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【応用情報技術者試験】ストラテジ用語に関連する実際の事例集

Last updated at Posted at 2024-12-03

概要

応用情報技術者試験に出てくるストラテジに関する用語について、イメージを掴みやすくするために実際の事例、導入例を記載してみました。

目次

アウトソーシング

業務の一部分を外部企業に委託する経営手法のことです。
元々1960年代のアメリカで誕生したと言われています。普及したきっかけは1989年にイーストマン・コダックという会社が自社の情報処理部門をIBMに委託したのがはじまりといわれています。イーストマン・コダック自身も高い技術をもっている会社ですが、その会社がIT分野を外部委託したことで注目されました。

事例

  • 株式会社AIRDOは給与計算の業務をアウトソーシングで対応しています。
    アウトソーシングする前は職種ごとに賃金の構成が異なり、給与計算に多くのリソースを割いていたらしいです。そのため、アウトソーシングすることによってコア業務に専念できるようになりました。

  • 株式会社ベネッセコーポレーションは運用している4つのWebサイトに関連する業務をアウトソーシングしています。もともとこの4つのWebサイトは複数の会社で運用していたため、各サイトでばらつきが見られていました。そのばらつきの対応によるリソースも多く割いていました。その後一つの会社にアウトソーシングすることで、各サイトのばらつきをなくすことに成功し、業務効率化と品質向上にもつながりました。

参考:

アライアンス

「同盟」という意味で、異なる立場の企業同士が利益を生み出すために協力し合う体制のことを言います。

事例

  • 2019年11月、今治造船とジャパンマリンユナイテッド株式会社の、造船業界1位と2位の会社が業務提携しました。中国韓国の大手造船企業の結合が進んでいて、劣勢が続いていた日本でも造船業界のトップ2社が提携したという流れです。

  • 2020年3月24日にトヨタ自動車とNTTがそれぞれ約2000億円を出資し株式を持ち合う資本提携を決めたことを発表しました。両社の技術を用いてスマートシティの早期実現に向けた提携です。

インダストリアルエンジニアリング

企業の生産システムや業務プロセスを分析して、より効率的で効果的なものへと改善することを目指すことです。IEとも訳されます。
1910年代にアメリカの技術者・経営学者であるフレデリック・テーラーによって提唱されました。日本に伝わったのは戦後といわれています。

事例

  • トヨタ生産方式を開発したトヨタ自動車は、積極的にインダストリアルエンジニアリングの手法を導入していきました。もともと戦後の厳しい経済状況や資材不足の中、アメリカの自動車メーカーに対抗するために模索している中でジャストインタイム生産の概念を生み出しましたが、これを実現するためにインダストリアルエンジニアリングを導入していきました。ちなみにトヨタ生産方式は「トヨタ式インダストリアルエンジニアリング」とも呼ばれているそうです。

参考:
インダストリアルエンジニアリングとは?IE手法の全体像と2つの分類(方法研究と作業測定)を解説

オープンイノベーション

自社の枠を超え、外部の企業や大学、研究機関、一般消費者など様々な主体と連携して新しいアイデアや技術を取り入れてイノベーションを作り出していく戦略のことです。
元々のイノベーション理論は1912年に経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって経済発展の手段として提唱されました。オープンイノベーションは2003年ハーバード大学経営大学院教授のヘンリー・チェスブロウの著書「Open Innovation -The New Imperative for Creating and profiting from technology」の中で提唱されました。

事例

  • 2014年5月からJALがオープンイノベーションを実施し、株式会社みんなのごはんと国際線の機内食の共同開発を実施しています。国外からの観光客の中には宗教的な関係など様々な理由でベジタリアンメニューが必要な場合があります。そのためベジタリアンメニューの開発に長けているみんなのごはんと提携し、ベジタリアンメニューの対応を行っています。

  • 2021年1月から、花王はヘルスケア領域の問題解決を目的に色々な企業との連携を図っています。これは近年の消費者のニーズの多様化や変化のスピードの観点から、自社だけではなく多くの提携先と協力することを重視する方針に転換したためです。2021年6月ごろには株式会社ヘルスケアシステムズと「皮脂RNA」を活用した郵送検査サービスの共同開発をはじめました。RNAを安全に保存する技術を持つ花王と、郵送検査事業のノウハウをもっているヘルスケアシステムズの強みをいかすことで、事業を成功に導くことができました。

反対の意味をもつ言葉として「クローズドイノベーション」があります。これは自社のアイデアや技術のみでイノベーションを生み出すことです。

オピニオンリーダー

ある特定の分野やコミュニティにおいて、周囲の人々の意見や行動に強い影響力を持つ人のことです。
例えば以下のようなものがオピニオンリーダーになります。

  • YouTuber
  • インスタグラマー
  • 芸能人
  • 口コミサイト

オピニオンリーダーという言葉は1960年代にアメリカの社会学者であるエベレット・M・ロジャーズとD.カッツが作ったとされている言葉で、opinionとleaderを組み合わせた単語です。

似た言葉に、インフルエンサーという言葉があります。オピニオンリーダーととても近い意味合いですが、オピニオンリーダーは人物だけではなく、サービスやモノに対しても使用されます。上記の例のように「口コミサイト」もオピニオンリーダーになります。インフルエンサーは影響力がある人物のことを指しているため、「口コミサイト」のようなサービスやモノに対しては使用されません。

事例

  • オリオンビールはテレビのCMでGACKTを起用しています。オリオンビールは沖縄県の企業ですが、同じ沖縄出身であるGACKTを起用することにより沖縄県民の地元愛を刺激して、商品の購買欲を高めることができました。またGACKTは全国的に認知されているため、沖縄県民以外にもオリオンビールの存在を宣伝することができました。

  • 株式会社タニタのXの公式アカウントは、企業のSNSとは思えないような面白い投稿が多いです。タニタは健康機器を扱っている企業ですが、Xの投稿のように他社の公式アカウントと絡んだり、面白い投稿を続けることで、健康器具自体への関心が低い若い年齢層でも企業の認知度を上げることに成功しています。
    参考:Xのタニタ公式アカウント

オムニチャネル

企業が顧客と接する色々なチャネル(店舗、ECサイト、アプリ、電話など)同士を連携させ、顧客がいつでもシームレスに商品やサービスを購入することができるような状態や戦略のことを指します。現代の消費者はオンラインとオフラインを自由に行き来することが当たり前となっており、購買行動も多様化しています。それに対応するための戦略として注目されています。
言葉が広まったのは、2011年にアメリカの大手百貨店であるMayc’s (メイシーズ) がオムニチャネル化企業を目指すと公言したことがきっかけといわれています。Mayc’sはIT革命による顧客の購買行動の多様化による対応案として、オムニチャネルの施策を行っていました。

事例

  • イオンはスマートフォンアプリを使用してオムニチャネル戦略を進めています。例えば店内のタブレット端末と通信し、取り扱いのない商品をスマホから注文して支払いや発送の手続きも可能になっています。これにより、客はアプリと店舗をシームレスに利用できるようになっています。

  • 株式会社ファンケルでは2018年に店舗システムを刷新しました。これにより通販サイト「ファンケルオンライン」(Web)と店舗、電話といった異なる販売窓口間で、会員情報のリアルタイム共有が可能になりました。また、2021年には通販・店舗アプリを統合して、スマホアプリを使用してAIによる肌診断やカウンセリングの予約サービスを可能にしました。これにより、店舗でもWebでも同様のサービスを受けることができるようになりました。

参考:
オムニチャネルの成功事例18選|多くの企業で注目されている背景や成功事例から学べるポイントを徹底解説!

オムニチャネルはクロスチャネルのさらに進化した形になります。
クロスチャネルは複数の顧客との接点(チャネル)を連携させて、シームレスな購買 (顧客体験) を提供する手法です。例えばWebで購入した商品について、企業にチャットを通じて注文内容の確認ができるようなイメージです。
このクロスチャネルよりも各チャネルを高度に統合し、一貫した顧客体験を提供する手法がオムニチャネルです。クロスチャネルと比べてオムニチャネルは顧客がどのチャネルを利用しても全く同じような情報やサービスを提供することができます。クロスチャネルと違い、どのチャネルを使用しても一貫したサービスを受けることができます。

サプライチェーンマネジメント

製品の原材料の調達から製造、流通、そして最終的に消費者へ届くまでの全ての過程を、一貫して管理して最適化する取り組みのことです。
1982年、1983年頃にコンサルティング企業であるブース・アレン・ハミルトンという会社が「サプライチェーンマネジメント」という言葉をはじめて用いたとされています。

事例

  • キリンビール株式会社は需給業務が時代に応じて複雑になっており課題となっていました。そのため物流コストや業務負荷を下げ、業務を効率化してさらにCO2を削減する等を目的としてサプライチェーンマネジメントを実施しています。最初の取り組みは資材管理アプリの導入で、これにより業務時間を年間1400時間削減されることを見込んでいるようです。

  • 日本マクドナルドは、2014年にチキンの提供を受けていた上海食品会社が期限の偽装を行っていたことが発覚し、売り上げを大幅に落としました。この件をもとにサプライチェーンマネジメントを見直して最適化し、物流の改革を起こし顧客に安心・安全を届けるよう取り組みを行いました。

シェアードサービス

企業のグループ内の複数の事業部や子会社が、共通する業務を一つに集約して効率的に業務を行う経営手法です。例えば経理や人事などの各事業部で共通して行うような間接業務を一つの部門に集約して、その部門で専門スタッフが業務を処理するような形です。業務の効率化以外にもコストが削減できるというメリットもあります。
シェアードサービスは1980年代にアメリカではじめて導入されたとされています。アメリカの企業は大きな規模の会社の運営は、各事業所の重複した支援サービスは統合する方が理にかなっているという認識があり急速に普及しました。
ちなみにヨーロッパでは労働法の規制や経営スタイルが保守的だったこともあり、シェアードサービスの認知はあっても導入は遅れたらしいです。

事例

  • 1999年にP&Gは80ヶ国以上の経理財務部門などのバックオフィス業務をシェアードサービスに集約しました。これにより10億円のコスト削減ができたそうです。

  • 2012年には大和ハウス工業株式会社が、経理や財務の業務を82箇所の事業所でそれぞれで行っていたものを本社に集約しました。これにより、経理や財務の業務について各事業所が実施することは経理データの準備のみにすることができました。

シックスシグマ

製品やサービスの品質を大幅に向上させて、顧客満足度を高めることを目的とした経営手法です。シックスシグマの核になる考えとして「品質は偶然ではなく、管理できる」というものがあります。不良品や欠陥品を大幅に減らすことで、品質を向上させます。
元々1980年代に日本製品の品質の高さに対抗する形でアメリカの有名機器メーカーが開発した手法です。当時の日本の製造業でよく使用されていた品質管理手法である「QCサークル活動」も参考にしながらシックスシグマは開発されました。

事例

  • 1997年にソニーはシックスシグマを導入しました。当初の導入対象はソニーの製造業における品質改善に対してのみでしたが、その後シックスシグマの考えを元に、社員一人一人に対して「活動した成果の整理を行って、他の部門と共有しながら正当な評価を行う」という流れを組み込んでマネジメントツールとしても使用していました。これは「ソニーシックスシグマ」と呼ばれています。
    他にもアマゾンやフォード、ダイソン、東芝やLIXILなど多くの企業がシックスシグマを導入しています。

プロセスイノベーション

製品やサービスそのものではなく、それらを生み出すプロセス (業務のやり方) そのものを革新することです。従来のやり方にとらわれずに、新しい技術やアイデアを取り入れて業務の効率化やコストの削減、品質向上を目指します。

事例

  • トヨタ自動車の「トヨタ生産方式」もプロセスイノベーションの一つです。この方式では生産現場の改善活動や品質管理も徹底して取り組んでいます。

  • マクドナルドは「スピードサービスシステム」を導入して、客の待ち時間を最小限にすることに成功しました。このシステムを導入したことにより調理は最短時間で行われ、接客も「7つのステップ」といわれる接客作業手順が設けらたことにより店内で接客の一連の流れを瞬時に把握できるようになっています。

プロダクトイノベーション

プロセスイノベーションがプロセスに対して革新を行うのに対して、プロダクトイノベーションは製品やサービスそのものに対して革新を行うことを指します。例えばライフスタイルを変えるような革新的な製品はプロダクトイノベーションの一例とも言えます。

事例

  • スマートフォンはプロダクトイノベーションの大きな一例です。元々IBMが1992年に世界初のスマホを出しましたが、日本では2008年にソフトバンクからiPhoneが発売されたことが火種になりました。2010年から日本でも徐々にLTEが使用できるようになり、2015年には4G回線も使用できるようになったことから、2010年代はスマートフォンを使用するライフスタイルに大きく変化していった時代です。
    2010年には携帯電話の中でスマホをもっている割合は4%ほどでしたが、11年後の2021年には94%にもなっています。

  • 自動車やテレビ等の家電製品も、最初に開発された当時の観点で言うと、全てプロダクトイノベーションの一例になります。

参考:戦後日本のイノベーション

ユニバーサルデザイン

年齢や性別、国籍、障害の有無など、様々な人々が特別な調整をすることなく、安全で快適に利用できるような製品や環境をデザインすることです。取り組みの方針を明確化するために、「ユニバーサルデザインの7原則」というものが定められています。
元々デンマークの「障害を持った人もノーマルな生活を送る権利がある」という考えの「ノーマライゼーション」を元に、1980年代にアメリカの建築家であるロナルド・メイスによって提唱されました。

事例

  • 自動ドアはユニバーサルデザインの一例です。誰でも近くに行くだけでドアを通ることができます。

  • スマートフォンもユニバーサルデザインの例に当てはまります。音声認識を利用して視覚障害をもつ人でも通話できたり、聴覚障害を持つ人でもなるべく操作しやすいようなデザインになっています。

リスクマネジメント

企業やプロジェクトの活動で、将来起こりうるリスクを事前に予測してその影響を最小限に抑えるために活動することです。
リスクマネジメントの歴史は古く諸説ありますが、一説には香辛料の貿易が盛んになっていた17世紀のオランダ東インド会社で、大量の荷物を運ぶ船舶をつくるためにより多くの人から出資を募ることにより、リスクを分散させたのが始まりではないかといわれています。

事例

  • 2012年にカゴメ株式会社は「カゴメグループ災害対策基本行動計画」を制定し、運用を開始しました。2011年の東日本大震災で大きな被害を受けたのが理由で、食生活を支えるためのライフライン企業としてマネジメントの体制を強化しているとのことです。また、各事業所で安全確認や防災訓練も実施しており、災害発生時に早く商品を供給できるような体制構築にも注力しています。
  • 2018年4月に東レ株式会社はリスクマネジメントを推進する専任の組織を設置し、リスクマネジメントの実施に加えて定期的に見直しも行っています。
    リスクマネジメントの進捗を定期的に取締役会に報告して、的確なリスクマネジメントを行っています。

ワントゥワンマーケティング

一人ひとりの顧客に対して、その顧客に最適な情報や商品・サービスを提供するマーケティング手法です。元々対象を絞らないマーケティング手法のマス・マーケティングから徐々にワントゥワンマーケティングに移行していっている経緯があります。
マス・マーケティングの手法は1920年代にラジオが開始されてから大きく普及しました。企業はラジオを通して色々なアピールをすることができました。当時は個人で使用できるインターネットはなかったので、企業が顧客と接点をもつためにはこのようなマスメディアを利用する方法しかありませんでした。ラジオ以外にもテレビや雑誌などのマスメディアを通して商品を宣伝する方法が一般的でした。
現代は個人がインターネットで様々な情報を得られる時代になっているので、顧客のニーズもひとそれぞれ細かくなっていっているため、ワントゥワンマーケティングが重要になっています。

事例

  • 2020年にヤンマーホールディングスはWeb接客ツールを導入しました。ヤンマーは色々な商品の製造、販売を行っているため、必然的にWebサイトのページ数も膨大になってしまい訪問者が迷子になりやすくなっていました。そのため訪問者が欲しい情報に素早く導くためにWwb接客ツールを導入し、結果的に訪問者の数も増加しているそうです。

  • 通販会社のディノス・セシールは、ECサイトで顧客の買い物かごに入れたままになっている商品 (「カゴ落ち」というそうです) について、顧客に対してダイレクトメールを送付しています。カゴ落ちしている商品の内容をダイレクトメールで発送することにより、そのメールを受け取った顧客は購入率が20%もアップしているそうです。


記載した応用情報技術者試験の記事まとめ

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