行動経済学を学ばなければならなそうな雰囲気をいち早く察知したため、必要になった時にアウトプットできるように、記憶しておきたい単語と概念をまとめます。
データ解析・並びに推計を行うに際して、合理的にはいかない消費者のくせをどのようにモデリングするかといったことに役立てる学問だと思っているので、フル活用できるようにせっせと勉強中です。
利用できるデータの種類が豊富な時に(データベースに大量のテーブルがある場合など)、バイアスを減らすことを目的として、労力をかけてでも頑張って取り出す必要性を認識する・もしくは同僚に説明するために、以下のような概念を活用できるのではないかなと思っています。
著作者が大竹文雄教授の「行動経済学の使い方」という本を主な参考文献としてまとめました。わかりやすい具体例や図なども記載されているので、是非買って読んでみることを強くお勧めします。
項目
■伝統的な経済学との違い
■ナッジとは(簡潔に)
■意思決定のクセの4つの観点の概要
- プロスペクト理論
- 確実性効果
- 損失回避
- フレーミング効果
- 保有効果
- 現在バイアス
- 先延ばし行動
- コミットメント手段の利用
- 社会的選好
- 利他性
- 互恵性
- 不平等回避
- ヒューリスティックス
- サンクコストの誤謬
- 意思力
- 選択過剰負荷と情報過剰負荷
- 平均への回帰
- メンタルアカウンティング
- 利用可能性ヒューリティクス・代表性ヒューリティクス
- アンカリング効果
- 極端回避性
- 社会規範と同調効果
- プロジェクションバイアス
■ナッジ設計のプロセス
伝統的な経済学との違い
伝統的な経済学では、合理的意思決定を行う完璧な人間を前提としていたが、
行動経済学では、必ずしも合理的に行動しない(バイアス)場合がありえる人間の意思決定を前提としている。
ナッジ
・ 日本語で「肘で軽く突く」という意味
・ 要は、自発的に人がより良い選択をすることができるように促すこと。
意思決定のクセの4つの観点の概要
プロスペクト理論
■ 確実性効果
・確実なものとわずかに不確実なものをから選択できる場合、確実なものを強く好む傾向のこと
例) 0%に近い確率(10%や20%とか)は実際よりも高く感じ、逆に100%よりの小さい確率(80%や90%とか)は実際よりも低く感じる
■ 損失回避
- 利得局面では、リスク(リスクが大きいとリスクプレミアムも大きいとする)よりも確実なものを好み、損失局面ではリスクが大きい方を選択する傾向。
- ただし、中にはリスク愛好的である人が存在し、上記とは逆の行動をする。
- 損失は負の価値の大きさは、利得の正の価値よりも大きいことから説明される。この時、価値の大きさは自分の現状を「参照点」としている。
- 参照点を他人の行動とすることで、「ピア効果」や「同調効果」として捉えることができる。
- もう一つの特徴として、利得も損失も増えていくことに対する感じ方は小さい。
- 例)株価の上昇で利確はできるが、逆の展開で損切りできない。
■ フレーミング効果
- 同じ内容であっても表現が異なることで、上記の二つの特徴に影響され、人々の意思決定が異なること
■ 保有効果と現状維持バイアス
- 保有効果で現状維持バイアスを説明できる。
例) 試供品を試させることで、その商品をより高く見積ってくれる
・現状維持バイアス
現状を変更することがいくら望ましい選択肢であったとしても、現状維持を好むこと
・保有効果
すでに所有するものを、高く見積もりガチ
現在バイアス
- 遠い未来により大きい利得があるとしても、より小さい利得であっても現在取得できることを選択する。
■ 先延ばし行動
今日からダイエットをする方が合理的だが、「明日から明日から」といって先延ばしにする行動
<= 現在バイアスで理解できる
■ コミットメント手段
自らの行動に制約をかけること(コミットメント手段)で、先延ばし行動を抑制する努力をする人(賢明な人<=>単純な人)がいる。
例) SNSで宣言することで友人に周知させるなどの手段
社会的選好
- 他者の利得への関心を示す選好
■ 利他性
- 他人の利得から効用を得ること
-
純粋な利他性
・他人の幸福度 => 自分の幸福度 -
ウォーム・グロー
・他人のためにしてあげる行動をとることそれ自体が、自分の幸福度に寄与する。
■ 互恵性
- 他人からの親切を親切で返すといったこと
-
直接互恵性: 直接恩を返す
-
間接互恵性: 他人を介して恩を返す
例)
・比較的高い給料 => 従業員はより熱心に働く
・医者や看護師の親身な対応 => 患者はより健康行動をとる
■ 不平等回避
- 不平等を嫌う性質
-
優位の不平等回避
ビルゲイツによる多額な再分配行為とか? -
劣位の不平等回避
他人の方が所得が高い時に感じる不満 => 何らかの行動; 嫉妬もしくは克服
ヒューリスティックス
- 「近道による意思決定」: 合理的な意思決定をするためにかかる費用(思考費用、情報収集費用)という限界があるため、直感的意思決定を利用してしまう。
以下では「人々の計算能力には限界がある」という視点から見たヒューリティクスを紹介。
■ サンクコストの誤謬
・回収できないはずの費用であるサンクコストをどうにか回収しようとする意思決定
■ 意思力
・疲労による意思決定能力の低下
■ 選択過剰負荷と情報過剰負荷
・ 選択肢や情報が多すぎることにより正しく評価することが難しくなる。 <= わかりやすく提示する必要性
■ 平均への回帰
・ ランダムの環境で、極端なことが起きると、次は平均的なことが起こりやすくなる。 => 因果関係は存在しない。
正規分布の平均値に近い数字の方が、両側にある数字よりも発生しやすいだけのこと。
例) 極端なことが起きると、何らかの介入を行うが、それが改善されたとしてもただ次に平均的なことが起こったに過ぎない。(あるある)
■ メンタルアカウンティング
・ 合理的な勘定と心理的な感情が異なること
■ 利用可能性ヒューリティクス・代表性ヒューリティクス
・ 「利用可能性ヒューリティクス」: 正しい情報よりも身近で利用しやす情報をもとに意思決定を行うこと
・ 「代表性ヒューリティクス」: 似たような属性から判断してしまうこと
■ アンカリング効果
・ 最初に与えられた数字などを「参照点」としてしまうこと
■ 極端回避性
・ 両端なものよりも真ん中を選ぶ傾向性
■ 社会規範と同調効果
・ 自分の参照点を多くの人もしくは社会規範に合わせることで、それらに合わせた意思決定を行う傾向性
■ プロジェクションバイアス
・ 意思決定が現状に強く影響され、将来を正しく予測できないこと
例) お腹を満たした後に行く買い物で、食材を必要量よりも少なく買ってしまった。 逆も然り。
これらが合理的意思決定からの逸脱の要因となりうる。
ナッジ設計のプロセス
いくつかやり方はあるが今回はOECD(経済協力開発機構)のBASICという包括的なツールキットを説明する。
公式ドキュメントはこちらです。
https://www.oecd.org/gov/regulatory-policy/BASIC-Toolkit-web.pdf
- B(ehavior): 観察によって問題・課題となる重大な行動の側面を特定する。
- A(nalysis): 行動経済学の視点で観察する。
- S(trategy): ナッジ戦略を考える。
- I(ntervention): 戦略の効果を評価するための介入実験をデザインする
- C(hange): 結果を反映する。
ナッジのチェックリスト(Nudges)
これらはThalerとSunsteinにより提案された6項目
■iNcentie: 対象者のインセンティブを把握する。
■Understand mappings: マッピングを理解する。
■Defaults: 可能であればデフォルトを活用する。
■Give feedback: フィードバックを与える。
■Expect error: 考えられるエラーを予期する。
BASICやNudgesの他にもEASTやMINDSPACEなどのチェックリストもあるので興味のある方は調べてみてください。