の動画でも解説していますので、見やすいほうでご覧ください。
問題のポイント
・正規分布に従うXのモーメント母関数を用いて、対数正規分布に従うYの期待値、分散を導出します。
・変数変換の式を用いて、対数正規分布に従うYの確率密度関数を導出します。
・正規分布のモーメント母関数:M_X(t) = E[e^{tX}]= \exp(\mu t + \frac{\sigma^2 t^2}{2}) ・・・①
・ある確率変数Xが、別の確率変数YにY = g(X)という関係で変換され、
XとYが1対1対応するとき、Yの確率密度関数f_Y(y)は、以下となる。
f_Y(y) = ( \frac{f_X(x)}{|g'(x)|}のxをyで変換したもの)・・・②
①式の導出方法は、コラムの「正規分布のモーメント母関数の求め方」を参照してください。
今回の変数変換の流れを図示すると、以下のようになります。
解法ノート
解答
対数正規分布に従うYの期待値
$Y = e^X$という関係により、求めたい$Y$の期待値は、
E[Y] = E[e^X]
と表されます。
$X$のモーメント母関数を用いて、上記の式の右辺を導出します。$X$は正規分布に従うため、式①に$t=1$を代入すると、
M_X(1) = E[e^{X}] = \exp(\mu + \frac{\sigma^2}{2})
となります。
よって、求めたい期待値は、
E[Y] = M_X(1) = \exp(\mu + \frac{\sigma^2}{2})
と表されます。
対数正規分布に従うYの分散
分散は、
V(Y) = E[Y^2] - (E[Y])^2 = E[(e^X)^2] - (E[e^X])^2 = E[e^{2X}] - (E[e^X])^2
と表されます。
式②は、$t=2$のとき、
E[e^{2X}] = \exp(\mu × 2 + \frac{\sigma^2× 2^2}{2})
であり、これを整理すると、
E[e^{2X}]=\exp(2\mu + 2\sigma^2)
が導かれます。
よって、分散は、
V(Y)= E[e^{2X}] - (E[e^X])^2 =\exp(2\mu + 2\sigma^2) - \left(\exp\left(\mu + \frac{\sigma^2}{2}\right)\right)^2
と表されます。右辺の第2項を計算すると、
V(Y)=\exp(2\mu + 2\sigma^2) - \exp(2 * (μ + σ²/2))
となり、これを整理すると、
V(Y)=exp(2μ + 2σ²) - exp(2μ + σ²)
が導かれます。
対数正規分布に従うYの確率密度関数
問題の条件より、正規分布に従う$X$の確率密度関数は、
f(x) = \dfrac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma} \exp\left(-\dfrac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right)
です。
便宜上、変数変換後の$Y$について、
y=g(x)
と表します。
問題の条件である、$Y = exp(X)$という関係により、
g(x) = exp(x)
であり、$g(x)$を1回微分すると、
g'(x) = exp(x)
となります。
$Y = exp(X)$であるため、$X$と$Y$は1対1対応となることから、変数変換後の$Y$の確率密度関数$f_Y(y)$は、式②より、
\frac{\dfrac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma} \exp\left(-\dfrac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right)}{exp(x)} のxをyに変換したもの
と表されます。
ここで、$y = exp(x)$という式を変形すると、
ⅰ) exp(x)=y
ⅱ) x=\log y
の2つの式が導かれるため、求めたい$f_Y(y)$は、
f_Y(y) = \frac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma y} \exp\left(-\dfrac{(\log y-\mu)^2}{2\sigma^2}\right)
と表されます。
コラム
正規分布のモーメント母関数の求め方
例題2.3と同じような方法で、証明できる有名な問題です。ガウス積分を使います。
証明は、以下の動画が参考になりました。
ガウス積分については、以下の動画が参考になりました。
確率変数の変数変換そのものについては、以下の動画が参考になりました。