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社内のリモートイベントを盛り上げるツールを作ったら予想以上に好影響があった話

Last updated at Posted at 2021-01-13

弊社ニジボックスには未経験から出発したエンジニアが多く在籍しています。
会社に入ってからITに触れ、案件を通して強く成長していくメンバーも多くそれはとても喜ばしいことです。

そんな中で少し思ったことは、仕事ばかりで力をつけ続けるとIT=業務だったりIT=案件といった考えに寄りすぎてしまうんじゃないかということです。
ITとはInformation Technologyの略でしかなく、必ずしも仕事ではなく趣味にも家事にもできるというのが私の考えです。
どうしたらIT初心者の方に業務ではないITを広めていけるかを日々考えながら働いています。

この記事では、業務ではないITを啓蒙するために作った1つのツールが思った以上に社内に良い影響をもたらした出来事を共有したいと思います。
そして、その出来事から感じたことを以下の三つの観点でお伝えしたいと思いました。

  • 教育について
  • 物づくりについて
  • 社内環境づくりについて

作ったツール

Slackと連携したリモートプレゼン支援ツール「Cheer」です。導入しやすいようにLPも用意しました。無料配布しています。
Cheer 公式LP
Kontam/Cheer github

Slackに投稿されたメッセージを収集してアイコンと共にスクリーン前面に表示します。
プレゼンターがテレビ会議ツールで画面共有する際に起動していれば、Slackに寄せられたコメントをリアルタイムに見ることができます。
見た目は違いますが、ニコニコ動画風にSlackコメントを表示するようなものといえばわかりやすいと思います。
conveyor_demo.gif

なぜ作ろうと思ったのか

上で述べた「仕事ではないITの形」を示したかったことが理由の1つです。

他の理由としては、「リモート会議においてリアクションを伝える難しさ」が理由です。
プレゼンに限らず、画面共有をしながらリモート会議で話をしている時、相手からの反応が薄くて話が伝わっているのかわかりにくくやりづらい思いをすることが多々あります。
これは、視聴者の「説明を遮りたくない」という善意によって起きてしまう悲しい問題です。チャットでリアクションするのは良い手段ですが、現状のビデオ会議ツールの多くは画面共有をしている人はチャットを確認しづらく、せっかくのリアクションが受け取れ無いことも多いです。
仮にチャットを画面表示してくれるビデオ会議ツールを私が見つけたとしても、会社標準で利用しているビデオ会議ツールに置き換えることは容易ではありません。

そこで、ビデオ会議ツールに依存せず、現在会社で利用しているSlackを活用してこの問題に対応したいと思ったのです。
ちょうど弊社内では70人程度の規模のリモートミートアップイベントが企画されており、そこでの初投入を目標に開発を開始しました。

作り始めた時は...

当然ながら誰も求めてはいないツールです。会社から依頼されて作るわけではありません。
リモートミートアップイベントの運営会で私が「コメント表示ツールを開発する!」と言い出して開発を開始しました。
使える期間は1ヶ月半程度。個人で制作するフリーソフトの扱いなので、業務時間は使っていません。

Google Meetsのチャット機能でもある程度補えるものなので他の運営メンバーも応援してくれてはいたものの、開始当初はそれほど期待されてなかったと思います。
Web 1280 – 1.png
上の画像は開発過程の物です。画像の下側にある4つの箱が開発中のコメントツールによるアウトプットです。
実際にツールを動かした様子を考えてみても、些細なことでバグが起きたり起動するにも手間がかかったりと穴だらけです。
この段階ではあまり見栄えがするものではなく、フィードバックを求めてメンバーに見せたときもあまり良い反応ではありませんでした。

個人の物づくりにおいて一番厳しい時期かもしれません。
ですが、開発過程とはそういうものと割り切って製作を進めていきました。

いざ実戦投入

嬉しいことにデザイナーさんから意見をもらえる機会もあり、ブラッシュアップを繰り返してプロトタイプよりも格段に良い仕上がりになりました。
初投入したイベントの模様は弊社Wantedlyの記事に書かれています。
4職域80名以上がつながる!メンバー共創のミートアップイベント開催!

image.png

コメントが画面に表示されることで、登壇者がコメントに対して反応することもできますし双方向のコミュニケーションが生まれました。
自分の投稿したメッセージが配信の上に乗ることで視聴者もイベントに参加している時間が得られ、以前よりも積極的にコメントしてくれるようになったと思います。

盛り上がったのは嬉しいことでしたが、それ以上に重要だと感じたのは社員が自社イベントに向けた新しい仕組みを作ったという事実ではないかと思いました。
イベントの司会も兼ねていた私は当然「このツールは私が作りました!!」とアピールしたわけですが、その時の反応がすごく良かったを覚えています。
後々でも言われたのが「自分たちで作るという発想がなかった」「そんなことが可能だと思わなかった」という声です。自作ツールによって自分たちでソリューションを切り開くことを例示できたようです。
メンバーの視野が広がり、可能性が広がった瞬間だと思います。予想以上の好影響でした。

広がる盛り上がり

このツールは私が思っていた以上に好評をもらえました。
各グループで実施しているリモートのプレゼン型イベントで「是非使ってみたい!」と声をかけてもらえるようになりました。
first.png

嬉しいことに、1グループだけではありません。
third.png

使ってもらった結果、イベントは大いに盛り上がったとのことで私としても大満足です。
second.png

声をかけてくれた人たちは、交流はあったものの普段一緒に業務をする人たちではありませんでした。
ツールを開発したことをきっかけに他グループのLT会に出席させてもらえたりして交流を増やすことができました
また、コメントツールが導入されたことで参加者を増やすことが会の盛り上がりに繋がりやすくなり、呼べそうな人は呼んで行こう!という動きも高まったような気がします。

リモート会議が盛り上がればいいと思って作ったツールでしたが社内の交流まで増やせるとは思っておらず、予想以上の好影響でした。

さらに思いがけない展開

なんと、社外向けのリモートカンファレンスでも使いたいというオファーをいただきました!
business.png

いずれは一般公開も視野に入れていたものの、まだまだエンハンス過程だったので流石にこれは驚きました。

イベントの様子はYoutubeの弊社チャンネルのアーカイブとして残っています。
Youtube - BUSINESS&CREATIVE Online vol.3「大規模メディアにおけるWeb開発の最前線」
B&C.png

弊社外の人から「コメント流れるのがすごい」といったメッセージをいただけたこともあり、とても嬉しかったです。
Web制作がメインでエンジニアリング案件がやや少ない弊社ですが、技術力をアピールすることができたのではないでしょうか。

また、自社のイベントということで弊社の社員も多くこのイベントを視聴していました。
他部署に対するフロントエンドグループの実力のアピールとなり、一緒に働く上での信頼に繋がれば良いなと思っています。

伝えたいこと ~ 教育で大事にしていること ~

この記事で伝えたい事は自慢話だけではありません。こういった活動は新人研修、後輩育成において重要なことだと思っています。

  • 「勉強してね」ではなく背中を見せる。勉強したら何ができるようになるかを示す。
  • 「相談してね」ではなく背中を見せる。自分がどれほど頼りがいのある相談相手であるかを示す。
  • 「共有してね」ではなく背中を見せる。まずは自分の頑張りを共有し、レスポンスとして頑張りを共有してもらう。

教育はギブアンドテイクだと私は考えています。「やってやって」ばかりではこちらの要求が膨らむばかりで新人は辛くなっていく一方です。
「一緒に頑張ろう」の姿勢を忘れず、今後も「仕事だけではないITの形」を示していければ良いなと思っています。

今回私が背中を見せた影響か(そう信じたい)、「自分も何か役立つものを作ってみよう」と物づくりを宣言しているメンバーも見かけました。
また、社内で好評をもらえているこのツールがメンバーの勉強の延長線上にあることを強調することで、モチベーションを駆り立てるようなサンプルにもなってくれていると思います。
予想以上の好影響です。

とはいえ、いざ背中を見せていこうと思っても個人でソフトを開発するのは負担が大きすぎます。もっと小さな方法で背中を見せていくのが良いでしょう。
ブログ記事を書くのも1つの方法です。社内LTに登壇するのも効果的でしょう。
教育対象のメンバーに取り組んでほしいことに、まずは自分が取り組んでみるというのが大切なことだと思います。

伝えたいこと ~ 個人でモノを作る時に大切なこと ~

私のツールを見て、社内でも自作ツールに興味を持ってくれるメンバーが何名かいました。
また、この記事を見て「自分も何か作ってみよう!」と意気込んでくれる方もいらっしゃるかもしれません。
そんなこれから個人でのモノ作りにトライしていく方々に一番伝えたいことは**「過程の醜さを受け入れる」ことの大切さ**です。

今でこそ、最終形となって人前に出せるようになった私のツールですが、上で書いたように過程は醜いものでした。
事あるごとにバグる、機能が不十分、導入が大変、デモをしてもパッとしない 制作過程のツールとは大抵そのようなものでしょう。
開発中は、そんな醜いツールと長い期間向き合い続けなければなりません。
モクモクと開発することはいわゆる「リア充」と真逆な物とカテゴライズされがちな時間の過ごし方ですから、それに苦痛を感じる人も多いことでしょう。

その醜さに直面したとき、「こんなの自分のやりたいことじゃない!」と安易に投げださずにいて欲しいと思います。
開発を初めるときに描いた華やかな完成形を常に頭に思い浮かべ「今はまだ途中だから」と醜さを受け入れることができれば、きっと完成までやり切ることができるでしょう。

伝えたいこと ~ メンバーの自発的な学習を促進するために ~

「エンジニアたるもの仕事だけでなく個人でも勉強すべき!」という論をブログなどで時々見かけます。
そこの賛否に関してここで述べるつもりはありませんが、メンバーに自発的に学習してもらえるような環境を作ることができれば会社の戦力は大きく向上することでしょう。

私がこのツールを作り上げられたのは、自作ツールを受け入れてくれて、面白がってくれる会社の雰囲気があったからだと思っています。
誰も興味を持ってくれなければ作ろうとすら思わなかったでしょう。

自主学習を促進するのに大切なことは以下のシンプルなことだと思います。

  • メンバーの取り組みを面白がる
  • メンバーの成果物を積極的に活用する

「やって」と口で言うよりも、やってもらえるような環境作りができればきっと自主学習にも興味を持ってもらえると思います。

終わりに

良い影響があったといろいろ書きましたが、まだまだ課題は山積みです。
今回作ったツールをさらにブラッシュアップして社外の人にも使ってもらえるくらい良いツールに仕上げればさらに大きな背中を見せることができます。
やり切ったと思わず、今後も個人の活動を続けて自分自身のパワーアップと業務ではないITの啓蒙を重ねていきたいと思います。

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