はじめに
TRIAL&RetailAI Advent Calendar 2024 の 4日目の記事です。
昨日は @yang_zaiqi さんの『Android で大規模言語モデルを試す』という記事でした。
生成AIを搭載したスマートフォンも続々リリースされていますが、
プライバシーを守るということに加えて低遅延という意味でも今後が非常に楽しみです。
前回の記事
https://qiita.com/yang_zaiqi/items/726ef7009e220ed228b3
本題
本日の記事は、「第五次産業革命」というタイトルです!
自己紹介
遅ればせながら、私は新卒入社5年目で、
現在は生成AIなど3〜5年でモノになるかもしれない技術を通じて
小売などグループ企業の事業価値を高める実験の推進をする役割を負っています。
エンジニアとしての入社ではなく、
流通側のマーケティング部(デジタル広告の運用) ▶ ネットスーパーの立ち上げ部隊 ▶ ITセグメントの経営管理 と様々な部署を渡り歩いています。
※3ヶ月だけ、Flutterでコーディングをした経験があります。。。
さて、未来に向けた準備をしていく役割が多いからこそ、
今回は「第五次産業革命」というこれから来る未来に向けたテーマで記載していきます。
長いので「最後に」まで飛ばして構いません(笑)
現代は第四次産業革命の時代と呼ばれています。
総務省の資料『第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究』(平成29年、p.7)によれば、
第四次産業革命は「2010 年代現在、デジタル技術の進展と、あらゆるモノがインターネットにつながる IoTの発展により、限界費用や取引費用の低減が進み、新たな経済発展や社会構造の変革を誘発すると議論される」というように特徴が定義されています。
また、同資料によれば第一次産業革命から第四次産業革命までは下記のように特徴づけられています。
(出展)『第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究』(平成29年、p.7)
第四次産業革命に関する議論は現在さまざまなされていますが、
一方でその一歩先の「第五次産業革命」についての議論はまだまだ進んでいないように思われます。
たとえば経済産業省、総務省、内閣府のホームページから「第4次産業革命/第四次産業革命」「第5次産業革命/第五次産業革命」といったキーワードで記事を検索してみると、
- 経済産業省 967件:10件
- 総務省 1,555件:4件
- 内閣府 1,379件:6件
と、ヒットした件数に開きがあり、本格的な議論はこれからだと思われます。
※数字は前者が"第4次産業革命""第四次産業革命"の検索結果の合計、後者が"第5次産業革命""第五次産業革命"の検索結果の合計。2024年12月3日時点。
第五次産業革命の比較的ポピュラーな定義としては、
2021年に欧州委員会が第4次産業革命(インダストリー4.0)に代わる新しいコンセプトとして
第5次産業革命(インダストリー5.0)を提唱したときのもので、
主なコンセプトとして
- 持続可能性(サステナビリティ)
- 人間中心(ヒューマンセントリック)
- 回復力(レジリエンス)
の3つを挙げています。
参考:「Industry 5.0」 by Europe Commission
https://research-and-innovation.ec.europa.eu/research-area/industrial-research-and-innovation/industry-50_en
一方で、日本では「バイオテクノロジー」という文脈で第五次産業革命が語られることもあります。
参考:経済産業省産業構造審議会 資料「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/pdf/20200202_1.pdf
現代が第四次産業革命の最中なので、その次の第五次産業革命の解釈はこれから変わっていくものと思います。
さまざまな解釈を見るなかで、
あらためて私なりに整理をすると、第五次産業革命の構成要素は、
- A.第四次産業革命からの回復
- B.テクノロジーを通じた持続可能性の実現
- C.人間中心の技術
の3つになります。
それぞれを私の解釈で書いていきます。
A.第四次産業革命からの回復
第四次産業革命は、デジタル化と自動化による効率化と生産性の向上をもたらしましたが、同時に
- 雇用の不安定化
- プライバシーの侵害
- 社会的格差の拡大
などの問題とも隣合わせではないでしょうか?
第五次産業革命では、これらの問題に対処し、技術の進歩が全ての人にとってプラスになるような社会的な枠組みを構築することが目指されます。
B.テクノロジーを通じた持続可能性の実現
環境問題は現代社会が直面する最も重要な課題の一つです。
第五次産業革命では、クリーンエネルギー、スマートシティ、持続可能な農業など、環境に配慮した技術の開発と普及が重視されます。これにより、経済成長と環境保護の両立を目指します。
日本で取り上げられる「バイオの時代」という言葉は、この「持続可能性」の観点と関連が深いと考えます。
C.人間中心の技術
人間中心の技術は、技術開発のプロセスにおいて人間のニーズ、価値観、福祉を最優先に考慮するアプローチです。
これには、アクセシビリティ、ユーザビリティ、倫理的な使用を含む、幅広い要素が考慮されます。
技術の発展は、人間の生活を豊かにするためにあるべきです。
第五次産業革命では、AIやロボット技術が人間の仕事を奪うのではなく、人間の能力を拡張し、創造性や感情を重視した新たな価値を生み出すことが強調されます。
また、教育や医療などの分野での技術活用により、より質の高いサービスを提供する可能性もあると考えられます。
そして、「包摂性」「倫理への配慮」といった事柄も第五次産業革命のテーマとして語られることもありますが、ベン図で表現すると下記のようになります。
ベン図は自身で作成。
さて、毎年1月にラスベガスで開催されるテクノロジーの見本市「CES」と、同じく毎年1月にニューヨークで開催される小売の最大級の展示会「NRF Retail's Big Show」を視察させていただく機会がありました。
結論、「包摂性(Inclusive)」「持続可能性(Sustainable)」という2つの取り組みに限って言えば、
「第五次産業革命の実現は決して遠い未来の話ではない」
ということを視察を通じて感じていました。
「方針として語られたから」という理由と「これらを意識したサービスを作っているから」という理由からです。
前者に関しては、CES初日の基調講演「~CTA STate of the Industry Address and L’Oreal Keynote~」で主張されていました。
まず、CES主催団体のCTAによるメッセージとして、
「テクノロジーの進歩は、人類を豊かにさせるために存在しなければならない」という点が主張され、その豊かさに関連して、
「誰もが取り残されたらいけない」「Inclusiveにならないといけない」というメッセージが表示され、
その具体例として取り上げるテクノロジーとして
「障害があって車椅子を使用している人でも楽しめるテレビゲーム」が挙げられていました。
たしかに、Wiiのようなコントローラーのゲームはハイテクですが「手足が使えること」が前提ですし、VRのゲームも「目が見えること」を前提に楽しめるように設計されており、取り残される人は出てきます。
しかし、車椅子の方でも楽しめるという設計は、包摂性のある取り組みです。
今後のテクノロジーの向かうべき大枠を示す初日の基調講演で「包摂性」が取り上げられた以上、今後「包摂性」を大事にする機運が醸成されることが考えられます。
実際にNRFでみた展示としては、
食品スーパーで打っているような消費財のパッケージに埋め込むQRコードと、
それを読み取って「商品パッケージに書かれた詳しい商品情報を音声で読み上げる」アプリを提供している企業がありました。
背景として、視力に問題がある方の「商品の裏に書かれている商品情報が、文字が小さくて読みづらい」というペインポイントに着目してこのようなサービスを提供しています。
流通業界の中で、「視力に問題がある方」でも生活をよくできるようにするという意味で「包摂性」に取り組んでいる企業であると考えます。(また「従来より簡単に読み取れるQR」という価値もあります。)
包摂性という観点では、
私達の会社もIoT機器を導入しているからこそ「だれもがテクノロジーによる恩恵を享受する」ということに関してもこれから求められるかもしれません。
UI/UXを考えることは当たり前のことではありますが、
「だれに価値を届けるか」を明らかにする一方で、
「このテクノロジーを享受できない人がいる可能性もあるのか」を実証実験をしていくなかで引き続き考えていきます。
最後に
いかがでしたか?
開発について書けたわけではありませんが「テクノロジーから取り残される人」への配慮をまずは私個人から考えていきたいと、
記事を書きながらあらためて思いました。
もちろん、「それに取り組むことで得られる影響力が小さすぎる」ということがないよう、精査は必要ですが。
次回は、@gerraywang さんによる「エンジニアリング組織成長についての思考」という記事です
彼とは一緒に仕事をする期間が長かったですが、組織についてもいろいろな話をしました。
きっと組織に所属する人なら共感できる内容なのではないでしょうか?
お楽しみに!!
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