1. 柔道整復師の施術録の現状
現在、柔道整復師法には施術録の作成や保存に関する明確な規定は存在しない。
しかし、受領委任の協定においては、施術録の作成が求められている。
このため、施術録の作成・保存は実質的に義務とされているが、その形式(紙媒体か電子媒体か)についての明確な指針は示されていない。
1-1. 受領委任制度と施術録の義務
受領委任制度とは、柔道整復師が療養費(健康保険の適用を受ける施術費)を患者に代わって請求できる仕組みであり、この制度を利用するためには施術録の作成が必要とされている。
受領委任制度における施術録の義務
- 記録の保存期間:原則5年間
- 記録の内容:患者の氏名、傷病名、施術内容、施術日など
- 記録の提出義務:保険者の審査に応じるため、適切に保存する必要がある
ただし、この施術録が「紙」でなければならないという規定はない。
したがって、電子的な施術録も理論上は可能であるが、現在の行政の運用上では紙が一般的に使用されている。
2. 医科における電子カルテの歴史
2-1. 1999年以前の状況
1999年以前、診療録(カルテ)は紙媒体で保存するのが一般的であり、
法律上も電子カルテに関する明確な規定は存在していなかった。
- 医療法では診療録の作成と保存が義務付けられていたが、電子媒体での保存は法的にグレーゾーンであった。
- 一部の病院では独自に電子カルテを導入していたが、正式な法的根拠はなかった。
- 電子カルテの法的位置付けが不明確だったため、紙カルテの併用が求められる場合もあった。
2-2. 1999年のガイドライン制定
1999年に厚生労働省が「診療録等の電子媒体による保存について」の通知を発表し、
電子カルテの運用が正式に認められた。
1999年の通知のポイント
- 電子カルテの保存には**「真正性」「見読性」「保存性」** の3つの原則を満たす必要がある。
- 紙カルテと同等の法的効力を持たせるため、適切なシステム管理が求められた。
- このガイドラインにより、電子カルテが合法であることが明確化された。
2-3. 1999年以前は電子カルテは違法だったのか?
1999年以前は、電子カルテが明確に違法とされていたわけではないが、
法的な明確性が欠如していたため、ほとんどの医療機関は紙のカルテを使用していた。
- 電子保存が法律上認められていなかったため、裁判での証拠能力に疑問があった。
- 病院によっては独自の電子記録を使っていたが、紙カルテも併用する必要があった。
- 1999年のガイドライン制定により、電子カルテが正式に合法化され、普及が進んだ。
3. 柔道整復師の施術録の電子化に向けて
現在、柔道整復師の施術録に関しては、電子化に関する明確な規定がないため、
電子施術録の導入は各施術所の判断に委ねられている。
しかし、以下の理由から、施術録の電子化を検討する価値は十分にある。
3-1. 業務効率化の観点
- 手書きカルテでは検索・管理に時間がかかるが、電子カルテなら素早く検索可能。
- 紙の保管スペースが不要になり、管理コストが削減できる。
- バックアップを取ることで、紛失や劣化のリスクを回避できる。
3-2. 法的適用の可能性
- 電子施術録が法律で禁止されているわけではないため、導入は可能。
- 医科の電子カルテと同様に、「真正性」「見読性」「保存性」を満たせば問題ないと考えられる。
- 将来的に柔道整復師の施術録にも電子化のガイドラインが制定される可能性がある。
3-3. 施術録電子化のために考慮すべき点
- 改ざん防止の仕組み(電子署名・ログ管理など)を導入することが望ましい。
- 保険者や監査機関が電子施術録を受け入れるかの確認が必要。
- 医科の電子カルテガイドラインを参考に、適切なデータ保存体制を整える。
4. まとめ
- 柔道整復師の施術録は、受領委任の協定により作成・保存が求められているが、電子化に関する明確な規定はない。
- 医科では1999年以前は電子カルテの法的位置付けが不明確だったが、ガイドラインの制定により正式に認められた。
- 柔道整復師の施術録も、医科と同様に「真正性」「見読性」「保存性」を満たせば電子化が可能と考えられる。
- 電子施術録の導入により、業務の効率化や管理コストの削減が期待できる。
- 今後の法整備に向けて、現場レベルでの電子化の検討が求められる。
柔道整復師の施術録は電子的であっても良いのではないか?
しかし,実際に採用するまでも採用してからも,課題も多そうだ....