仲原穣『言語地図にみる宮古語の地域差』(沖縄国際大学日本語日本文学研究, 第17巻, 第2号(2013年3月), pp.45-67)によれば、宮古語(シマㇷツ)は以下の6つに区分されるようだ。
(1) 宮古島北部方言、 南部方言 (来間方言を含む)
(2) 宮古島中央部方言
(3) 池間系諸方言 (池間、 前里、 佐良浜、 西原)
(4) 伊良部方言 (佐和田、 長浜、 国仲、 仲地、 伊良部)
(5) 多良間系方言 (塩川、 仲筋、 水納方言)
(6) 大神方言
私(安岡孝一)個人としては、(3)をイキマ語、(4)をイラヴ語、(5)をタラマ語、(6)をウカㇺ語、と呼んでいるのだが、さて、(1)と(2)をどう呼ぶべきだろう。(3)~(6)が島々の呼称でもある(cf. 本永清『宮古の島々の方言呼称、および季節を表す方言』宮古島市総合博物館紀要, 第23号(2019年3月), pp.137-147)ので、「来間方言」を「ㇷフィマ語」と呼びたいのはヤマヤマだが、(1)の全体を「ㇷフィマ語」と呼ぶのはマズイ気がする。
これらのうち、(1)の宮古島北部方言は狩俣、島尻、大浦方言であり、南部方言は旧城辺の保良や友利、旧上野の新里やその周辺の集落である。ただし、南部地域では語形が一致しない言語地図もいくつかみられるため、等語線をどこに引いてよいのかまだ判断できない。
だとすると、(2)は荷川取・西仲宗根・東仲宗根・西里・下里・久貝・松原の旧平良市域までは確実に入るが、川満(旧下地町)・野原(旧上野村)・長間(旧城辺町)あたりは、(2)なのか(1)なのかハッキリしないということだ。
また、(1)と(2)と、(3)以下との区分にレベルの差がある可能性もある。よって、これらは宮古語の地域差を示すグルーピングではあるが、下位区分を示すものではないことを断っておく。
さて、どうするか。あくまで私案だが、(1)と(2)は合わせて「ミャーク語」としておいて、さらに旧市町村で区分する方が、楽な気がする。つまり、旧城辺町は「東ミャーク語」、旧上野村は「南ミャーク語」、旧下地町は「西ミャーク語」で来間島を含む。旧平良市は、西原がイキマ語なのでここで区切って、荷川取・西仲宗根・東仲宗根・西里・下里・久貝・松原は「中ミャーク語」、狩俣・島尻・大浦は「北ミャーク語」、池間島はイキマ語、大神島はウカㇺ語。旧伊良部町は、佐良浜(池間添・前里添)がイキマ語で、それ以外はイラヴ語。多良間村は、多良間島・水納島ともにタラマ語。
もちろん、市町村境界が等語線と一致するわけはない。しかし、こういう風にすれば、各下位区分と郵便番号が対応づけられるので、地域がハッキリするのだ。
- ウカㇺ語 906-0001
- 北ミャーク語 906-0002~906-0004
- 中ミャーク語 906-0006~906-0015
- 東ミャーク語 906-0101~906-0109
- 南ミャーク語 906-0201~906-0204
- 西ミャーク語 906-0301~906-0306
- イキマ語 906-0005・906-0421・906-0422・906-0501・906-0502
- イラヴ語 906-0503~906-0507
- タラマ語 906-0601~906-0603
906-xxxxは市町村合併の際にも変更されなかったので、1998年の7ケタ化以降、ずっと同じ郵便番号が同じ地域を指している。イキマ語だけは不連続になるのだが、池間島から西原・佐良浜への集団移住の結果なので、こればかりはどうにもならない。一方、大神島・水納島から高野(東仲宗根添)への集団移住は、郵便番号906-0011なので「中ミャーク語」に飲み込まれてしまう、という問題を孕む。そういうヤヤコシイ問題は残るのだが、さて、この9区分で何とかならないかなぁ。