Redis の大きなキー(Big Key)問題とは
Redis の大きなキー(Big Key)問題とは、特定のキー(key)に対応する値(value)のメモリ使用量が非常に大きくなることで、Redis のパフォーマンス低下、メモリ不足、データの不均衡、マスター・スレーブ同期の遅延などの問題を引き起こす現象を指します。
どのくらいのデータ量が「大きなキー」と見なされるのか?
明確な基準はありませんが、一般的に以下の条件を満たす場合、大きなキーと見なされます。
- 文字列(String)型の値が1MB 以上のメモリを消費する場合
- 集合(Set、List、Hash、Zset)型の要素数が1 万件以上の場合
ただし、大きなキーの定義や判断基準は固定的なものではなく、Redis の運用状況やビジネス要件に応じて評価する必要があります。
例えば、高負荷かつ低遅延が求められる環境では、たとえ 10KB のキーでも「大きなキー」となる可能性があります。一方で、低負荷で大容量が許容される環境では、100KB が閾値になることもあります。したがって、Redis を設計・運用する際には、ビジネス要件やパフォーマンス指標に基づいて適切な閾値を設定することが重要です。
大きなキーが引き起こす影響
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メモリ消費の増加
大きなキーが大量のメモリを占有すると、使用可能なメモリが不足し、Redis のメモリ管理ポリシー(Eviction Policy)が発動する可能性があります。最悪の場合、メモリ枯渇により Redis がクラッシュし、システム全体の安定性が損なわれることもあります。 -
パフォーマンスの低下
大きなキーはメモリの断片化を引き起こし、Redis のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。また、大きなキーの読み取り・書き込み・削除操作には、通常よりも多くの CPU 時間とメモリリソースが必要となるため、システム全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。 -
他の操作のブロック
大きなキーに対する特定の操作が Redis のレスポンスをブロックすることがあります。
例えば、DEL
コマンドを使用して大きなキーを削除すると、その処理に時間がかかり、Redis が一定時間応答しなくなる可能性があります。これにより、他のクライアントリクエストが処理できなくなり、システムの応答速度やスループットに影響を及ぼします。 -
ネットワークの混雑
大きなキーを取得する際には大量のデータ転送が発生し、ネットワーク帯域を圧迫することがあります。
例えば、1MB のデータを持つキーがあり、それが 1 秒間に 1000 回アクセスされると、毎秒 1000MB の通信量が発生し、ネットワークに負荷をかける可能性があります。 -
マスター・スレーブ間の同期遅延
Redis がレプリケーション(マスター・スレーブ構成)を使用している場合、大きなキーが原因でデータ同期に遅延が発生する可能性があります。
これは、大きなキーが大量のメモリを消費し、マスターからスレーブへのデータ転送時に膨大なデータが流れるため、ネットワーク遅延やデータ不整合の原因となるためです。 -
データの偏り(スキュー)
Redis クラスタ環境では、大きなキーが特定のノードに集中し、そのノードのメモリ使用率が他のノードよりも大幅に高くなることがあります。
これにより、クラスタ全体の負荷分散が崩れ、maxmemory 設定に達した際に重要なキーが削除されるリスクが高まります。最悪の場合、メモリオーバーフローによるクラッシュを引き起こす可能性もあります。
大きなキーが発生する原因
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不適切なデータ設計
1 つのキーに大量のデータを格納するのではなく、複数のキーに分割すべきです。
例えば、全国のデータを都道府県ごとに34 個のキーに分割したり、市区町村ごとに300 個のキーに分割することで、大きなキーの発生を抑えることができます。 -
値の増加を予測できていない
データを無制限に追加し続け、削除や有効期限の管理を行わない場合、時間の経過とともに大きなキーが発生します。
例えば、有名人のフォロワーリストや人気コメントリスト などがこれに該当します。 -
不適切な有効期限設定
キーに適切な有効期限を設定しない、または長すぎる有効期限を設定すると、データが蓄積されて大きなキーが生成されます。 -
プログラムのバグ
例外処理の不足により、キーのライフサイクルが意図しない形で延長されると、値の肥大化につながり、大きなキーを生む原因となります。
大きなキーの検出方法
SCAN コマンドを使用する
Redis のSCAN
コマンドを使うと、データベース全体をブロックせずにキーを順次スキャンできます。
さらに、STRLEN
、LLEN
、SCARD
、HLEN
などのコマンドと組み合わせることで、大きなキーを特定できます。
bigkeys
パラメータを利用する
Redis CLI で以下のように—bigkeys
オプションを使用すると、各データ型で最も大きなキーをスキャンできます。
redis-cli -h 127.0.0.1 -p 6379 —bigkeys
Redis RDB Tools を利用する
オープンソースの Redis RDB Tools
を使用すると、RDB ファイルを分析し、大きなキーをスキャンできます。
例えば、1KB 以上のメモリを消費する上位 3 つのキーを特定する場合、以下のコマンドを実行します。
rdb —commond memory —bytes 1024 —largest 3 dump.rbd
続きは次のメッセージで送ります。
大きなキーの解決策
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キーを分割する
もっともシンプルな解決策は、1 つの大きなキーを複数の小さなキーに分割することです。
例えば、1 つのキーに格納していたデータを複数のキーに分散し、MGET
などのバッチ取得を活用することで、Redis のパフォーマンスを向上させることができます。 -
データ圧縮
文字列(String)型のデータを格納する場合、圧縮アルゴリズムを使用することで、値(value)のサイズを削減できます。
また、Hash 型を活用するのも有効な手段です。Redis の Hash 型は内部的に**圧縮リスト(ZipList)**を使用するため、単純な文字列型よりもメモリ効率が良くなります。 -
適切な有効期限を設定する
すべてのキーに適切な有効期限(TTL)を設定することで、データが不要になった際に自動的に削除されるようにし、大きなキーの蓄積を防ぐことができます。 -
メモリ管理ポリシーを有効にする
Redis には**LRU(Least Recently Used: 最近最も使われていないキーの削除)**などのメモリ管理ポリシーが用意されています。
これを適切に設定することで、メモリ使用量を抑えつつ、大きなキーが長期間残ることを防ぐことができます。 -
データの分散(シャーディング)
Redis Cluster を活用することで、データを複数の Redis ノードに分散し、1 つのインスタンスに過剰な負荷がかかるのを防ぐことができます。
これにより、1 つのノードに大きなキーが集中するリスクを低減できます。 -
非同期でキーを削除する
大きなキーを削除する際には、UNLINK
コマンドを使用するのが推奨されます。
DEL
コマンドはブロッキング処理(同期削除)ですが、UNLINK
はバックグラウンドで非同期にキーを削除できるため、Redis のレスポンスに影響を与えずに安全に大きなキーを削除できます。
まとめ
Redis における大きなキー(Big Key)問題は、パフォーマンス低下、メモリ使用量の増加、処理のブロック、マスター・スレーブ同期の遅延など、さまざまな問題を引き起こします。
本記事では、大きなキーの原因、影響、検出方法、そして効果的な解決策について詳しく解説しました。
データ構造の最適化、適切な TTL の設定、システムアーキテクチャの調整、非同期削除の活用など、適切な対策を講じることで、大きなキーの問題を防ぎ、Redis の安定性とパフォーマンスを向上させることができます。
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