MDMを有効的に活用する方法
マスターデータはデータマネージメントの「土台」
マスターデータはDIKWモデルのピラミット構造にも定義されているように、企業全体のデータ構造の全体像の土台として、社内の各業務横断的に共通で使用されるデータとなります。例えば、「取引先マスタ」、「製品マスタ」、「顧客マスタ」など一つの事業部のみで使用するのではなく、事業部横断的に使用するケースが多いのが特徴です。更にマスターデータを構成する要素として、「Reference Data=参照データ」も重要なマスターデータの位置づけです。
マスターデータが汚れていると、日々のトランザクションデータも、更にはその分析データもどんどん汚れていくことに繋がります。そうなると、日々の業務に悪影響をきたしたり、会社として誤った経営判断をすることにも繋がっていきます。それらを避けるために様々な企業は日々「データマネージメント」の施策を行っていますが、その「土台」となるのがマスターデータと言えるわけです。
マスターデータによくある課題3選
その1:データの粒度がバラバラ
データ活用を行う際にもっとも多くの課題として挙がるのが、データの粒度が揃っていないことのデータ分析軸を揃えることが困難だったり、データが重複していることで集計結果が合わなかったりすることです。
「誰が、いつ、どこで、何を、いくらで買ったのか」を分析するにも、「顧客軸」、「地域軸」、「製品軸」などが揃っていないと正確な分析はできません。加えてデータが重複しているような場合は、間違った集計結果を生んでしまいます。
その2:データの精度と鮮度が低い
例えば、顧客の住所・電話番号・メールアドレスなど、連絡先の精度や鮮度が低いと、正常に取引が行われなかったり、顧客からのクレームに発展するリスクも高まってしまいます。業務上重要なマスターデータについては、常に精度と鮮度が高い状態を維持することが必要となります。
その3:マスターデータの所在がバラバラ
同じ一つの会社であっても、各事業部ごとや業務ごとにシステムが個別最適化されていることで、マスターデータも各システムごとに個別に作られるケースは少なくありません。しかしながら、似て非なるマスターデータを各システムごとに作ってしまうことで、データを横断的に活用していくことや、企業全体最適の観点では非常に使いにくい状態になってしまいます。
MDMを有効的に活用するために必要なこと
マスターデータ管理の必要性は分かっていても、どのようにしてMDMを有効的に活用していけばよいかが分からないという声もよく聞きます。
MDMを有効的に活用するための4つのポイント
その1:マスターを整備する「目的」を明確に掲げる
自社もしくは事業部として「どのような目標を達成したいのか」、「どのような課題を解消したいのか」などを徹底的に議論をおこない「目的」を明確にします。これは直近の目標や課題に限らず、将来を見据えたものでも良いと思います。目的を見失うと、途中で何故マスターデータを整備する必要があるのかと自問自答したくなる場合があります。その時、当初の「目的」に立ち戻って考えることが必要です。ですので、必ず「目的」は明確かつ、誰にでも説明できる状態を作り上げることが必要不可欠です。
その2:業務視点で考える
企業におけるマスターデータの整備は、整備することがゴールではありません。あくまで、業務に対して効果を出すことがゴールになります。企業によっては業務自体が多岐に渡るケースも多く、どの業務に対して、どのような効果をもたらすのかを考えることが重要です。例えば販売業務であれば「売上アップ」や「顧客満足度向上」などもありますし、製造業務であれば「生産性向上」や「品質向上」などもあります。それぞれの業務視点で、抱えている課題やMDMがもたらす効果を考えることが重要となります。
その3:MDMを運用するための「体制」づくり
MDMを継続的な取り組みとして企業に根付かせるためには、継続的な取り組みができるような「体制」が必要です。MDMの整備で得られる効果はIT部門や業務部門だけでなく、経営層にまで広がります。そのため、その効果をより高めて持続させるためにも、「当事者」を横串でまとめた「体制」づくりが必要となります。ある企業では、物理的に「組織」として作っているケースもありますが、それが難しい場合は、一体化して動くバーチャルな「体制」でも問題ないかと思います。
その4:マスターデータの「運用マニュアル」の整備
マスターデータは企業内のデータの「1丁目1番地」といっても過言ではないと思っています。そのため、その時の思いつきや、特定の事業部だけの発言で、都度都度作り変える訳にはいきません。そこで必要になってくるのがマスターデータのルールブック、いわゆる「運用マニュアル」です。部門ごとに言葉の定義や、使用しているシステム、アプリケーションが異なることが多いため、長年運用するためのMDMの「運用マニュアル」を整備することを推奨します。ここでは、「共通言語化のルール」や、「集配信の方法」、「コードの読み替え方法」、「データのオーナー」などをマニュアル化しておきます。そうすることで、新しいメンバーが加わったり、組織が変更されたとしても後任者が「運用マニュアル」に従って、長期的にMDMの維持・運用ができるようになります。
最後に
MDMの活用範囲を最初から大きくする必要はありません。「小さく始めて大きく育てる」ことが、MDMを有効的に活用するためには必要なポイントとなります。従って、上述した「目的」や「利用範囲」についても、まずは小さい範囲で十分かと思います。そこで得られた成功体験をもとに、中長期的に「大きく」育てていき、多くの事業部や企業全体に効果をもたらすことが何よりも重要だと思います。