#はじめに
初めまして。hortorum 所属クリエイターの北原隼大です。
僕たちはこれまで、舞台脚本や映像作品など、分野に囚われない創作活動にチャレンジしてきました。そして今作では、自由度の高い映像表現を求めて、ゲーム領域に挑戦することを決めました。「ゲームシステムやプレイアブルな要素よりも、映像パートにおける演出や心情描写に力を入れること」をコンセプトに、鋭意制作中です。
この記事では__「映像クリエイター視点から見たゲーム制作ソフトの取り扱い」__に重点を置いて解説していきます。
後述しますが、僕は3DCGを触り始めて一か月程度の初心者です。ですので、ここに記述してある内容に関する間違いに気付いた方や、より良い手段を知っているという方は、是非コメント等で指摘して頂けると有難いです。
逆に、「知識0」というフレーズに惹かれてここに辿り着いた読者さんには、僕の経験を糧に、有意義な情報提供ができれば幸いです。
#「知識0」ってどのくらい?
僕の3DCG歴は、Unreal Engine 4やVroid Studio等、制作ソフトを触り始めて1ヶ月程度です。
VRoid StudioやAdobe Fuseでキャラクターを制作しているので、人型をモデリングした事も無ければ、リギングの方法も分かりません。
背景もダウンロードしたデータをue4(「Unreal Engine 4」の略称)上で使っているに過ぎず、自分が納得できるような複雑で出来の良いものは何も作れません。1から制作したことがあるのは「透明なコップ」くらいです。
#どんな人に役立つ記事?
- 初心者向けのチュートリアル動画を途中まで進めたが、ゲーム(映像)全体の完成が見えなくて辞めた
- 3DCG作品を作ってみたいけど、どこから手をつければいいのか分からない
そんな方々を対象としています。
この記事は、手引書のように網羅的に解説しています。
細かい部分は各記事を参照していただくとして、ここでは、どのソフトとどのソフトを組み合わせれば__「最もシンプルに3DCGゲーム(映像)が作れるのか」__について、1から10まで説明していこうと思います。
#1のテーマ
「3D空間に背景を作り、登場人物をその空間に導入する」。ストーリーものの3DCGゲームを作るうえで、まずはこれを達成することがスタートラインだと言えるでしょう。
しかし、__そのスタートラインに立つことでさえ、0から始める人からすれば途方もなく先の目標だと感じるのではないでしょうか。__むしろ、その「スタートライン」が最初の「途方もない目標」に設定されるはずです。
「だいたい二か月かけて、キャラを一体作れたらいいかな」と始めた制作も、勉強や仕事で忙しい毎日の中で少しずつモチベーションが下がり、そのうち3DCGに飽きてしまう人たちは一定数いると思います。
そんな方々にお伝えしたいのですが、専門知識なんて一つもなくても、その「スタートライン」に立つことは容易です。
#1では、「3D空間に背景を作り、登場人物をその空間に導入する」までの作業をサポートする為に執筆しました。
#Unreal Engine 4
▼Unreal Engine 4
https://www.unrealengine.com/ja/?sessionInvalidated=true
無料ソフトです。映像の制作、ゲームシステムの構築などはue4で行えます。
制作したキャラクターも、ue4への導入を前提としています。このソフトが、ゲーム制作の要となることを覚えておいてください。
今回、質の良い実写映画のような、ライティングやカメラワークの面でも見応えのある映像を目指して制作に励んでいるのですが、その観点から感じたue4の利点は、「実写映画っぽい撮影」が簡単に実現できることです。
カメラのパラメータを変えるだけで、モノにピントが合った、背景に強めのボケがかかっている映像を容易に撮影することができました。
設定の詳細は、公式からアップされている動画をご覧ください。
▼Cinematic Depth of Field | Tips & Tricks | Unreal Engine
https://www.youtube.com/watch?v=5M8lkcSaVng&list=PLmIM_WnltDD_7OOOFXTiKKRYdgMd_0-6H&index=2&t=276s
動きのあるカメラワークも、シンプルな操作で設定できます。
▼Cine Camera アクタを使用する
https://docs.unrealengine.com/ja/Engine/Sequencer/HowTo/CineCameraActors/index.html
そしてこれが何よりも魅力的なのですが、ue4マーケットプレイスからアセットをダウンロードするだけで、高いクオリティの3D空間がそのまま使えます。
さらに、__無料のアセットが豊富に配布されている__ので、「まずはお試しで」といった方でも、気兼ねなくダウンロードできるでしょう。有料アセットも数千円から一万前後と、手を出せる範疇の価格だと感じました。
▼Soul: Cave
https://www.unrealengine.com/marketplace/ja/product/soul-cave
▼Soul: City
https://www.unrealengine.com/marketplace/ja/product/soul-city
ダウンロードしたアセットの完成品は、フォルダのどこかに「レベル」という形式で収納されています(大抵、「Showcase」、「sample」、「Demo_Scene」といった名称で入っていることが多いです)。
▼レベル
https://docs.unrealengine.com/ja/Engine/Levels/index.html
他サイトにおいても、例えば「free3D」等を通して完成済みのモデルを無料でダウンロードし使用することが可能ですが、僕としてはue4のマーケットプレイスを利用することをお勧めしたいです。もちろん、中には良いモデルも見受けられますが、ue4のマーケットプレイスと比べると玉石混合といった印象です。
▼free3D
https://free3d.com/ja/
3DCG作品を作るうえで、「3D空間に立派な背景をどうやって用意するか」は、悩ましい問題だと思います。
僕もue4を知る前は、blenderで都会の景観を0から作ろうと、youtubeのチュートリアル動画を漁りましたが、ビルを建てるだけでも大変そうだったし、デザインの違うビルを量産して、道路を敷いて、遠景を配置して…と、3D空間を用意することがゴールではない身からすると、それは途方もない作業量に感じました。
そういった手間を省いて、ue4ならこんな3D空間もダウンロードするだけで使えます。
ちなみに、こちらのアセットも無料でダウンロードできます。
▼Modular Building Set
https://www.unrealengine.com/marketplace/ja/product/modular-building-set
#キャラクターモデル制作ソフト
ある程度、3DCGキャラクターモデル制作について調べた方々は、blender等を使って、0からキャラ一体を制作する大変さに驚いたと思います。
モデリングを経て、テクスチャを張り付け、身体や衣服の各部にリグを仕込んで…と、一体分でも膨大な作業量が必要なのに、複数モデルが必要な場合はもうどうしようもありません。
さらに個人製作だと、資金はもちろん、作業人数や時間の問題(おそらく「3DCGを今から始めるぞ!」という方の多くは、3DCG業界とは関係のない分野を専門としている、学生や社会人の方ではないでしょうか)で、キャラ制作が終わったところで、ゲームシステムの構築など、その先に途方もない作業が待ち構えているでしょう。
そういった方には、例え制作が可能だったとしても、ここに割く時間を他の作業に充てることをお勧めしたいので、次の三つのソフトを紹介します。
次に紹介する全てのソフトにおいて、モデリングとテクスチャはソフト内のパラメータを調整するだけで制作できます。さらにAdobe fuseを除いた二つのソフトでは、ソフト内でリギングを行ってくれます。
#Vroid Studio
▼Vroid Studio
https://vroid.com/studio
無料ソフトです。アニメルックなキャラクターの制作はお手の物で、ガイドに従って髪を生やしたり、ソフト内のパラメータを操作するだけでオリジナリティのあるキャラが制作可能です。
さらに、衣服や肌、髪のテクスチャをペイントソフトで加工することで、制作者のイメージ通りにオリジナルキャラを制作できるようです。
テクスチャの大胆なアレンジはまだ実践してないのですが、動画を見る限り、直感的にオリジナルの衣装を制作できるようで、ペイントソフトが使える人にとってはかなり魅力的なソフトだと思います。
▼VRoidメイキング【洋服編】
https://www.youtube.com/watch?v=YJjdOMBMIFI
▼【VRoidメイキング】VRoidに見えないモデリング2【髪型編】
https://www.youtube.com/watch?v=L2wZa7R6Q1c
また、有志の方のプラグイン開発によって、ue4へのインポートもとても簡単に行えますので、アニメルックのキャラクターでゲーム制作がしたい方にはVroidをお勧めします。
こちらが、VRM(Vroidで制作したモデルを出力する際の形式)をue4にインポートするために必要な、ue4用のプラグインです。リンク先で詳細な導入手順が紹介されています。
▼VRM4U
https://ruyo.github.io/VRM4U/01_quick-start/
僕自身アニメが好きで、当初はアニメルックのキャラでゲームを制作しようと思っていたので、見つけて、ある程度触った段階では、ソフトの便利さに感動していました。しかし、今作のコンセプトとしては許容できない点があり、使用を諦めました。
(ストーリーものを作るうえで)vroid studioの唯一の欠点として挙げられるのが、「少年少女しか作れない」ことです。
映画や小説、舞台など、アニメ以外の物語に触れてきた方なら納得がいくと思いますが、奥行きのある物語を作る為に、年齢層の違う多様な人物の視点は必要不可欠です。
![8.png](https://qiita-image-store.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/0/746110/016c1ebd-4989-953f-a6b1-f3b04eaf6c14.png) ▼male-high https://hub.vroid.com/characters/441773165283061436/models/5052156460622317949 ![9.png](https://qiita-image-store.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/0/746110/50b07d85-e007-e153-985b-0edcbaa1d3f5.png) ▼Granny https://hub.vroid.com/characters/1284927418307102988/models/6077006065954640322
こちらは、Vroidユーザーの方が制作されたお爺さんとお婆さんです。 体の各パーツに大きく調整が入り、肌や洋服のテクスチャをアレンジされていて良く仕上がっています。キャラクター単体で見ると、そこまで違和感を覚えないかもしれません。 しかし本来の目的通りに制作された少年少女と並べると、やはり不自然な感じが否めません。
そういった理由で、今作ではvroid studioの採用を見送りました。
#Adobe Fuse CC (Beta)
adobe creative cloud に登録している方であれば、このベータ版を無償で使用することが出来ていました__(後述しますが、今はダウンロードできない可能性が高いです)。__
このソフトで制作できるキャラクターモデルはとても出来が良いです。テクスチャも肌の年齢層から彩度までパラメータを動かすだけで調整することができ、顔の骨格もクリックして操作するだけで形を変えることができます。かなり幅広い年齢、体形に対応しているようです。衣服も、現代風のものが多い印象ですが、ソフト内で組み合わせるだけでキャラにあった衣装を用意することができます。
▼Realistic Game Character creation LARA CROFT in (Fuse & substance painter)
https://www.youtube.com/watch?v=wY7Sa37ZODs&t
▼Mixamo
https://www.mixamo.com/#/
さらに、Mixamoを経由してエクスポートすることで、このサイト内で用意された多種多様なアニメーションをつけることができるという点においても非常に便利です。
このソフトを強くお勧めしたいこところですが、こちらは既に開発が終了したソフトとなっています。
▼Adobe Fuse 提供終了のご案内
https://cloud.borndigital.jp/cc/?p=5333
ただ、公式の発表では「20.9.13にダウンロードできなくなる」とありますが、僕がダウンロードしたのはそれ以降だったはずなので、サービスの提供は続いているのかもしれません。20.10以降にダウンロードした方がいらっしゃれば、情報を提供してもらえると有難いです。
#MakeHuman
無料ソフトです。既にAdobe Fuseのサービスが終了していてダウンロードできなかったという方には、こちらのソフトをお勧めします。
▼MakeHuman
http://www.makehumancommunity.org/
▼人体アニメーションのソフト MakeHuman のインストールと機能(Windows 上)
https://www.kkaneko.jp/tools/win/makehuman.html
Adobe Fuseと同じく、パラメータを設定するだけで年齢層や性別にあったキャラクターデザインが可能ですし、ソフト内の設定でue4へのインポートを前提としたリギング、出力が可能です。
ue4でのリターゲットの方法も含めた、ue4へのインポートの詳細な手順が書かれたサイトはこちらです。
▼MakeHumanで作った人をUE4で動かしてみた!
https://shuntaendo.hatenablog.com/entry/2015/11/12/003117
(#1では「リターゲット」や「キーフレームを使ったアニメーションの作成」といった人物にアニメーションを付ける手順について触れていませんが、#2以降で説明していこうと思います。)
Adobe Fuseと比べると衣服のテクスチャや体形がちょっと微妙ですが、blenderと連携することで、blender内でMakeHumanのモデルを引き継いで制作ができるようで、調整次第では上手く仕上がるかもしれません。
これに関しては、まだ実際に検証していない情報になるので、参考動画の紹介に留めます。
▼Make Human - Blender 2.8 - EV Express
https://www.youtube.com/watch?v=NHWSfNbJ6kc
#おわりに
3DCGに限らずソフトやアプリの魅力とは、「知ったその瞬間から、先人と同じことを実現できる」点にあると思います。
折角、既存のソフトや流通している情報を上手く使えば、色んな工程をすっ飛ばして、やりたいことを実現できる良い環境がそろっているのですから、一緒に楽しいことをしましょう。
「全体の流れ」を説明することを意識した記事でしたので、端折り過ぎた説明もあるかと思います。コメントなどでリアクションを頂ければ、返信や記事の更新といった形で回答させて頂きます。
それでは、#2でまたお会いしましょう。
<過去作品>
直近で制作に関わった映像作品を添付します。チームメイトが指揮をとった企画に、映像制作担当として参加しました。実写映像作品です。
▼PIGMENT TOKYO -Japanese Art Museum-
https://www.youtube.com/watch?v=_nBBO7sJK5s
個人で制作してきた作品についてはこちらにまとめてあります。
▼kitahara.shunta.works
https://kitashun.myportfolio.com/
興味のある方は、是非ご覧ください。