『南琉球・宮古語 池間方言辞典:西原地区版』(国立国語研究所, 2024年3月)を読んでいたところ、「っゔぁがんまりー あぱらぎ ひとぅー みーや みーん」という面白い例文を見つけた(p.589)。
どうしてこの例文が「んみ」のところにあるのか謎なのだが、Universal Dependenciesで書けるかどうか、検討してみよう。まずは単語長とLEMMAだが、これは『南琉球・宮古語 池間方言辞典:西原地区版』の例文である以上、この辞典自身に接地するのが安全だろう。とするとXPOSも、この辞典から取ることになる。
「っゔぁ」は【代名詞】(p.259)、「が」は【助詞】〘格助詞〙(p.109)、「んまりー」は「んまり」【接尾辞】(p.588)と「い」だが、この「い」は適切な見出しが見つからない。「んまい」【動詞】(p.586)の連用形も考えたが、どうも違うようだ。次の「あぱらぎ」も、たぶん【形容詞】だが見出しが見つからない。「ひとぅー」は「ひとぅ」【名詞】(p.405)と「う」【助詞】〘格助詞〙(p.71)、「みー」は【動詞】(p.485)、「や」は「あ」【助詞】提題(p.1)、「みー」は【補助動詞】(p.485)、「ん」は【接尾辞】(p.569)。よし、Universal Dependenciesで書いてみよう。
# text = っゔぁがんまりー あぱらぎ ひとぅー みーや みーん
1 っゔぁ っゔぁ PRON 代名詞 _ 3 nmod _ SpaceAfter=No
2 が が ADP 助詞 _ 1 case _ SpaceAfter=No
3 んまりー んまり PART 接尾辞 _ 5 nmod _ _
4 あぱらぎ あぱらぎ ADJ 形容詞 _ 5 amod _ _
5-6 ひとぅー _ _ _ _ _ _ _ _
5 ひとぅ ひとぅ NOUN 名詞 _ 7 obj _ _
6 う う ADP 助詞 _ 5 case _ _
7 みー みー VERB 動詞 _ 0 root _ SpaceAfter=No
8 や あ ADP 助詞 _ 7 mark _ _
9 みー みー AUX 補助動詞 _ 7 aux _ SpaceAfter=No
10 ん ん PART 接尾辞 _ 9 advmod _ _
この手法なら、LEMMAやXPOSに悩まなくてもいいはずなのだが、それでも「んまりー」や「あぱらぎ」で微妙に困ってしまった。結果として「んまりー」へのリンク元に、「あぱらぎ」「ひとぅ」「みー」のどれが適切なのか、私(安岡孝一)としては自信がない。さて、どうしたものかな。