19
6

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 3 years have passed since last update.

Kubernetes 1.20: SIG-API Machineryの変更内容

Last updated at Posted at 2020-12-15

はじめに

Kubernetes 1.20がリリースされました :tada:

今回のリリースでは数年前のKubeConで発表のあったリクエストの処理に優先度をつけるAPI priority/Fairness(KEP-1040)がbetaになったり、api-serverに識別子を付与するkube-apiserver identity(KEP-1965)の変更が入っているためか、api-server周りの変更が多い印象です。アップグレード前の注意点もいくつかあるので要チェックです。あと個人的にはHPAがPodではなくContainerごとに設定できるようになったのは嬉しい変更です。

それでは、今回もAPI周りを担当するSIG-API Machineryの変更点をCHANGELOGからピックアップします。(:pencil: がついた文章は、CHANGELOGの公式内容ではなく筆者の補足です)

:warning: Urgent Upgrade Notes (アップグレード前の注意点)

  • API priority/Fairness(APF)はbetaに昇格しました。APFを有効にしたv1.19のAPIサーバはv1.20+のサーバと共に動かさないでください。 (#96527)

  • v1.10で非推奨となったAPIサーバでinsecureポートを公開する機能が削除されました。insecureアドレスの--addressフラグと、--insecure-bind-addressもAPIサーバでは利用できなくなります。フラグ自体の削除はv1.24予定です。また、--port--insecure-portフラグは0のみ設定可能で、こちらもv1.24で削除されます。(#95856)

  • dual-stack Service(アルファ)が追加されました。alpha APIへの破壊的な変更となります。この変更では、dual-stack APIのwrt Serivceにおいて、1フィールドのみのipFamilyから、以下のの3フィールドになりました。 デフォルト値をハンドリングするため多くのユーザはこれに伴う変更は必要ありません。ユーザがdual-stackを要求しない限り、Serviceはsingle-stackです。また、これらの機能はfeature gateのIPv6DualStackから切り替えられます。 (#91824)

  • ipFamilyPolicy(SingleStack, PreferDualStack, RequireDualStack)

  • ipFamilies(アサインするfamilyのリスト)

  • clusterIPs

  • TokenRequestとTokenRequestProjectionがGAになりました。この機能では、Podのライフタイムに沿ったSecretから参照できないservice account tokenを生成できます。詳細は、こちらを参照してください。また、TokenRequestとTokenRequestProjectionのfeature gatesはv1.21に削除されます。この変更に伴い、APIサーバの以下のフラグが必須値となります。(#95896)

    • --service-account-issuer: クラスタのライフタイムに渡ってService Account Tokenの発行者を識別するための識別子。
    • --service-account-key-file: 1つ以上の公開鍵を含んだファイルを設定します。
    • --service-account-signing-key-file: Service Account Tokenの署名に利用する、秘密鍵を含んだファイルを設定します。kube-controller-managerの--service-account-private-key-fileと同じファイルを設定できます。
  • GCコントローラが不正なownerReferenceを受け取ったときの非決定論的な挙動を解決しました。今後はchildとownerオブジェクトのnamespaceが一致しない場合、OwnerRefInvalidNamespaceをreasonに持つEventへ記録します。kubectl-check-ownerrefefrencesツールを利用すると、アップグレード前にも不正なownerReferenceが存在しないかチェックできます。(#92743)

    • 名前空間スコープのオブジェクトのownerReferenceが、同じ名前空間に存在しない場合オブジェクトのuidを参照していた場合、ownerが存在しないものとしてそのchildオブジェクトは削除されます。
    • クラスタスコープのオブジェクトのownerRefefrenceが、名前空間スコープのオブジェクトuidを参照していた場合、ownerが解決できないとしてそのchildオブジェクトはGCによって無視されます。
      - :pencil: 該当のツールはkubernetes-sigsで管理されているkubectl-check-ownerreferenceです。
$ git clone https://github.com/kubernetes-sigs/kubectl-check-ownerreferences.git && \
  cd kubectl-check-ownerreferences && \
  make install
Cloning into 'kubectl-check-ownerreferences'...
...

$ kubectl-check-ownerreferences
No invalid ownerReferences found

# ~~適当にinvalidなownerreferenceを持ったobject作成~~

$ kubectl-check-ownerreferences
GROUP   RESOURCE   NAMESPACE   NAME                    OWNER_UID                              LEVEL   MESSAGE
        pods       default     hello-7d8df5b78-d64d6   a27035d1-7e84-41ef-92fd-5cbac4fafc0c   Error   no object found for uid
1 error, 0 warnings

:wastebasket: Deprecation (非推奨になったAPI)

  • EgressSelectorConfiguration APIのEgressSelectionタイプとして、controlplaneがサポートされました。Masterは非推奨となり、v1.22で削除される予定です。 (#95235)
  • v1alpha1 PodPreset APIとそのadmissionプラグインは削除されました。Pod作成時にPodの設定を書き換えたい場合は、Admission webhookを使ってください。 (#94090)

:earth_asia: API Changes (API周りの変更)

  • Serviceのタイプが既存のフィールドを必要としないものに変更されたとき、自動的にクリアされるようになりました。例えば、type=LoadBalancerからtype=ClusterIPに変更した場合、NodePortのアサインがクリアされます。これにより、ユーザは不要な値のクリーンアップに注意する必要がなくなります。 (#95196)
    • :pencil: Serviceのtypeを変えることは頻繁にないと思いますが、稀だからこそ気にすることが少なくなるのは嬉しい変更。
  • EndpointSliceにNodeNameフィールドが追加されました。この機能は、feature gateのEndpointSliceNodeNameから有効にできます。 (#96528)
    • 将来のリリースにおいてEndpointSlice topologyフィールドが非推奨となります。
    • EndpointSliceの"IP" addressタイプは、v1.17の非推奨を経て正式に削除されます。
    • discovery.k8s.io/v1alpha1APIは非推奨となりました。v1.21で削除されます。
  • BoundServiceAccountTokenVolumeを有効にした場合、クラスタ管理者はserviceaccount_stale_tokens_totalメトリクスから長期間のトークンに依存しているワークロード数をモニタリングできます。もしそのようなワークロードが存在しない場合、APIサーバに--service-account-extend-token-expiration=falseフラグを設定することで、長期間のトークンを無効化できます。(#96273)
    • :pencil: v1.13からalphaで入っている機能。最近はDay2意識してか運用に便利なメトリクスも追加されたり、新機能とセットで入ったりして便利ですね。
  • HPAが、コンテナのリソース使用量に基づいてスケールできるようになりました。(#90691)
    • :pencil: 前回のKubeCon Europeで発表のあった機能で、v1.19でギリギリ入らずv1.20でのリリースとなりました。 いままではPod単位のリソース消費量しか指定できなかったため、コンテナごとにリソースの消費傾向が違うとうまくスケールできないという問題点がありましたが、これが解決した形です。
  • kube-apiserverは、kube-apiserverの期限切れLeaseオブジェクトを削除するようになりました。この機能はfeature gateのAPIServerIdentityから有効にできます。これに伴い、kube-apiserverにidentity-lease-garbage-collection-check-period-secondsフラグが追加されました。 (#95895)
    • :pencil: 今回のchangelogにはこれ関係の変更が多いapiserver identity。現在は生存apiserverのリストをkubernetes endpointsのIPで識別していますが、これが有効になるとLearseオブジェクトで識別子が管理されるようになります。
  • kube-controller-manager: volume pluginで、localとloopbackアドレスからのアクセスを制限できるようになりました。この設定は --volume-host-allow-local-loopback=falseフラグを設定するか、--volume-host-cidr-denylistフラグで拒否するCIDRの範囲を指定することで有効にできます。(例: --volume-host-cidr-denylist=127.0.0.1/28,feed::/16) (#91785)
  • scheduler, controller-manager, cloud-controller-managerがLeaseLockを使うように修正しました。 (#94603)
    • :pencil: これらコントローラは今まで、endpointsleasesをresource lockに利用していました。
  • DNS-1123エラーメッセージにおいて、RFC 1123準拠ではないことを明示するようになりました。(#94182)
    • :pencil: この変更では、小文字のみを許可している旨をエラーメッセージに追加しています。
  • 注意: "failure-domain.beta.kubernetes.io/zone"と"failure-domain.beta.kubernetes.io/region"ラベルは非推奨になりました。代わりに"topology.kubernetes.io/zone"と"topology.kubernetes.io/region"を利用してください。プレフィックスのfailure-domain.betatopologyに変更すれば大丈夫です。(#96033)
  • Server Side ApplyがLabelSelectorフィールドをアトミックとして処理するようになりました。つまり、Selector全体は単一のwriterもしくはupdaterによって管理されることになります。(#93901)
  • 一つのLoadBalancer Serviceに対して、複数のprotocol値を設定できるようになります。この機能はデフォルト無効で、feature gateのMixedProtocolLBServiceから切り替えられます。 (#93130)
  • CSIDriverSpecに2つのフィールドを追加するため、feature gateにCSIServiceAccountTokenをが加わりました。(#93130)
  • ユーザはfeature gateを設定することで、cronjob controller v2を利用できます。このコントローラは、将来的なリリースでデフォルトのコントローラになります。(#93370)
    • :pencil: cronjobのGAに向けてコントローラv2がきましたね。全貌はKEP-19参照

:sparkle: Features (機能追加)

  • APIサーバが書き込みリクエストを処理する前に、storageversionsを更新するStorageVersionAPIがfeature gateに追加されました。この機能では、storage migratorによるビルドインリソースのバージョン移行が可能になります。この機能を利用するためには、internal.apiserver.k8s.io/v1alpha1 APIの有効かと、APIServerIdentityのfeature gateの有効化も必要です。 (#93873)
  • CRD: structural schemasにおいて、nullableになっていないmapフィールドがドロップされるようになりました。デフォルト値が設定されている場合はその値が設定されます。同じく、nullableではないリスト内にnullアイテムが存在している場合は、バリデーションに失敗します。(#95423)
    • :pencil: structural schemasの変更も着々と進んでいます。まだschemaを生成できてない(or違反している)プロジェクトがあれば修正を勧めたほうが良さそうです。
  • client-goのcredentialプラグインでは、現在のクラスタ情報をKUBERNETES_EXEC_INFO環境変数経由で渡せるようになりました。(#95489)
  • api-extensionsカテゴリが導入されました。このカテゴリでは、kubectl getなどでmutating admission configやvalidation admission config, CRDやAPIServiceを取得できます。 (#95603)
    • :pencil: こんなかんじ
$ kubectl get api-extensions
NAME                                                                     SERVICE   AVAILABLE   AGE
apiservice.apiregistration.k8s.io/v1.                                    Local     True        3m1s
apiservice.apiregistration.k8s.io/v1.admissionregistration.k8s.io        Local     True        3m1s
apiservice.apiregistration.k8s.io/v1.apiextensions.k8s.io                Local     True        3m1s
...
  • kube-apiserverが自身を識別するためにLease objectを維持するようになりました。この機能はfeature gateのAPIServerIdentityから切り替えられます。これに伴い、identity-lease-duration-secondsとidentity-lease-renew-interval-secondsの2つのフラグがkube-apiserverに追加されました。(#95533)
  • kube-apiserver: etcdのhealth checkのタイムアウト値を変更できるようになりました。今までと同じ動きとなるように、デフォルト値は2秒になっています。(#93244)
  • kube-apiserver: ローテートしたauditログファイルを圧縮するために、--audit-log-compressフラグが追加されました。(#94066)
    • :pencil: 有効にした場合gzipで圧縮されます。
  • 現在ベータのRootCAConfigMap feature gateがデフォルトで有効になりました。これにより、kube-controller-managerが"kube-root-ca.crt`を各namespaceのConfigMapとして公開するようになります。このConfigMapには、kube-apiserverとの接続を検証するためのCA bundleが含まれています。 (#96197)

:bug: Bug or Regression (バグやリグレッションの修正)

  • PVC StorageClassがツリー外のプロビジョナーによって既に更新されていた場合、ボリュームの拡張コントローラがPVCへのvolume.kubernetes.io/storage-resizerアノテーション付与を妨げる問題が解決しました。(#94489)
  • タイムアウトパラメータの処理は、既存クライアントの下位互換性を損なうため、1.20.0-beta.2でrevertされました。(#96727)
  • eventsのwatch cacheが無効化されました。(#96052)
    • :pencil: eventに対してwatchのcacheが有効になっていると性能に影響がでるため無効化されました
  • Dual-stack: dual-stackのfeature gateがデフォルト有効になった時に、nodeipamが既存のsingle-stackクラスタで互換性を持つように修正されました。 (#90439)
  • create/update/patchリクエストのowner referenceエントリに重複があった場合、APIレスポンスのヘッダに警告を載せるようになりました。クライアントは、このような重複したowner referenceを持つリクエストの送信をやめなければなりません。このようなリクエストは、早ければv1.24でリジェクトされます。(#96185)
  • SubjectAccessReviewクライアントのDelegatingAuthorizationOptionsにデフォルトタイムアウトが設定されるようになりました。(#95725)
  • JSON pathパーサがrangeがからの時にエラーになるバグが修正されました。(#95933)
  • client-goのprometheus metricsが正しくAPI pathを公開できるように修正されました。(#74363)
  • kube-apiserverによってレポートされるetcd_object_countsメトリクスが修正されました。(#94773)
  • CRDオブジェクトに関するkube-apiserverメトリクスで、verbsが間違って報告されていた問題を修正しました。(#93523)
  • k8s.io/apimachinery/pkg/api/meta.SetStatusCondition更新時にObservedGenerationを更新するように修正されました。(#95961)
  • CRDでarray typeにx-kubernetes-preserve-unknown-fieldsが付与されているschemaがSchemaErrorになる問題が修正されました。(#94888)
  • 時間が前後する場合、kube-apiserverがメモリリークする問題が修正されました。(#96266)
  • client-goにおいて、カスタマイズされたDial, Proxy, GetCert configを持つ新しいクライアントが、古いHTTP transportsを取得する可能性がある問題が修正されました。(#95427)
  • 1.17.0-1.18.5のAPIサーバが"Too large resource version"エラーから復帰しないreflectorのバグが修正されました。(#94316)
  • ポートを指定しなくてもipv6のPodにプロキシされる問題を修正しました。(#94834)
  • クラスタスコープのsubresource用のfake clientを生成するときのバグが修正されました。(#946586)
  • HTTP/2のconnection health checkは全Kubernetes clientにおいてデフォルトで有効になっています。必要に応じてHTTP2_READ_IDLE_TIMEOUT_SECONDSおよび、HTTP2_PING_TIMEOUT_SECONDS環境変数から設定を変更してください。HTTP2_READ_IDLE_TIMEOUT_SECONDSが0に設定されている場合、この機能は無効になります。(#95981)
  • ユーザが不正なタイムアウトをリクエストURLで指定した場合、そのリクエストはHTTP 400として中止されます。
    • ユーザが指定したタイムアウトがapiserverが許可する最大値を超える場合、このリクエストもHTTP 400になります。(#96061)
  • K8s.io/apimachinery: runtime.DefaultUnstructuredConverter.FromUnstructuredは、integerフィールドから型付きfloat値への変換を処理するようになりました。(#93250)
  • kube-apiserverはGA時に削除されるはずだったnon-alphaレベルのAPIを停止します。alphaレベルのAPIは、CIが壊れないよう提供を続けます。(#96525)
  • デフォルトのetcdサーババージョンが3.4.13に更新されました。(#94287)

:microscope: Other (その他の修正)

  • Namespace APIオブジェクトの作成のため送信されていたAdmissionReviewオブジェクトは、常にnamespace属性へ挿入されるようになりました。(以前は、Namespace作成のPOSTリクエストにおいて、namespace属性は空になっていました。また、server-side-applyのPATCHリクエストによってNamespace生成時に挿入されていました。) (#95012)
  • debian-iptables:buster-v1.3.0に更新しました。(#94733)
    • iptableは1.8.5を利用します
    • ベースイメージはdebian-base:buster-v1.2.0に更新しました
    • cluster/images/etcd: etcd:3.4.13-1のイメージをビルドします
      • 利用するイメージはdebian-base:buster-v1.2.0です。
  • client-goヘッダのログに(ログレベル9以上)マスクされたAuthorizationヘッダがのるようになりました。(#95316)
  • kube-apiserverにおいて、(1.16で非推奨になった)SelfLinkの伝搬を停止しました。(#94397)
  • etcdのクライアントをv3.4.13に更新しました。(#94259)
  • kubectl get ingressのデフォルトではnetworking.k8s.io/v1が返るようになりました。(以前返っていたのはv1.14で非推奨になったextensions/v1beta1です)非推奨になったリソースを取得するには、kubectl get ingress.v1beta1.extensionsのように明示的なバージョン指定が必要です。
19
6
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
19
6

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?