Linux Advent Calendar 2024 4日目の記事です。
前作
1年半ほど前にも同様の記事を作成しました。
前作では Windows 環境を前提に記事を記載していましたが、本作では Linux であることを前提として記載しています。
翻訳作業
目次
- 翻訳する対象を決める
- 翻訳データの入手 (SVN を使用)
- 翻訳アプリケーションを設定 (今回の説明では Lokalize を使用)
- 翻訳を開始
- 提出
翻訳する対象を決める
本記事のタイトルは"アプリケーション"としていますが、ウェブサイトや Plasma などのソフトウェアの翻訳も可能です。
特に決めていない場合は、基本ソフトウェア (Plasma 関連、KDE System Settings, Discover, Dolphin, Konsole など) や知名度の高いアプリケーション (Krita, Kdenlive, Labplot など) をおすすめします。また、下記の翻訳の進行度も参考になるでしょう。
SVN のインストール
KDE では、翻訳データの管理で SVN というバージョン管理システムが採用されています。
バージョン管理の状態を維持しながら、翻訳データをダウンロードするため、svn
コマンドを利用するため、先にインストールしておきます。
# インストール
# Debian
sudo apt install subversion
翻訳データの入手
次は、翻訳データを実際にインストールします。
はじめに https://websvn.kde.org/trunk/l10n-support/ja/summit/messages/ にアクセスしてください。
次に、翻訳対象のページを開きます。今回は例として Filelight のページを開きます。
Filelight のページの上部に記載されている Anonymous SVN Url をコピーします。
ローカルで、次のコマンドを実行することで、翻訳データを入手できます。(翻訳データがダウンロードされるので、適当なディレクトリで実行してください)
svn co リンク
# 例:
# svn co svn://anonsvn.kde.org/home/kde/trunk/l10n-support/ja/summit/messages/filelight
翻訳データがダウンロードできているのが確認できます。
tree
# .
# └── filelight
# ├── filelight._desktop_.po
# ├── filelight.po
# └── org.kde.filelight.appdata.po
(今回は翻訳対象 (Filelight) のみダウンロードしていますが、全部 (svn://anonsvn.kde.org/home/kde/trunk/l10n-support/ja/summit/messages
) をダウンロードしても良いです)
翻訳ツールの設定
続いて、翻訳ツールの準備を行います。
今回は、KDE で一般的に利用されている Lokalize を紹介します。
(KDE では PO Summit という、gettext を拡張した仕様を利用しています。そのため、Lokalize 以外で翻訳する場合は翻訳 - 日本 KDE を参考にしてください)
インストールは Discover から簡単にできます。他の方法でもインストール可能です。詳しくはこちら。
ここからは Lokalize の設定について記載していきます。
まずは、Lokalize を開き、"設定"から "Lokalize を設定"を開きます。
私は"個人情報"の項目のみ設定しています。
上記のように
名前: <自分の名前>
メールアドレス: <自分のメールアドレス>
デフォルトの言語: 日本語 (ja)
デフォルトのメーリングリスト: kde-jp@kde.org
デフォルトの言語チーム: kde-jp
ローカライズされた名前: 日本 KDE
で大丈夫だと思います。他の設定は任意です。
(翻訳メモリやプロジェクトの設定は推奨されていますが、私自身使ったことがないので、今回の説明からは省きます)
翻訳作業
ついに、Lokalize でダウンロードした翻訳ファイルを開き、翻訳を行うことができます。
便利なショートカット
- 次の Fuzzy か未翻訳メッセージ: PageDown
- 次のメッセージ: PageDown
- 前のメッセージ: PageUp
(Fuzzy: 昔翻訳されたが、その後原文が変更されたため、再度翻訳が必要なメッセージ)
提出
翻訳データの提出は、メールで行われています。
ZIP にアーカイブ、またはクラウドドライブを利用し、日本 KDE のメール (kde-jp@kde.org
) 宛に翻訳データを送信してください。
(SVN の隠しファイルがあるので、ディレクトリごと ZIP にアーカイブしたほうがいいかもしれないです)
(過去のメールはアーカイブから閲覧できるので、他の人の提出方法を参考にできます)
議論と今後
SVN 廃止に関して (KDE 本部)
SVN は開発者にとっても翻訳者にとっても厄介なシステムの1つでした。これは、バージョン管理システムとしては Git が主流となった現在、SVN を使うのは時代遅れであると認識していたからです。
今まで、SVN から Git に移行することについて度々議論されてきましたが、ついに Akademy 2024 では、KDE/Plasma 7 まで SVN を継続できないという判断がなされました。(大串さんによる説明)
これにより、SVN から Git に移行することがようやく決定事項となったのです。(しかし、Plasma 6 がリリースしてまだ1年も立っていないですし、Plasma 5 と Plasma 6 の間が9年空いたため、結局数年間は変わらなさそうですが…)
翻訳方法変更の検討 (日本 KDE)
日本 KDE では度々 Web ベースでの翻訳について検討されています。
しかし、Web ベースはどうしてもレスポンスの悪さが目立つことや、本部が SVN を Git に移行してくれないと使えない (これに関しては、日本 KDE として対処できる範疇を超えているので厳しそうです) など、課題が多く、現時点では採用の予定はなさそうです。
最後に
KDE 流行らせたい♡