2008年9月16日の日記にも書いたが、日本でA2判・A3判として使われている紙のサイズは、18世紀末にフランスで使われていたGrand registre・Moyen papierと呼ばれる紙のサイズに由来する。たとえば、フランス共和暦13 Brumaire an VII (1798年11月3日)公布の法律2136号《Loi sur le timbre》には、以下の6種類の紙のサイズが規定されていた。
これらのうち、Grand registreは0.4204m × 0.5946m = 0.2500m2で、現在のA2判である。Moyen papierは0.2973m × 0.4204m = 0.1250m2で、現在のA3判である。
これらの紙のサイズを、ドイツ工業規格DIN 476「Papierformate」(1922年8月18日制定)に持ち込んだのは、Walter Porstmannである(cf.《Normung in den Graphischen Gewerben》 Klimschs Jahrbuch, Bd.16 (1921/1922), S.126-132)。A0を1m2、A1を0.5m2、A2を0.25m2、A3を0.125m2、…という面積に設定したことから、Grand registreがA2、Moyen papierがA3になったわけである。一方、Friedrich Wilhelm Ostwaldが提案した紙のサイズ(cf. Wilhelm Ostwald: Sekundäre Weltformate, Brücke, 1912)は、DIN 476ではB判(Reihe B)・C判(Reihe C)として収録された。ただし、Ostwaldの提案も完全なオリジナルというわけではなく、B3はフランスのGrand papier、B4はPetit papier、B5はDemi-feuilleである。つまり、フランスの6種類の紙のサイズのうち、Effets de commerceを除く5種類が、いずれもDIN 476にそのまま採用されている。
ちなみに、日本標準規格第92号「紙ノ仕上寸法」(1929年12月4日決定)は、A判はDIN 476を踏襲しているものの、B判はDIN 476より少し大きい。ドイツのB0が1.4142m2なのに対して、日本のB0は1.5m2である。その後、A判とドイツのB判は、ISO/R 216「Trimmed sizes of writing paper and certain classes of printed matter」(1961年11月勧告)で国際規格となったが、日本のB判は国内規格のままである。