こんにちは!ファンリードDXP事業部AWSグループのMartimです!
今回は、2025年7月にAWSから発表されたばかりの革新的なAI統合開発環境「Kiro」について、詳しく調べた内容をまとめてみたので、みなさんとシェアしたいと思います!
目次
はじめに
近年、AI支援によるコード生成ツールが数多く登場していますが、多くのツールは「バイブコーディング」と呼ばれる手法に陥りがちです。
これは、開発者が感覚的にプロンプトを投げてコードを生成する手法ですが、生成されたコードの品質が低く、結果的にデバッグや修正に多くの時間を要してしまうという問題があります。
AWSは、この課題を解決するために「仕様駆動開発」というアプローチを採用した新しいAI統合開発環境「Kiro」を発表しました。
従来のAIコーディングツールとは一線を画すこのツールについて、詳しく見ていきましょう!
AWS Kiroとは
AWS Kiroは、2025年7月14日にプレビュー版として発表された「Agentic AI IDE」です。
KiroはVS Code(Code-OSS)をベースにして作られており、従来のAIアシスタントツールとは根本的に異なるアプローチを取っています。
主な特徴
仕様駆動開発(Specification-Driven Development)
Kiroの最大の特徴は、開発者が自然言語で要求を伝えると、AIが自動的に構造化された仕様書を生成し、その仕様に基づいてコードを作成する点です。
この仕様書は、AIと人間の開発者の両方が参照できる共通の設計図として機能します。
また、タスク一覧を作成し、順を追って進めてくれるため開発者と足並みを揃えて開発を行うことができます!
Agentic(自律的)な動作
「Agentic」という用語が示すように、Kiroは単純にプロンプトに反応するだけでなく、目標に向かって自律的かつ継続的にタスクを実行する能力を持っています。
一つのプロンプトに対して、3~5分程度の時間をかけて継続的にコードを生成・改善し続けることができます。
エージェントフック機能
開発チーム全体のコーディング標準を自動的に適用する「エージェントフック」機能を搭載しています。
例えば、新しいコンポーネントが作成された際に、単一責任原則に従っているかを自動的に検証し、Gitにコミットする前のチェックを行うことができます。
統合された開発環境
今年話題のModel Context Protocol(MCP)に対応し、専門的なツールとの連携が可能です!
また、テスト生成、ドキュメント作成、セキュリティチェックなどの機能が組み込まれており、開発からデプロイまでの全工程をサポートしてくれます!
価格体系
Kiroの価格設定については、現在注目すべき動きが起きています!
現在の状況(2025年8月時点)
Kiroはプレビュー期間中のため完全無料で利用できます。
しかし、予想以上の人気により、7月下旬にはユーザー数の制限と待機リストの導入が発表されました。
当初発表された価格プラン(現在は見直し中)
AWSは当初、以下の3つの価格プランを発表していました:
- 無料版: 月50回のエージェントインタラクション
- Pro版: 月額19ドル、月1,000回のインタラクション
- Pro+版: 月額39ドル、月3,000回のインタラクション
追加のインタラクションは1回あたり0.04ドルで利用可能とされていました。
価格見直しの経緯
2025年7月下旬にAWSは価格プランの詳細を一時的に削除し、「開発者の実際の使用方法により適合するようアプローチを見直している」と発表していました。
これは、Kiroが予想以上に開発者コミュニティで好評を博したことによる措置と考えられます。
使用できるアカウントとLLM
アカウント要件
現在、Kiroの利用にはAWSアカウントは必要ありません。
kiro.devから直接サインアップして利用することができます。
ただし、現在は待機リスト制となっているため、申し込み後に承認を待つ必要があります。
現在私はプレビュー版をAWS Builderアカウントで使用していますが、プレビュー版には一部制限があります。
対応言語とフレームワーク
KiroはVS Codeベースであるため、多くのプログラミング言語とフレームワークに対応しています。
インストール時には現在のVS Codeの設定と同期するかを聞かれるため、VS Codeの環境を整えて使っている人でも問題なくKiroに移行できます!
特に以下の技術スタックでの使用が推奨されています:
- フロントエンド: React、Vue.js、Angular
- バックエンド: Node.js、Python、Java
- データベース: PostgreSQL、MongoDB
- クラウドサービス: AWS各種サービスとの自然な統合
推奨されていなくても、上記以外の言語も対応はしていますので、好きなように開発を行うことができます。
使用しているLLMモデル
Kiroを起動すると、Claude3.7とClaude4.0が選択可能です。
今後Amazon Qとの統合や、BedrockからLLMを読み込む機能なども話題に上がっています。
(プレビュー版のため、変わる可能性もあります)
実際に使ってみた
セットアップ
実際のプロジェクト作成
- 使用したプロンプト
簡易的なECサイトを作りたいです。 既存のindex.htmlをEC2から公開できる構成にしてください。 テストのため、セキュリティリソースは極力減らしてください。
かなり抽象的に書きましたが要件がどうなるか見てみましょう!
(中身が多いため全て一部のみ掲載させていただきます)
- 生成された要件書の詳細
所々一応プロンプト通りにまとめてくれています!
そしてここからはこの要件を基に仕様書を作っていきます!
- 生成された設計書(仕様書)の詳細
プロンプトに書いたEC2もありますが、構成図や詳細なネットワーク構成まで書いてくれます。
また、テストと言ったからか、無料利用枠での構築を考えて作成してくれています。
結構頭よいのでは…?
- 生成された実行計画書(タスク一覧)
Terraformでの実装を前提としてくれているので、最初の「1. Terraformプロジェクト構造の作成」タスクですが、構築自体はCLIでも行うことができます。ただ、「CLIで~」や「AWSの〇〇で~」といった構築手段を指定したプロンプトを投げていない場合は、Terraformのコードを書いてくれるようです。
タスクの実行は画像内のStart taskをクリックすることでKiroがタスクを開始し、コードを書いてくれます。
HTML表示のほうが見やすくなっていますが、タスクの実行はできないため、mdファイルからクリックしてください。
タスク実行前に「〇〇フォルダを作成します」や「〇〇テストを行います」などこちらに許可を求めてきます。
その際にコードを修正することや、タスク実行中でもKiroに質問や修正のプロンプトを投げることで、反映しながらの実装を行ってくれますので、急な変更やエラー対応など迅速な対応が可能となっています!
ちゃんと質問にも答えつつ、前回の進捗から再開してくれています。
要件の作成~実際に使えるようになるまでに1時間程度で終わっています。
人が手動で全て行うよりもかなり早く終わったのではないでしょうか
使用感
開発での気づき
はじめに、仕様書やタスク一覧を作るのに1分もかかっていないことです。
小さい構成ではありますが、同じ仕様書などを作成するには人間では数十分以上かかると思います。
これを簡単なプロンプトから作成してくれるなら、開発スピード爆上がりですね!
次にコードの内容ですが、Kiro自身が調べながら書いてくれるので、AWS側とバージョンさえ合っていればかなり正確なコードを書いてくれます!
間違っていてもすぐ修正指示を出せばコードの修正もしてくれます。
ですが、簡単なコード一つにも30秒~1分以上といった時間がかかってしまうため、正式リリースでの改善ができればさらに有用なコードエディタになると思います。
(Claude Codeと併用することで爆速になるという噂も…)
mkdir test
最後にちょっと地味ではありますが、フォルダを整理してくれるところです。
個人的には一番うれしい機能で、Kiro自身がフォルダを作成し、その中に仕様書やタスクのmdファイルを入れてくれるのですが、自作コードや生成コードがちょっと散らかってきたなと思ったら、指示をするだけで必要なファイルをまとめて整理してくれます!
特に印象的だった機能
最初は特にプロンプトから予想して適切な仕様書を組んでくれることが大きく印象に残っていました。
タスク一覧から実行をしてくれることも驚きでしたが、仕様書自体書き忘れということがあったり、「この仕様ほんとにできるんだっけ…」ということもあったりで、作成が難航することは多いと思います。
ざっくりプロンプトにまとめるだけで完成度の高い仕様書を作成してくれることは開発者なら嬉しいと思います。
遭遇した課題や制限
一番はkiroの対話や仕様書作成がほぼすべて英語ということです。
プロンプトを日本語で書くとKiroも日本語で対話してくれるのですが、タスク開始時などは英語になってしまいます。
日本語の設定方法については後述させていただきます!
他にも、LLMの種類がちょっと少ないと感じたり、タスクの実行中にエラーが起きても先に進んでしまうこともあったので、正式リリースで修正されることを願って我慢しています!
kiroを日本語に対応させる方法
皆さんもKiroを日本語で使ってみたいと思いますので、設定方法を詳細に載せておきます。
まず、左側のKiroのアイコンからSteeringのファイルに移動します。
(既に作成済みのファイルがありますが無視してください)
インストールした直後では何もないため、「AGENT STEERING」の右の"+"からファイルを作成します。
今回はtest-Steering
としていますが、Japanese-configure
といったわかりやすい名前を付けてください。
次に作成したファイルに
日本語でドキュメントを作成してください
日本語で対話してください
といった内容を書けば設定完了です!
後はタスク実行や対話する際にKiroが自動でファイルを読み込んでからタスクを開始してくれます。
また、STEERINGを開いた状態で対話を開始し、Kiro自身にSTEERINGファイルを作ってもらうこともできます。
別ファイルを開いた状態や、実行中に設定を指示すると無関係の場所に作る可能性があるため、気を付けてください!
会社や個人で導入した場合の考察
個人開発者の場合
個人開発者にとって、Kiroはプロトタイプから本番環境への移行をサポートしてくれる結構強力なツールになりそうです。
従来のAIツールだと「動くけど品質がイマイチなコード」や「そもそも動かないコード」が生成されがちでしたが、Kiroの仕様駆動アプローチなら、もうちょっと構造化されて保守性の高いコードが期待できそうですね。
メリット:
- 一人でも本格的なアプリケーションの設計・開発ができちゃう
- ドキュメント作成が自動化されるので、将来のメンテナンスが楽
- テスト自動生成で品質の高いアプリケーションが作れる
注意点:
- 現在は待機リスト制なので、すぐには本格的に使い始められないかも
- プレビュー版なので、本格的な商用利用はちょっと慎重に
企業・チーム開発の場合
企業で導入を考える場合、Kiroのエージェントフック機能がかなり使えそうです。
チーム全体のコーディング標準を自動で適用してくれて、コードレビューの効率化も期待できます。
導入メリット:
- チーム間でのコード品質が統一される
- 新入社員の教育コストが削減できる
- レガシーコードのリファクタリングをサポートしてくれる
- プロジェクトドキュメントの自動生成・更新
導入時の検討事項:
- データセキュリティとプライバシーの考慮(AWSのデータ収集について)
- 既存の開発フローとどう統合するか
- チームメンバーのAIツール習熟度
- 本格運用開始時の価格体系の確認
さいごに
AWS Kiroは、従来のAI支援開発ツールとは違った「仕様駆動」というアプローチを採用した結構革新的なツールです。
Autopilot機能を使って完全にタスクを任せてしまえば、まるで開発者が一人増えたような感覚を味わえると思います。
(データ削除だけは気をつけてください…)
プレビュー版なのに予想以上に人気が出て、AWSが使用制限をかけるハメになったくらいなので、注目度の高さがうかがえます。
特に面白いのは、単純なコード生成ツールではなく、プロトタイプから本番環境への移行をサポートしてくれる「開発環境全体」を提供しようとしているところです。
エージェントフック機能でのコード品質管理、自動ドキュメント生成機能や、実際の開発現場で欲しい機能を包括的に提供してくれているのが良いですね。
現在は価格体系の見直し中で、正式版でどんな料金設定になるかはまだ分からないですが、プレビュー版のうちに一度試してみる価値は十分あると思います!
AI支援開発の新しい可能性を感じられるツールとして、今後の発展が楽しみですね。
みなさんもぜひ、次世代のAI開発環境を体験してみてください!
それでは、よきAWSライフを!
本記事の情報は2025年8月4日時点のものです。Kiroは現在もプレビュー版のため、機能や価格設定が変更される可能性があります。最新の情報については公式サイトをご確認ください。