はじめに
定期的に注文をくれる既存顧客に、次のおすすめ商品を“さりげなく”伝えたい。
でも、毎回手動で考えるのは非効率ですし、営業感が強い提案はむしろ逆効果になることもあります。
本記事では、Salesforceのフローを用いて、以下の条件を満たす商品を商談ごとに自動選出し、帳票やメールに差し込む方法を解説します。
- 注力商品である
- 取引先が過去に購入していない
- 最近(過去n件)に紹介していない
こうした条件を組み合わせることで、営業が提案してくれるような動きを“システム側”で実現できます。
想定するユースケース
- 定期的に注文がある既存顧客に「次のおすすめ」をさりげなく伝えたい
- 専任営業がついていない中小顧客に、最小限の手間で販促したい
- 請書メールや帳票の余白を有効活用してアップセル・クロスセルにつなげたい
実装前に決めておく前提設計
この仕組みを動かすためには、商品と商談のオブジェクトに以下のカスタム項目を追加し、データの前提ルールを明確にしておく必要があります。
商品オブジェクト(Product2)
API名 | 項目ラベル | データ型 | 説明 |
---|---|---|---|
Featured__c | 注力商品 | チェックボックス | 今後優先的に提案したい商品にチェックをつける |
- 商品管理者が注力商品を選定して管理する(頻繁に入れ替えても構わない)
- このチェックがオンの商品のみ、提案候補として扱う
商談オブジェクト(Opportunity)
API名 | 項目ラベル | データ型 | 説明 |
---|---|---|---|
PR_Recommended_Product__c | おすすめ商品 | 参照(Product2) | フローによって自動で設定される提案商品 |
- この項目に設定された商品が、帳票・メールテンプレートで「おすすめ」として表示される
- 空欄の場合はテンプレート側で別の案内文(例:「ご要望をお待ちしております」)を出す
商品選定ロジックの整理
商品を提案候補とする条件は、次の3つです。
-
Featured__c = true
の注力商品であること - その取引先で過去に一度も購入されていないこと(OpportunityLineItemベース)
- 最近の商談(n件)で紹介されていないこと(過去の
PR_Recommended_Product__c
に存在しない)
上記をすべて満たす商品が1件でも見つかれば、それを商談にセットします。
なければ商談のおすすめ商品項目は空欄となり、テンプレート側で文面を切り替えます。
商品選定のロジック概要
目指すのは、「そのお客様に今、自然におすすめできる商品を1件だけ選ぶこと」です。
そのために以下の3つのフィルターを順にかけていきます:
- 注力商品(
Product2.Featured__c = true
) - 購入済み商品の除外(
OpportunityLineItem
) - 最近紹介済みの除外(商談の
PR_Recommended_Product__c
)
すべての条件を満たす商品がなければ、今回はおすすめしない(または要望募集のメッセージに切り替える)、という仕組みです。
次に、これをSalesforceフローでどのように実装するかを図とともに解説します。
フローの処理構成(概要)
1. レコードトリガーフロー(商談作成時)
2. 注力商品一覧を取得(Featured__c = true)
3. 過去の購入商品を取得
取引先に関連する OpportunityLineItem
をもとに、購入された Product2Id
を収集。
4. 未購入の商品を抽出
注力商品の中から購入済みの商品を除外して、未購入の商品リストを作成。
5. 未購入数からPR履歴の最大件数を算出
「未購入の商品数 − 1」を PRLimit
として計算(0以下の場合は処理終了)。
6. 商談履歴を取得(最大10件など、やや多めに固定で取得)
7. 商談履歴のループ処理で紹介済み商品IDを収集
ループ内で PR_Recommended_Product__c
を読み取り、PRLimit件まで収集する。
8. 未購入商品の中から紹介済商品を除外し、最初の1件を選定
該当商品があれば、商談にセット。なければ何もしない(空欄)。
メールテンプレートでの出力制御(例)
商品がある場合
--- おすすめ商品のご紹介 ---
「{!Opportunity.PR_Recommended_Product__r.Name}」の取り扱いを開始しました。
ぜひご検討ください。
商品がない場合
--- おすすめ商品のご紹介 ---
現在ご紹介できる商品はございません。
「こんな商品があれば…」というご要望がございましたら、ぜひお聞かせください。
まとめ
Salesforceのフローを使うことで、商品マスタと商談情報だけで“今このお客様に紹介すべき1件”を選び出し、自動で提案メッセージを生成できます。
帳票や定型文メールの「余白」にこそ、提案の種を仕込む価値があります。
ルールベースで販促を組み込むこの仕組みは、営業担当の負荷をかけずに提案機会を生み出す有効な手段となります。