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ADR運用とデータプロダクト運用の関係

Last updated at Posted at 2025-08-08

背景と動機

キッカケとなった問い

ADRもデータプロダクトとして文脈ごとに分散して運用したら、データメッシュとして機能しないだろうか?

なぜなら、中央集権的な巨大モノリスに全ての設計書やADRを集める
「知識のモノリス」アプローチには、

情報が古くなる

運用しているうちに文脈が失われる

そして誰も更新しなくなる

といった問題があるように思えてならんからだ。

仮説

ADR(Architecture Decision Record)を、各ドメイン(文脈)が所有・提供する
「データプロダクト」の一種として分散的に運用したとしたら、
それはまさしくデータメッシュの思想そのものじゃないか!となったんです。

データメッシュの原則とADR運用の対応関係

データメッシュの4原則に、ADRの運用方法を当てはめて関係性を見て見ましょう。

①. ドメインによるデータオーナーシップ

各開発チーム(ドメイン)が、自分たちのサービスに関するアーキテクチャ意思決定(ADR)
のオーナーとなります。
その決定の背景やトレードオフを最も深く理解しているのは、そのチーム自身だからです。

②. Data as a Product

個々のADRは、他のチームが参照・利用するための 「知識プロダクト」 と見なされます。

したがって、ADRは

発見しやすく

理解しやすく

信頼できる

高品質なドキュメント情報であるべきです。

③. セルフサービスなデータプラットフォーム

全社横断のアーキテクトギルドやプラットフォームチームが、各チームが質の高いADRを容易に作成・公開・発見できるための 共通のプラットフォーム基盤 を提供します。

これには、ADRの標準テンプレート、ツール、ADRを横断検索できるポータルサイトなどが含まれます。

④. 連合的な計算ガバナンス

アーキテクトギルドが中心となり、ADRのフォーマット書式や、
「どのような決定をADRとして記録すべきか?」といった

組織全体としての標準やルール(ガバナンス)

を定めます。これにより、分散していても一貫性のある知識管理が可能になります。

このアプローチがもたらす価値

「ADRのデータメッシュ化」は、以下の価値に結び付くと考えられます。

情報の質と鮮度の向上

決定者自身が記録するため、情報の質が高く、常に最新に保たれる。

ボトルネックの解消

中央のアーキテクチャレビューボードの承認を待つことなく、各チームが自律的に意思決定を進められる。

これは7月に設計ナイトで発表した

ADRの承認フローを可視化し、ログが取れるようにしておこう

といってたあれです。

スケーラビリティ

組織やサービスの数が増えても、知識管理がスケールしやすい。

これが仮にモノリス構造なら、スケールしにくいのは自明です。

ここまでのまとめ

データメッシュが解決しようとする

情報の質と鮮度の向上

ボトルネックの解消

スケーラビリティ

といった問題と全く同じ種類の問題を、アーキテクチャ上の知識管理という領域で
解決できるのではないでしょうか?

つまり、

アーキテクチャナレッジ(知識)の質と鮮度の向上

知識のボトルネックの解消

知識のスケーラビリティ

に貢献するってこと。

これは学習する組織、ひいては進化的アーキテクチャではマストだと思います。

アーキテクチャ意思決定インテリジェンス

ここでの新たな問い

同じ時期に検討されたりしたADRを比較しながら、
外部環境という要因の中でどれがどれだけ自社サービスに影響を与えているのか?
などの考察もできるのではないか?

ようは、ADRを分析することで、
企業のアーキテクチャが、外部環境の変化にどれだけ俊敏に、そして効果的に対応できているか?を考察する「アーキテクチャ意思決定インテリジェンス」とも呼べる活動です。

仕組みとプロセス

①. 構造化されたADR

まず、ADRを単なるテキストではなく、決定日, 関連ドメイン,
決定の背景(例: 競合A社の新機能リリースへの対応)といったメタデータを持つ
構造化データとして蓄積します。

詳しくは、上記のADRの登壇記事を見てください。

②. 外部環境データとの統合

マーケティング部門や事業企画部門と密に連携し、

競合の動向

市場の変化

新たな規制やら法律

といった外部環境のイベントを、時系列データとして用意します。

この時には、PESTELやファイブフォースなどのフレームワークを使うと便利です。

③. 相関分析

データアナリストさんが、これらのデータを統合して分析します。

「競合A社が新機能をリリースした後、我々が関連するアーキテクチャ決定(ADR)を下すまでの平均時間はどれくらいか?」

「『コスト削減』を背景とするADRと、『パフォーマンス改善』を背景とするADRでは、
どちらが最終的な顧客満足度の向上に、より大きな影響を与えたか?」

「特定の規制変更に対応するために作成されたADRは、どのドメインに集中しているか?」

などなど。

必要な連携

この分析はエンジニアだけでは完結しません。

マーケターの責務

「なぜその時期にビジネス上の変化が必要だったのか、?」という外部環境の文脈を提供。

データアナリスト

ADRとビジネスKPIを統合し、相関関係や因果関係を統計的に分析。

アーキテクト

分析結果を解釈し、次のアーキテクチャ戦略や意思決定プロセスの改善に繋げます。

アーキテクチャWisdomへの昇華

このアプローチにより、ADRは単なる技術的な決定の記録に留まらず、企業全体の戦略的な学習と改善を促進するための、極めて価値の高い情報資産へと進化するのです。

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