柔道整復師のカルテ作業の負担
1. 1日の業務時間の内訳(AM9:00〜PM9:00勤務)
柔道整復師の業務は施術が中心だが、カルテ作成や事務作業も必要不可欠である。
ここでは、カルテ作業時間が1日の中でどれだけの割合を占めるかを試算する。
1日の業務スケジュール(概算)
時間帯 | 業務内容 |
---|---|
9:00 - 12:30 | 午前の施術(3.5時間) |
12:30 - 14:30 | 昼休憩(2時間) |
14:30 - 21:00 | 午後の施術(6.5時間) |
21:00 - 22:00 | カルテ記入・事務作業(1時間) |
合計 | 勤務時間 13時間 |
1日の業務時間(合計)
- 施術時間:10時間(午前3.5時間 + 午後6.5時間)
- 休憩時間:2時間
- カルテ記入・事務作業:1時間(実際には増減あり)
2. 1患者あたりのカルテ作業時間の試算
記録する文章量(手書きカルテの場合)
- 施術内容の記録(約50〜75文字)
- 症状の変化や経過(約25〜50文字)
- その他、施術中の気づき(約25文字)
- 合計:約100〜150文字
手書きでの所要時間(概算)
- 1分間に約50文字程度記入可能と仮定
- 100〜150文字の場合 → 約2〜3分
3. 1時間でカルテ作業が可能な患者数(概算)
1時間のうちに記録できる人数
- 1患者あたり2〜3分の記録時間
-
1時間(60分) ÷ 2〜3分
→ 20〜30人
1日あたりの患者数との比較
-
1日50人を診る場合
- 1時間では記録しきれず、20人分のカルテが未記入になる可能性
- 追加で30〜60分の時間が必要(業務終了が22:30〜23:00になる)
-
1日30人を診る場合
- 1時間で記録可能
- ただし、他の事務作業(会計処理・レセプト作成)もあるため、業務後の負担はゼロではない
4. 現状の問題点
- カルテ作成時間は1時間でギリギリ、患者数が多い日は足りなくなる。
- 施術時間が長いため、業務終了後にまとめて記入することが増える。
- 21時に施術が終わっても、カルテ記入の負担で帰宅が遅れることがある。
- 事務作業の負担が大きく、施術以外の時間が圧迫されている。
5. まとめ
- 勤務時間(AM9:00〜PM9:00)で施術に10時間を費やし、カルテ作業は1時間で対応。
- 1日30人なら1時間でギリギリ記録可能だが、50人の場合は追加時間が必要。
- 柔道整復師の業務負担の一因はカルテ作業の多さであり、効率化が大きな課題となっている。
紙カルテの問題
1. 紙カルテの物理コスト
1-1. 保管スペースの問題
- 1患者あたりの記録量が増えるほど、保管に必要なスペースも増大する。
- 施術所の規模によっては、一定の期間ごとに古いカルテを移動・整理する手間が発生。
- 法律上の保管義務があるため、すぐに破棄することはできず、長期保存が必要。
1-2. 書類管理の負担
- 紙のカルテは1つの施術所内でしか管理できないため、分院や別の施術所との情報共有が難しい。
- ファイリングのルールが統一されていないと、カルテを探す時間が増える。
- 経年劣化によるインクの薄れや紙の破損で、内容が読みにくくなる可能性がある。
2. 紙カルテの時間コスト
2-1. 記入時間の負担
- 1患者ごとに施術内容を記録する必要があり、手書きの場合は時間がかかる。
- 来院頻度の高い患者ほど、記録の量が増え、記入作業の負担が大きくなる。
- 修正や追加記録の際に、訂正線を使うため、書き直しの手間が発生。
2-2. カルテの検索時間
- 保管場所やファイリングのミスがあると、カルテを探すのに時間がかかる。
- 特定の期間の記録を振り返る場合、1ページずつ確認しなければならない。
- 1日30人の患者のカルテを探すだけで、業務全体に影響が出る。
2-3. レセプト作成の手間
- 手書きの記録を基に手入力でレセプトを作成するため、ミスのリスクがある。
- 計算ミスや記載漏れがあると、訂正作業が発生し、時間のロスにつながる。
- 保険請求時に確認が必要な場合、過去のカルテを1件ずつ探す必要がある。
3-1. 月額コストの詳細概算
項目 | 月額コスト(円) |
---|---|
カルテ用紙代 | 6,000 |
バインダー・ファイル代 | 1,280 |
文房具(ペン・インク) | 2,300 |
収納用具(キャビネット・書類ボックス) | 1,250 |
事務作業の人件費 | 65,000 |
合計 | 75,830 |
3-2. コストの具体的な内容
- カルテ用紙代:1患者あたり1.5枚 × 80人 × 10回の来院 × 5円 = 6,000円
- バインダー・ファイル代:1バインダー800円で50人分保管 → 1,280円
-
文房具(ペン・インク):
- ボールペン(100円 × 3本)= 300円
- インク(2,000円 × 1個)= 2,000円
-
収納用具(キャビネット・書類ボックス):
- キャビネット(30,000円を120ヶ月で分割)= 250円
- 書類整理ボックス(2,000円を2ヶ月に1個のペースで購入)= 1,000円
- 事務作業の人件費:1,300円 × 2時間 × 25日 = 65,000円
4. まとめ
- カルテの記入・管理にかかる時間と手間が大きな負担となる。
- 検索や修正作業に時間がかかり、施術以外の業務負担が増加する。
- スペース確保や書類管理のコストが積み重なり、経済的な負担も無視できない。
- 業務の効率化には、紙カルテのデジタル化が避けられない課題となっている。
人件費を除いたとしても月1万円弱はコストがかかっていると思うと驚愕だ。