NodeJSのマスター・ワーカー・パターン解説

Posted at 2025-01-20

NodeJS は、JavaScript を基盤とした開発プラットフォームで、開発者が JavaScript を使用してサーバーサイドアプリケーションを作成できるようにします。NodeJS の重要な特徴の一つは、シングルスレッドかつイベント駆動モデルで、多数の同時リクエストを効率的に処理できる点です。このモデルにより、複数のスレッドやプロセスを必要とせずに高いパフォーマンスを実現できます。

マスターワーカーパターンを使用する理由

しかし、NodeJS のシングルスレッドモデルには以下のような制限があります。

CPU 集約型タスク：画像処理や暗号化/復号化などのタスクでは、シングルスレッドが他のリクエストをブロックし、パフォーマンスが低下する可能性があります。
エラーハンドリング：エラーや例外が発生した場合、シングルスレッドがクラッシュするとアプリケーション全体が停止する恐れがあります。
マルチコアの活用：シングルスレッドモデルでは、マルチコア CPU の性能を十分に活用することができません。

これらの問題を解決するために、NodeJS ではマスターワーカーパターン（またはクラスター・モード）を提供しています。この分散システムデザインパターンは、マスタープロセスと複数のワーカープロセスで構成されます。マスタープロセスがワーカーを管理・監視し、ワーカープロセスは特定のビジネスロジックを処理します。

マスターワーカーパターンの実装方法

NodeJS では、clusterモジュールを使用してマスターワーカーパターンを簡単に実装できます。このモジュールは、複数の子プロセスを作成し、それらを制御・通信するためのメソッドやイベントを提供します。基本的な使用手順は次の通りです。

clusterモジュールをインポートし、現在のプロセスがマスターかワーカーかを判定します。
マスターであれば、cluster.fork()メソッドを使用して複数のワーカープロセスを作成し、イベントをバインドして状態やメッセージを監視します。
ワーカーであれば、特定のビジネスロジックを実行し、process.send()を使用してマスタープロセスにメッセージを送信します。

基本的な使用例

以下は、clusterモジュールを使用した基本的な例です。

const cluster = require('cluster');
const http = require('http');
const numCPUs = require('os').cpus().length;

if (cluster.isMaster) {
  console.log(`マスター ${process.pid} が実行中です`);

  // ワーカーをフォークする
  for (let i = 0; i < numCPUs; i++) {
    cluster.fork();
  }

  cluster.on('exit', (worker, code, signal) => {
    console.log(`ワーカー ${worker.process.pid} が終了しました`);
  });
} else {
  // ワーカーは任意のTCP接続を共有可能
  // この場合はHTTPサーバー
  http
    .createServer((req, res) => {
      res.writeHead(200);
      res.end('ワーカーからの応答です！');
    })
    .listen(8000);

  console.log(`ワーカー ${process.pid} が開始しました`);
}

このコードでは、マスタープロセスがcluster.isMasterをチェックし、マスターである場合はシステムの CPU コア数分だけワーカーを作成します。各ワーカーはマスタープロセスの独立したインスタンスであり、それぞれが独自のメモリと V8 インスタンスを持ちます。ワーカーはhttp.createServerを使用して HTTP サーバーを作成し、リクエストの待ち受けを開始します。

ワーカーがクラッシュまたは終了した場合、exitイベントがトリガーされ、マスターがそのワーカーを再起動することが可能です。

高度な使用例：Nginx による負荷分散の統合

Nginx をリバースプロキシおよびロードバランサーとして使用することで、複数の Node.js プロセス間でリクエストを分散できます。

Nginx の設定例：

http {
    upstream node_cluster {
        server 127.0.0.1:8000;
        server 127.0.0.1:8001;
        server 127.0.0.1:8002;
        # ... その他のNode.jsプロセス
    }

    server {
        listen 80;

        location / {
            proxy_pass http://node_cluster;
            proxy_http_version 1.1;
            proxy_set_header Upgrade $http_upgrade;
            proxy_set_header Connection 'upgrade';
            proxy_set_header Host $host;
            proxy_cache_bypass $http_upgrade;
        }
    }
}