1. レセプト電子化とカルテ電子化の共通点
レセプト(診療報酬明細書)の電子化とカルテ(診療録)の電子化は、どちらも医療業界におけるデジタル化の流れの中で推進されてきた。
これらの電子化には、以下のような共通の目的と背景がある。
1-1. 共通する目的
目的 |
レセプト電子化 |
カルテ電子化 |
業務の効率化 |
医療機関の請求業務を簡略化し、手作業の負担を軽減 |
医師や医療スタッフの記録作業を効率化 |
コスト削減 |
紙レセプトの管理・保管コストを削減 |
紙カルテの保管スペースを削減し、管理コストを低減 |
診療情報の標準化 |
全国的な統一フォーマット(電子レセプトフォーマット)を採用 |
医療情報のデジタル化により、診療の統一基準を確立 |
検索・参照の迅速化 |
デジタルデータで迅速に過去の請求履歴を確認可能 |
過去の診療情報を素早く参照し、診療の質を向上 |
データ解析・活用 |
医療費の適正化・不正請求防止に活用 |
診療データを蓄積し、診療の質向上やAI診断に応用 |
2. レセプト電子化の流れと影響
2-1. レセプト電子化の歴史
年代 |
主な出来事 |
1994年 |
「エックス線写真等の光磁気ディスク等への保存について」の通知で、医療情報の電子保存が部分的に認められる |
1999年 |
「診療録等の電子媒体による保存について」の通知により、電子カルテの使用が正式に認可 |
2000年 |
電子レセプトの試験運用開始 |
2008年 |
レセプトオンライン請求義務化(段階的に導入) |
2011年 |
レセプトの電子化率が90%を超える |
2024年~ |
マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認が本格運用開始 |
2-2. レセプト電子化のメリット
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請求業務の自動化:手作業による入力ミスを防ぎ、請求処理のスピードを向上
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審査の効率化:電子データによる自動チェック機能の強化
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保険者との連携強化:オンライン請求により、資格確認や支払処理が迅速化
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医療費適正化:不正請求の防止とレセプトデータの分析による医療費削減
2-3. レセプト電子化の課題
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小規模医療機関の対応:レセプト電子化のための設備投資が負担に
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プライバシーの確保:電子データの改ざん・不正アクセスのリスク
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審査基準の不透明性:支払基金・国保連の審査基準が明確でないとの指摘
3. カルテ電子化の流れと影響
3-1. カルテ電子化の歴史
年代 |
主な出来事 |
1999年 |
「診療録等の電子媒体による保存について」の通知により、電子カルテの使用が正式に認可 |
2005年 |
「e-文書法」の施行により、紙カルテをスキャナで電子化して保存することが可能に |
2010年 |
電子カルテ普及率が急増し、大規模病院の多くで導入が進む |
2020年~ |
クラウド型電子カルテが登場し、院外からのアクセスが可能に |
3-2. カルテ電子化のメリット
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診療情報の共有:医師・看護師・薬剤師間でリアルタイムに情報共有が可能
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業務の効率化:手書き記録の省略により、診療業務の負担が軽減
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医療安全性の向上:アラート機能により、薬剤の重複処方やアレルギー反応を防止
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診療データの活用:過去の診療履歴をAIが解析し、診断支援が可能に
3-3. カルテ電子化の課題
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導入コストの高さ:電子カルテシステムの導入費用が大きく、小規模クリニックでは負担に
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データの互換性問題:異なる電子カルテシステム間でデータのやり取りが難しい
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災害時のデータ保全:停電やシステム障害時に診療記録が閲覧できないリスク
4. レセプト電子化とカルテ電子化の相違点
項目 |
レセプト電子化 |
カルテ電子化 |
目的 |
診療報酬の請求・審査 |
診療記録の管理・共有 |
推進主体 |
厚生労働省・支払基金・国保連 |
厚生労働省・医療機関・ITベンダー |
導入の義務 |
2008年から義務化 |
義務ではないが、普及が進む |
影響 |
医療機関の請求業務を効率化、保険者の支払処理を迅速化 |
診療の質向上、医療の安全性向上 |
主な課題 |
システム導入コスト、審査の透明性 |
データ互換性、運用コスト |
5. まとめ
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レセプト電子化とカルテ電子化は、医療のデジタル化の流れの中で並行して進んできた。
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どちらも医療機関の業務効率化、コスト削減、診療情報の標準化を目的としている。
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レセプト電子化は「診療報酬の請求」に関わるもので、医療機関にとって義務化されている。
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カルテ電子化は「診療記録の管理」に関わるもので、まだ義務ではないが普及が進んでいる。
柔整師も電子施術録のガイドラインが作成されれば,レセプト電子化も進むのでは?