テレワークの広がり

コロナ禍をきっかけにテレワーク(リモートワーク)が急速に広まり、柔軟なライフスタイルや働き方が普及するのと同時に、コミュニケーションのやり方など、組織内で問題も散見されています。
総務省のレポートによると、2020年4月で東京都におけるテレワーク実施率は49.1%と、ほぼ半分という数値が出ています。コロナ収束後もテレワークを実施したいか、という質問に対しては合計で62.7%が「そう思う」か「どちらかと言えばそう思う」と回答しています。
またZoomが発表したデータによると、2020年4月の時点で1日あたりのWEB会議参加者人数が3億人を突破するなど、テレワークが普及すると同時にWEB会議によるコミュニケーションが主流となってきています。しかし、同時にテレワークで様々な問題も浮き彫りになってきています。
テレワークにおけるコミュニケーション不足の課題

コミュニケーションがとりづらい
テレワークをしているチームの場合、コミュニケーションはテキストか、WEB会議によるものが大半でしょう。対面でのコミュニケーションが制限されるため、どうしても誤解や不安が発生しがちです。
株式会社スタッフサービス・ホールディングスが実施した調査によると、若手社員100名のうち38%は「上司や先輩がどう思っているかわかりづらい」と回答するなど、相手の感情や考えを理解することに苦労していることが伺えます。
また同調査では、先輩社員の32%が「一方通行のコミュニケーションになっていないか不安」と回答しています。若手社員が聞きづらい、相談しづらいと感じているのと同時に、先輩社員は自分からだけのコミュニケーションになっていないかを心配していることがわかります。
連帯意識を持ちにくい
マーケター、エンジニア、デザイナー、セールス、人事など様々な部署の人が一同に集って働いていたり、自分の席から役員が見えたりするオフィスの環境に比べ、テレワークだと自宅で物理的に一人でいることが多いでしょう。
NTTの調査では、2022年には60%以上の方が「社員が連帯感をもって働いている」と回答しています。この割合は増えてきており、ポジティブな方向にあるとはいえ、逆にいえば40%は連帯感を感じていないということでもあります。
勤怠とモチベーションを把握しにくい
オフィスで働いている場合、来社時刻と退社時刻を打刻することで勤怠管理を行うことができます。しかしテレワークの場合、何時から何時まで働いているのか、気を付けないと働いている本人ですらよくわかっていないことがあります。ましてや、マネージャーや上司は部下がどの程度のワークロードをこなしているのかがよくわからなくなりがちです。
また顔が見えないことから、チームメンバーがどの程度モチベーションを保てているのかも把握しづらい環境になっています。オフィスの場合、ミーティング時やちょっとした立ち話をして元気そうかどうかを確認することができますが、テレワークではちょっとした立ち話などはしにくくなり、把握しづらくなってしまいがちです。
ツールを使いこなせない
エンジニアやIT業界で勤務している人であれば問題ないことが多いと思われますが、テレワークでは様々なITツールを利用する必要があります。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社が発表した「大手企業のビジネスチャットツールの利用状況調査(2019年)」によると、44.5%の回答者が「チャットツールを使いこなせない人がいる」と回答しています。テレワークでは実際にはチャットツールのみならず、Google Driveのようなファイル共有システムやZoomなどのWEB会議動画ツールをうまく使いこなす必要があります。
セキュリティ対策がしづらい
テレワークでは、より個人で利用している携帯電話やインターネット回線を仕事に利用する必要が出てきます。オフィスなどでは安定していてセキュリティ対策が万全なインターネット回線があるとしても、テレワークでセキュリティを万全にすることは容易なことではありません。
テレワークのコミュニケーション不足に対する動画での工夫・対策の事例

テレワークでは様々な問題が発生しますが、それらのいくつか、特にコミュニケーションに関しては動画ツールを利用することでうまく対策をすることができます。
一般的にはZoomを筆頭とする同期型(相手と自分が同時に電話会議をしコミュニケーションをする形式)のWEB会議ツールがよく使用されていますが、実は非同期型(動画を投稿して相手に共有し、相手が見たい時に見てもらう形式)の動画ツールもコミュニケーションにおいて非常に有効です。
非同期型の動画ツールには米国で生まれたPanopto(パノプト)が業界をリードしていますが、Kaltura、Microsoft Office 365 Managerなどもあります。ここでは、Panoptoを利用してコミュニケーション不足対策をした事例を紹介します。
10,000件以上の動画資産を蓄積した株式会社アシスト

アシスト社は、コロナ禍の中でも、人とのつながりを希薄化させないための新たなコミュニケーション手段を模索していました。
そんな中で、動画を自由に扱え、同時にプレゼンテーションや会議などの動画を資産として蓄積できるPanoptoの存在を知り、会社として利用してみることにしました。
その結果、合計で12,000本以上の動画が年間にアップロードされ、1人あたり平均347時間以上の時間、動画を視聴しました。各従業員は毎日平均1時間以上動画を視聴しており、セミナーやプレゼンテーションの学習コストを大幅に削減することができました。
デジタライゼーションを推進する日本郵船
2021年10月、日本郵船株式会社は最新のデジタル技術を活用して既存事業の効率化と市場の創造に取り組む「両利きの経営」の一環として、Panoptoの活用を始めました。
現在も1年間の有償トライアル期間中ですが、高精度の字幕機能、容易な動画編集機能、ユーザー権限管理などといった機能が高く評価されています。タウンホールMTGをストリーミング動画配信したり、動画による社内研修などに活用されています。
動画を資産化したオークネット
オークションビジネスを手がけるオークネットは、マーケティング目的で以前より動画を作成していましたが、あまりにも大量の動画が溜まりすぎて、後から見たい動画を検索することが困難になっていました。
そこでPanoptoの活用を開始した結果、誰もが簡単に動画を作成・共有・編集できるようにしながら、堅牢な動画管理体制をしくことができました。またテキストでは伝わりにくいビジュアルや音声を含めたノウハウの継承も行われています。
まとめ
リモートワーク時代には、テキストでのコミュニケーションやZoom会議が増えたのにも関わらずコミュニケーション不足に悩む人が現れてきています。非同期型通信の動画によるコミュニケーションは興味深いと思い、今回記事を書かせて頂きました。