はじめに
AdventCalendar 6日目となりました!
私は,航空宇宙工学科の人間で,最近九州大学の物理ゼミサークル「PhysiKyu」に入ったばっかりの新参者ですが,こき使われてAdventCalendarの参加者人数の関係で,今回入れて3つ記事を書く予定です(毎週水曜日).
クリスマスに,年末年始と,楽しい冬休みが近づいてきているようですが,初めての第一著者としての学会発表,研究,(諸事情により)高校生に講義をする準備,自主ゼミ,授業,調子に乗って3つも入れてしまったAdventCalendarのせいで,私は死にそうです.
なので,投稿が遅れたり,記事の内容がちょっと雑でも気にせずに.
人工衛星の観測
さて,皆さんは,「天体」と言われたら,まず何が思い浮かびますか?
そうですよね,人工衛星ですよね!(異論は認めない)
ということで,今回は,人工衛星を観測してみよう!というのが記事の主題になります.とは言っても,今回は初心者向けに概論を説明し,次週に軌道力学的な要素を用いて詳細を解説します.
ここで,あんまり人工衛星に詳しくない方は,ある疑問が浮かんでくるはずです.
「本当に地上から人工衛星は見えるのか?
実は結構知らない人が多いですが,人工衛星は地上から見えます.しかも,大きいものであれば,余裕で肉眼で見ることができます.明るいものだと1等級以上の明るさで見える場合もあるくらいです.
では実際にどうやって見えるのかというのを,お見せしましょう.
これは,九州大学が所有するペガスス天体望遠鏡で観測した,CSS(中国宇宙ステーション;NORAD CAT ID:48274;国際標識:2021-035A)です(レベル調整済).太陽電池パネルの部分まで,綺麗に撮影できているのがわかります.このように,大きいものであれば,その形状まではっきりと撮影することができます.
今度は,もう少し小さな人工衛星を見てみましょう.
これは,イーロンマスク氏が率いるSpace X社が通信用衛星として打ち上げている「Starlink」シリーズの1つです(STARLINK-3649;NORAD CAT ID:51980;国際標識:2022-025AA).CSSのようには形状までは認識できませんが,光跡として観測できます.
ここで,人工衛星の光跡が持つ特徴を述べておきます.それは,太陽光の反射による光跡なので,明るさが変化せず,線幅がほぼ一定になるというものです.同じく光跡として観測される流星は,岩石の,大気との摩擦による燃焼が原因で光を発するため,端点付近では明るさが暗く,線幅が狭くなります.
(ただ,実は人工衛星でも,反射光が大きく変化する例外くんがいたりしますが...今後の記事で取り上げるかも)
人工衛星はどこを飛んでいるのか?
では,人工衛星はいつ,どの方角に見えるのか,という話に移ります.今回は初心者向けということで,簡単に人工衛星の通過位置と予定時刻がわかるサイトをご紹介します.
それが,こちらの,HEAVENS-ABOVEになります.
HEAVENS-ABOVEではISS(国際宇宙ステーション;NORAD CAT ID:25544;国際標識:1998-067A)やCSS,HST(ハッブル宇宙望遠鏡;NORAD CAT ID:20580;国際標識:1990-037B)といった,著名な人工衛星だけでなく,肉眼でも観測できる様々な明るい衛星がリストアップされており,通過予定位置と時刻を調べることができます.
HEAVENS ABOVEの使い方①:観測地点設定
まずは,観測地点を設定する必要があります.ホームページ右上の,「観測地点」から,観測する場所の位置を地図上で選択するか,座標入力しましょう.肉眼や視野が十分広い機材で観測する際は,厳密に観測地点を合わせる必要はありませんが,天体望遠鏡などで観測する場合には,観測地点の座標と標高をしっかりと合わせましょう.
なお,ユーザー登録を行うと,お気に入りの観測地点を登録・保存できるので便利です.
HEAVENS ABOVEの使い方②:注目すべき衛星の10日間の予測
次に,「注目すべき衛星の10日間の予測」を紹介します.前述のISSやCSSといった著名な衛星は,向こう10日間の予測をまとめて表示できます.
衛星を選択すると,日の入りから日の出までの時間で,衛星が観測できる時刻が一覧で表示されます.観測したい日付の行を選択すると,星座早見のように,天上のどこを通過するか確認することができます.
ちなみに,右上にある「情報」からは,打ち上げられた日付や参加国,カタログ番号などを表示することができます.
HEAVENS ABOVEの使い方②:明るい衛星の日毎の予測
続いて,「明るい衛星の日毎の予測」を紹介します.前述のISSやCSSほど著名ではないものの,明るく見える可能性のある人工衛星を,日毎・時間帯ごとに表示できます.
観測したい衛星の行を選択すると,星座早見のように,天上のどこを通過するか確認することができます.
なお,STARLINKを含めて表示したい場合は,「exclude Starlink passes」をのチェックを外します.
さいごに・次回予告
今回は,人工衛星が地上から見えるということを紹介するとともに,人工衛星の通過予定位置や通過予定時刻を調べることができる,HEAVENS-ABOVEを紹介しました.ISSやCSSといった衛星は,非常に明るいので,都市部でも肉眼で観測することができます.ぜひ,HEAVENS-ABOVEを活用して,人工衛星を観測してみてください.
次週12/13(水)は,人工衛星の軌道予測や宇宙の座標系について,専門的な部分を解説します.それではまた!
(注)記事の内容は私個人の見解であり,所属する学科組織またはサークルを代表するものではありません.
(注)記事内に添付されている写真を含め,記事の内容を無断転載・複製する行為は禁じます.